この空も太陽さえも <日ノ下光>

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『信じられるのは自分だけだ。

 彼にとって、それは常識だった。

 両親に捨てられたのは、彼が七歳の時だった。

 その頃は、何故両親が急にいなくなったのか理解できなかったし、子供が一人で生きて行くのに世間は甘い場所ではなく、ただ必死だったから考えもしなかった。

 しかし時が経つにつれ、自分の家が裕福ではなかったこと、自分が両親にとってはじゃまな荷物でしかなかったことを理解するようになった。

 だから捨てられたのだと。

 それは仕方のないことだ。自分だってそうするだろう。

 生きて行くのにじゃまなものは排除するのが一番だ。

 たとえそれが、実の子供であっても。

 両親は間違っていない。

 だから自分も間違ってはいない。

 生きるためには、金を手に入れるためには何をしてもいい。

 だから彼は詐欺師になった。

 金さえあれば大抵のことはできる。不自由ない生活も、惨めな想いも、腹を空かせて泣くこともない。

 バカ共を騙して何が悪い。

 そう、何も悪くない。騙される方が悪いのだ。

 騙されるほど、幸せな奴らが悪いのだ…。          』

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 光と勇気は、深夜の住宅街を『散歩』していた(補足・光は、まぁいろいろあって勇気(主人公)の「奴隷」にされた。という設定)。

