第十三章 「楓三琴(かえで みこと)・初等部五年生の場合?(後編)」

 

 初めて恋人の前に晒した裸体。恥ずかしいと感じるよりも、抱いて欲しいと思う方が大きかった。

 恋人の部屋。二人きりの時間と空間。自ら衣服を脱ぎ、幼い身体を無防備に彼に向ける。目の前の恋人に腕を広げ、楓三琴(かえで みこと)は瞳を閉じた。

 自分が思うより冷静なことに、少なからず驚く三琴。なのに身体中が熱く、トク…トク…定期的な心音が、やけに大きく聞こえた。

(わたしの音…あなたにも、聞こえていますか…?)

 と、閉じた目の前に「なにか」を感じるとほぼ同時に、三琴は「温かさ」にその身を包まれていた。

(あ、あなた…)

 溢れくる「想い」。大切な、そして世界一大好きな恋人の温もり。

「…三琴」

 優しい声が聞こえた。

「はい…あなた」

 将来を誓い合った恋人、夏目光一(なつめ こういち)の胸に顔を埋め、三琴はその背中に腕をまわす。耳元で奏でられる、光一の心音。それは自分の心音よりも、ずっと早く鼓動していた。

「あなた」

 思わず呟きそうになったそのとき。三琴は両膝に腕を通され、光一に抱え上げられていた。

「きゃっ」

 突然にことに声を漏らす三琴。咄嗟に光一の首に腕をまわして掴まる。

 そのままの体勢で寝室に運ばれ、三琴はベッドに仰向けにして下ろされた。

 ベッドから香る光一の匂い。安らぐ。心地いい。

 三琴をベッドに寝かせつけた光一も、三琴に被さるように両手両膝をつく姿勢でベッドに上がる。

「…あ、なた」

 問いかけると、光一の顔が返答となって返ってきた。三琴は瞳を閉じ、光一のキスを受け入れる。

(好き…)

 なにもかもが満たされ、「祝福」されている。世界はこんなにも素晴らしく、「美しい」場所だったのだと、三琴は改めて思い知らされた。

 三琴は口腔内に入り込んで蠢く光一の舌に、

「わたしは、あなたと逢えて幸せです」

 そう「想い」を込めて自らのそれを絡め、吸った。

(大好きです…あなた)

 甘く、そして優しい光一のキス。

 時間にして三分弱。ついに光一の唇が三琴の唇から離れ、下に降りる。

 顎から首筋へ。首筋から膨らみ始めた胸元へ。胸元から色素の薄い突起へと、光一のキスが移動する。三琴はどうしていいかわからず、触れ合う光一の心地よい重さを、ただじっとして感じていた。

 重さとともに、三琴の小さく幼い身体に満ちてくる光一の「温かさ」は、泣きたいくらいに優しい。

(この人の好きにして欲しい。この人がしたいように、わたしに触れて欲しい)

 教師。だがそれよりも光一は、三琴にとって恋人であり、婚約者である。

(この人になら、わたしは、なにをされてもいい。どんなことでもしてあげたい)

 大切な存在。自分よりも大切な、この世界でたった一つの存在。それが三琴にとっての、「夏目光一」という存在だ。

(愛しています。あなた…)

 光一の舌に刺激され、その口内で自分の左胸の突起が硬くなるのを、三琴は感じた。

 小さな、未だ「胸」とは呼べないような胸。愛する人の前に晒すには、あまりにも貧相で恥ずかしい。しかし三琴は、ありのままの自分を光一に愛してもらいたかった。

 小さな胸も、細い腰も四肢も、まだ「女」としての準備が整っていない身体の全てを、今、この瞬間、一番大切な人に愛してもらいたかった。

 それは「幸福」以外のなにごとでもなく、自らの「生」そのもの。自分の存在が定義され、三琴は「形ある」自分になってゆく。

(わたしは、この人を愛している。わたしはこの人に、愛されている)

 同じ「想い」。同次元ユークリッドスペースに展開する、揺るぎない二つの「力と指向」。三琴はこれほどまでに、自分を「誇らしく」感じたことはなかった。

 三琴は今、光一の愛を疑いもしていない。する必要はないし、したいとも思わない。

 「それ」が自らに向けられているなどということは、「1+1」がイーコールで「2」となることが「考える」必要もないほど明確なことと同じで、「当たり前」のことだ。

 自分たちは互いに、愛し、愛されている。この「温かさ」が証拠だ。その「温かさ」を証明することは、「1+1=2」を証明してみせるのと同じで難しいだろう。

 ある理論展開。ノート一ページほど分の数式を羅列すれば、「1+1=2」は証明できる。だが「これが証明解だ」と提示されたところで、それを理解できる者は思うほど多くはないかもしれない。そして理解したところで多くの者にって、そんなことにはさほどの意味はない。