 眠りに落ちた家々に灯りはなく、街灯だけが冷たく二人を照らし出している。

「ん…どうした? 光」

 急に『歩く』のを止めた光に、勇気が視線を落とした。

 その視線の先には、四つん這いになって「ハァハァ」と息を吐く光の姿があった。

 光は…裸体だった。

 裸体に犬用の首輪。そして、常識では考えられない程太いバイブをアナルに突き刺しているだけで、『衣服』と呼ぶことができる物はなに一つ身につけていない。

 勇気は握っている鎖をグイッと引っ張った。その鎖の先は光の首輪に結ばれていて、突然力を加えられた光は地面に倒れ込んだ。

「…苦しいのか?」

 と、勇気は倒れている光の腹部を蹴った。

「ウッ!」

 光がうめき声を漏らした。グルギュルーッと、光の腹が嫌な音色を奏でる。

「なんだ…たった浣腸五本が耐えられないのか? だらしないな、光は…」

 光は、なにも応えることができない。ただ、お腹の中を焼かれるような感覚を必死で耐えているだけで精一杯だった。

「ほら、行くぞ」

 勇気が、倒れたままの光を無理矢理引きずった。

「アッ…」

 光はなんとか四つん這いの姿勢に戻ると、痙攣している躰で再び『歩き』だす。

 しかし、それも長くは続かない。光は再び『歩み』を止めた。

「お…お願い…しま…す。…させて…ください…」

「させる? なにを?」

 勇気は光がなにを望んでいるか理解していたが、光にはっきりと言わせるために惚けてみせた。

「…ウ…ンチ…ウンチさせて…ください…」

「ダメだ。ここはトイレじゃないだろ?」

「…させて…ください…お願いしま…す…」

 光は泣きながら訴えた。

「…仕方ない…でも、分かってるな? 光。『トイレ』以外で放したらどうするのか…この前、光はあんなに嫌がってじゃないか。ホントにいいんだな?」

「……」

 光は黙ってしまった。『この前』のことを思い出し、もう二度と、『あんなこと』は嫌だと思ったことを思い出した。

 しかし…今のこの苦しみには耐えられない。

「…お願い…します。ここで…ウンチ…させてください…お願い…します…」

 その後、なにをしなければならないか理解はしていたが、光はこの苦しみから逃れることしか考えられなくなっていた。

「…じゃあさせてやる」

「ありがとうございますッ」

 光の顔に、歓喜の表情が浮かんだ。

 勇気は無造作に、光のアナルに刺さったバイブを掴むと、一気に引き抜いた。バイブは光の腸壁を捲りながら、ポンッと音を立てて抜けた。

 ブッ…ブリブリぶりーッブッぶりッ…ブッぶッブップリッブッ…ぶッ…ブッ…ブッ…。

 いつ止むとも分からない排泄音が、静かな深夜の住宅街に響く。

 夥しい量の便を吐き出しても、まだ光はぷりッとか、ブッとかいう音と共に排便を続けた。

 これは、光にとって五日ぶりの排便だった。

 腹の中のモノを全て放出したのか、やっと光は「ハアァー」と嬉しそうな息を吐いた。

 五日分の汚物を一気に吐き出し満足した光の肛門はヒクヒクと痙攣し、開きっぱなしになっている。腸の奥まで丸見えだ。

「満足したか? じゃ…分かってるな?」

 勇気の言葉に、光は急速に冷静さを取り戻し、絶望的な気持ちになった。

「…はい…」

 そして光は、異臭を放つ自らの便に顔を近づけ…口に入れた。

 浣腸液によってふやけた便はその量を増し、それだけで光の胃の中が一杯になる量はあるだろう。

 とても食べきれない…。

 そう思ったが、その全てを胃の中に納めるまで勇気がけして許してくれないことも、光は十分に理解していた。

 時間がかかり過ぎると、勇気の怒りをかうことになる。そうしたら、またなにをされるのか分からない。

 光は汚物を手ですくい、貪るように食べた。

 なんども吐きそうになりながらも、光はその度に手で口を押さえ必死でそれを飲み込んだ。吐いてしまうと、せっかく飲み込んだ分が無駄になるからだ。

 口の周りを褐色に染め、光は食べた。桜色の可愛らしい唇も今は糞まみれだ。こんな姿を見れば、光に想いを寄せている人間であろうとも、光とキスをしたいとは二度と思わないだろう。

 手にすくえる分をなんとか食べきった光は、アスファルトにこびり付き染み込んだ分を舌で舐め取る作業に入った。

 糞まみれのお尻を突き出し、這いつくばって地面を舐める光の姿は、『犬以下』だった。

     2

「遅かったじゃねーか…兄ちゃん」

 そう言って勇気を迎えたのは、四人の中年男だった。

 住宅街から少し離れた、あまり手入れされていないこの公園に住んでいる、自称『自由人』の男たちだ。

「…途中で、『犬』が粗相をしたんでね」

 口の周りと下半身を独特の臭いを放つモノで染めている光に下卑た視線を送り、男たちはなにがあったのか理解した様だった。

 男の一人が勇気から鎖を受け取り、光を引き寄せた。光はまだ四つん這いのままだ。『犬』は二足歩行ではないので、勇気の許しが出ない限り首輪を着けた状態の光は立つことを許されていない。

「じゃ、兄ちゃん。あんたの『犬』で遊ばせてもらうぜ」

 勇気は微かに首を動かしただけで了承を表した。

 男たちは光を連れ、公衆便所の中に消えた。

 勇気はベンチに腰を下ろし、ポケットから煙草を取り出して火をつけた。紫煙を肺に入れ、白い煙を吐き出す。

 しかし、勇気の心に染み込んだ『退屈』までは、吐き出すことができなかった。


「あっアッアッ…ンッ…ハぁッ! アッあァ〜ンッ…ウぅッ!」

 前と後ろに挿入されサンドイッチにされた光は、男たちの容赦ない動きに激しく躰を揺らしていた。

「おい『犬』ッ! 気入れて腰動かせッ!」

 そう言われても、サンドイッチにされているのだ。光には身動きが取れない。光がなんとか言われた通りに腰を動かそうともがいていると、四人の中で唯一頭が禿げ上がった男が、ブヨブヨした腹の肉を振るわせながら光の頭を捕まえて、勃起しているのだろうがたいして大きくもないペニスを光の口に喰わえさせた。

 光は既に条件反射になっているのか、口内にペニスの存在を感じると自動的に舌を動かせ始める。

 ピチャ…ジュピュ…チャッ…チュッチュッ…。

 光の上の口と下の口が、同時に似たような『声』を出した。

 残っていた四人目の男が、光にペニスを握らせた。光はそれを素直に握り、しごき始める。

 今光は、百五十七センチの小柄といってしまっていいだろう躰で、四人もの男を同時に相手していた。

 苦しくないわけがない。辛くないわけがない。

 しかし光は、それに耐えた。快楽を得ようと努力した。

 気持ちいいと、思い込もうとしていた。

 そうしなければ、とてもじゃないが耐えられない。

「ウッうンッ」

 なんの前触れもなく、口内に精液がそそぎ込まれた。禿男は短小の上に早漏だった様だ。

 光はペニスを喰わえたまま、なんとか生臭い精液を飲み込んで、ペニスに付着した精液を舌で舐め取って、それも飲み込んだ。

 そうすると、やっと禿男はペニスを抜き満足げに息を吐いた。

 …やっと、一回目…と光は思った。

 今夜は、あと何回男たちの精液をそそぎ込まれれば、光は眠ることができるのだろう? でも今夜は眠ることができないと、光は思っていた。

 この『遊び』は朝まで続き、光は全身に『遊び』の証拠を残したまま、朝日が照らし始めた街の中を、誰かに見つからない様脅えながら家に帰ることになるのだ。

 全裸のまま、精液を躰中に纏って、小走りで家路を急ぎ、一歩ごとに膣口と肛門から零れる精液を道に滴らせて、そしてたぶん泣きながら、両親を起こさない様にそっと我が家のドアを開けるのだ。