 三琴は光一を愛していると理解しているし、光一に愛されていると感じている。それが「答え」で、それで「証明終了」。小難しい「理論」はいらない。

 今、光一を愛し、そして光一に愛されている自分が全て。それが三琴の「全部」。他はなにもいらない。他になにもなくとも、「全部」が満たされている。

 満たされるほどの愛を向け、向けられている自分を、三琴はとても「誇らしく」感じていた。

「あっ…あうぅ…んっ」

 堪えきれない心地よさが、甘い声になって零れる。三琴は胸元の光一の頭を、優しく包み込むようにして抱きしめた。

     ☆

「はうっ、うぅっ…んっ!」

 気持ちいい声が抑えられない。身体に光一のキスを受ける度、三琴は自分が溶けてしまいそうに感じる。

 もう自分が、どういう体勢なのかわかない。光一が自分のどこに手を触れ、顔を埋めさせているのかわからない。

 恥ずかしい。嬉しい。

 そんなことはなにも感じない。ただ気持ちよくて、心地よくて、温かい。

「あ…あなたあぁ…」

 自分では自分の体勢がわかっていないが、三琴は裏返しにされて背中にキスを浴びながら光一を呼んだ。

「三琴…」

 光一の返答に安心する。満たされる。

「すき…だいすきですうぅっ」

「俺もだ」

「じゃ、じゃあ…んくぅっ、お、おねがい、しま…す。いって、あんっ! すき…って、い、いって…くだ、ください…」

 なにがなんだからわからない。そんな中三琴は、「願い」を口にした。

 これまでも三琴は、何度光一に「好き」と告げただろう。だが光一から「好き」という一言は、一度も与えられていない。

 不満…ではない。でも、不安だった。

 光一は自分の「想い」を受け入れ、受け取ってくれた。今はどうあれ、最初は自分が光一を「好き」になったのであって、光一が自分を「好き」になったのではない。

 「言葉」を強請るのは、自分のわがままでしかない。自分は光一を信じていればいい。なにがあろうと、自分が光一を「好き」なことは変わらない。変わることなんてできない。

 だが、光一はどうだろうか。光一は三琴を「婚約者」にしてくれた。「結婚」を約束してくれた。

 それは事実。

 しかし三琴は、「好き」の一言が欲しかった。

 これ以上なにを望むのか。これ以上は自分のわがままでしかない。

 自分にいい聞かせてみても、思い込もうとしてみても、やはり「言葉」が欲しくて、「言葉」が与えられないことが不安だった。

 しかし三琴は光一の温もりに「氷」を溶かし、願いを口にした。

 理性的ではいられない状況で、自分がなにを口走ってしまったのかも把握していないが、やはり「それ」は三琴の、偽らざる願いだった。

「好き」

 …と、一言。

 告げるのではなく、与えられることで得ることができる安心。三琴は望んだ。

 その三琴の望みを叶えることができるのは、光一だけ。そして光一が三琴の願いを叶えようとするのは、「当然」のことだった。

「好きだ。三琴」

 呟きのようでもあったが、「言葉」は三琴に突き刺さった。

 後ろから、耳元に告げられた「言葉」。

「えっ…い、今…なんて…」

「俺だって、三琴が好きだ。愛している」

 一瞬…いや、刹那にして冷める、身体の火照り。三琴に理性が戻り、次いで光一への「想い」が溢れ出した。

「…あぁ…あ、あなた」

 後方から覆い被さる、光一の身体の中。三琴は身をよじって表になると、

「嬉しいっ! わたし…ずっとあなたに、好きっていってもらいたかったですっ」

「…いったこと、なかったか?」

「はい。なかったです。あなたからいってくださったのは、これが初めてです」

「そうか…なら、これまでの分、纏めて払うか?」

「はらって、ください」

「好きだ」

「はい」

「愛している」

「はい…わたしも、です」

「本当だぞ?」

「はい。信じています…」

 光一の唇が、三琴のそれを塞ぐ。三琴は光一にしがみつき、唇を吸った。湿った音に混じる、「好きだ」という光一の言葉。

 三琴は、キスと「言葉」を繰り返し与えられた。あまりの幸福に涙する三琴。その涙も、光一がキスですくう。

「泣くな」

「うぅ…でも、でもぉ…」

 堪えようとしても、やはり涙が溢れ出てしまう。

「うれ…しくて。あ、わたし…ウんっ!」

 言葉の途中でのキス。塞がれる口。言葉の変わりに想いを込めて、三琴は光一と舌を絡ませた。

(わたしは、なんて幸せな女の子だろう。世界一すてきな人に、世界一すてきなキスをしてもらって、好きだ…って、いってもらって…)