 そして朝のシャワーのふりをして躰を清め、制服に着替えて学校へ向かう。授業中襲いくる睡魔…また成績が下がる。だが、そんなことはどうでもいいと感じてしまう。安心して眠れることだけを切望する。

 そんな『明日』が訪れることを、光は簡単に想像できた。そしてその想像は、殆ど間違いなく『現実』となるのだと、光は知っていた。

 あッ…二回目…。

 膣内に注がれた温かさで分かった。

 続いて、三回目がお尻に注がれた。とはいえ、光はお尻というよりもお腹に入ってきたと感じたが…。

 三回目。

 と思ったとき、光の脳裏にさっき食べさせられた排泄物の姿がリアルに浮かんだ。

 お尻…ウンチ…ウ…ン…チ…。

 その時、

「ウッ! ウゲッ…ヴッ…ゲェーッ」

 男たちの行為によって、十分に胃の中でシェイクされた光の排泄物が、咽を逆流して飛び出した。

 それは、光の『前』を犯していた男に降り注ぐ。

 男はとっさに光から身体を離して、光の顔を勢いよく殴った。

 その後、男たちがなにか叫いている様だったが、光にはなにを言っているのか理解できなかった。

 あぁ…また食べなきゃいけないのかな…ウンチ?

 と、そんなことを考えていた…。

     3

 勇気は男から紙を受け取ると、チラッと内容を確認してからポケットに入れた。

 この紙切れ一枚が、今夜勇気の『犬』で男たちを『遊ばせる』条件だった。光はこんな紙切れ一枚のためだけに、四人もの男から陵辱を受けなければならなかったのだ。

 そして、それは今も続いている。

 光は今、吐き出した排泄物を胃の中に戻している最中である。それには男たちの固形排泄物も足されていて、光は「なんか…増えてる気がする」と思いながらも、たいした疑問も持たずに黙々と口を動かしていた。

 ニチャニチャと音を立て、新たに加わった男たちの排泄物を咀嚼しては嚥下するという作業を、今、口の中で苦い味をしているモノが、自分の胃の中にあったにしては随分堅い物だということに思い至ることなく(普通排泄物は胃の中にはないので、仕方がないことかもしれないが)、光は名前も知らない男たちの排泄物を食べ続けている。

 しかし、そんなことは勇気には関係がなかった。光が糞を喰らおうがゴキブリを喰らおうが、勇気にはどうだっていいことだからだ。

 勇気にとって、光は『ペット』の内の一匹でしかない。一々気にかけていては身が持たない。

 勇気は喰わえていた煙草を足下に落とし踏みつけ、ベンチから腰を上げた。

 彼の足下には、浣腸の栓として光に刺さっていた極太バイブが転がっていたが、勇気はその存在に気が付かなかった。

 既に、勇気の頭の中から光のことは消えている。顔を見れば思い出すだろうが、目の前の公衆便所で光が陵辱されていることなど、彼の脳裏に欠片も浮かんではいなかった。

 薄っすらと空が白ばんできた頃、光は解放された。勇気と男たちとの間で、朝になる前には解放すると約束が交わされていたからだ。

 しかしそれは、勇気が光の躰を心配したからではない。光が『犬』として飼われていると、光の家族に知られるのを避けたかったからだ。

 勇気は、光にはまだ利用価値があると考えている。それが理由だった。

 解放された時の光の状態は、排泄物と精液と汗と涙を混ぜた液体を頭から被った様な(というかそのもの)有様だった。

 光の瞳は暗く霞んでいたが、その中にはまだ弱々しくだが<光>が宿っている。

 狂えない…絶対に自分を見失うわけにはいかない。

 家族の為、学校の為、友達の為、親友の琴子の為、なによりも…自分自身の為。

 それら全ての為に、光は狂うわけにはいかない。自分を捨てるわけにはいかない。

 帰らなきゃ…家に…そして、学校へ行かなきゃ…。

 光はフラフラと躰を揺らしながら歩きだした。

 そして光の、今日という『現実』が始まる。



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