 疑う理由はない、光一の愛。そして、光一への愛。「幸福」とは、自分のために用意されていた「モノ」ではないのか。

「この世界で、わたしほど「幸福」な女の子はいない。わたしは世界中で、一番「幸福」な女の子なんだ」

 バカげた妄想かもしれない。だが三琴はこのとき、本気で「そう」感じていた。

 少なくとも「そう」感じられるほどの「幸福」に、三琴はその身を浸していた。

     ☆

 長いキスの後、

「あなたも、服…脱いでください…」

 三琴は告げた。

「あなたの全部、見せてください。見たい…です」

 恥ずかしいことをいっているとは思わなかった。それよりも光一が服を着ていることのほうが、三琴には不自然に感じられた。

 三琴に肯き、衣服を脱ぎ去る光一。以外と筋肉質な上半身。大人のモノとして十分な力を誇示するペニス。

(すてき…)

 なにに対しての感想というものではなく、光一の身体全てを三琴は「すてき」だと思った。

「こわくないか?」

「…あなたが…ですか?」

「まぁ…それもあるが、俺の…」

 いいよどむ光一。「俺の」に続く言葉を察知し、

「こわくは、ないです。あなたの…ですから」

 三琴は正直に答えた。

「恥ずかしくないのか? 見るの、初めてだろ」

「お父さまのは…でも、あなたのほうが、ずっとすてきです」

 なにか困ったような顔をする光一。気持ち悪がられても、「すてき」などといわれるようなモノではない。しかし三琴は、

「あの…触っても、いいです…か?」

 興味津々だ。

「あぁ」

 ベッドの上に脚を投げ出して腰を下ろす光一。三琴は四つん這いで光一の股の間に移動すると、そそり起つペニスにそっと手を触れた。

「…温かい…です。それに、すごく硬いですね。お父さまのは、ブラブラしたのしか見たことありません。こ、これって、あなたがわたしのこと、好きだから…ですよね?」

 光一は三琴の「ブラブラした」という表現が、なんだか妙に可笑しかった。

「そうだ。俺が三琴を好きで、愛しているからだ」

「あ、ありがとう…ございます。うれしい…です」

 三琴は夢見心地のような顔をして、光一のペニスをさすったり握ったりする。

「み、三琴」

「えっ…は、はい」

「そのくらいにしてくれ。出る」

「なにが、ですか?」

 その問いに、光一は目を見開いた。

「お前、知らないのか?」

「…?」

 小首を傾げる三琴。まるでわかっていない様子だ。

「お前、知らないでしようとしていたのか? 知っているといったじゃないか」

「…セックス…ですか? 知っていますよ。わたし、そんなに子供じゃないです」

「本当にか?」

「はい。生理の穴に、おちんちんを入れるんですよね? それから、精子…あっ! 精子…出ちゃいますか?」

「…まぁ…そうだ」

「でも、まだ入れてませんけれど…」

「入れなくても、気持ちよくなると出るんだ」

「わたし、触っただけですよ?」

「三琴は、俺に触られて気持ちよくなかったのか?」

「…気持ち…よかったです。とても」

「俺だってそうだ。三琴に触られて、気持ちいい」

「そ、そうだったんですか…あ、あの…」

「なんだ?」

「嬉しいです」

「なにが?」

「気持ちよくなっていただけて…です」

 三琴が少し照れたように微笑む。まるで子供そのものの、幼く純粋な微笑みだった。そして三琴は、

「では、出してください」

 と、ペニスに添えたままだった手に力を入れ、握った。

「だから、どうしてそうなるんだ」

「えっ? なにか、間違っていますか? ま、間違っていたらいってくださいっ。わたし、ちゃんとしますから」

 やはり三琴は、よく理解していない。光一は思い、少しだけ今の状況に躊躇いを覚えた。

 実は光一は、これまでに一度も「経験」がない。元来マジメな性格のため、光一は「恋人」以外と関係を持つ意志などなかったし、人付き合いが下手で、口数が多くなく、一見「恐そう」にも見える彼は、三琴が最初の「恋人」だ。

 とはいえ整った容姿のためか、学生の頃一部の女子、女性に人気があったのは事実だ。しかしそのことに光一自身が気づくことはなく、彼は「自分は異性にとって魅力のない男だ」と思い込んで、例え「好意的」に感じた異性に対しても、自ら話しかけることもなかった。

 なので光一は、三琴に「告白」されたときも、「からかわれている」と感じていた。そのときの光一から見て、三琴は生徒であるとともに、「魅力的」な異性でもあった。

 大人しく、落ち着いていて、桃の丘の生徒であるのだから、当然頭もいい。どこか日本人形を思わせる容姿も、光一の関心を引いていた。

「もし楓が、俺の恋人だったら…」

 一度も思わなかったといえばウソになる。もしあのとき、光一に「告白」したのが三琴以外の生徒だったら、光一は「想い」を受け入れなかったかもしれない。

「そんなつもりはない」

 と、一言だったかもしれない。

 だが、相手は三琴だった。

「楓は生徒だ」

 そんな「建前」は薄紙一枚ほどの抵抗しか、光一に及ぼさなかった。魅力的な異性が、自分に好意を示してくれた。それに見ぬふりができるほど、光一は「大人」ではなかった。

 予測できる「幸福」。手を伸ばせば、言葉を告げれば、それは現実となる。

 そして「それ」は、今、現実として光一の目の前にある。

 恋人となった、魅力的な異性。互いに生まれたままの姿で、一つのベッドの上にいる。躊躇うことなどなに一つない…はずだ。恋人が、十歳の子供ではなかったら…。

「三琴」

「はい?」

 光一は三琴の両肩に手を触れ、そっと押し倒す。三琴はされるがままに、仰向けになった。

 三琴の長い髪がベッドに広がり、彼女はどこか、「黒い翼」を拡げた天使のようにも見える。

 黒い髪と、白い身体。どちらもとてもやわらかく、美しい。光一は一度、三琴の頬に軽いキスを送ると、

「俺を、信じてくれるか?」

 真剣な顔で告げた。

「はい…もちろんです。あなたを、信じます。信じています」

 当然のように答えた三琴に「微妙な微笑み」を向け、これまで意識して触れなかった三琴の秘部へと、腕を誘った。

「うくぅ」

「気持ち悪いか?」

「い、いいえ…少し、くすぐったいだけ…です」

 光一は三琴の短いスリットを二本の指でなぞり、

「ここに…入れるんだぞ」

「…はい」

「痛いぞ」

「かまいません。あなたがくださる、痛みですから」

 三琴は少し大人っぽい笑みを浮かべ、

「だから痛くても、痛くはありません…と、思います…」

 最後は頼りなげだったが、三琴はいい切った。痛くとも、それは光一がくれる「モノ」だから、「痛く」はない…と。

 三琴の言葉を確認し、光一は腕の動きを速めた。やわらかな肉の浅いワレメに指の腹を埋め、その内部を擦る。

「うはあぁっ」

 ビクンッ! と、エビ剃りになる三琴。はっきりと浮き出したあばらが、三琴の幼さを際だたせる。それでも光一は腕を止めることはない。シーツをギュッと掴んで何度も跳ねる三琴の敏感なワレメを、指で刺激し続けた。

「三琴」

「あ…うっ…ぅんっ! あ、あなた…ぁ」

 湧き出る汗に、三琴の身体が輝く。上気した頬。潤んだ瞳。唇の端から、少し泡だった唾液が零れる。

 刺激に「水っぽさ」を増す三琴の身体。その「水っぽさ」は、光一の指にもまとわり始めた。

 くちゅ…くちゅ、くちゃ…

 滑りを宿した指が、これまで以上の刺激で三琴を責める。三琴は「生まれて初めて」の快感に脳髄を灼かれていた。

(な、なにこれっ? キ、キスもいいけれど、これも、なんてすてきなのっ)

 甘い声が止まらない。「想い」が水分とともに、身体中から溢れ出る。が、唐突に、

「…三琴」

 光一の腕が止まった。

 三琴は荒い息を吐きながら、

「どうして?」

 もっとして欲しい。もっと愛して欲しいのに、どうして止めてしまうのか…と、疑問に感じたが、

「三琴…入れるぞ」

 光一の言葉に、「そのとき」が来たことを悟った。

「…は、はい。よろしく…お願いいたします」

 少し緊張した面もちの三琴のセリフ。「よろしくお願いいたします」…とは。光一は思わず苦笑していた。

「な、なにか…?」

 光一が苦笑した理由がわからなかった三琴が問う。

「なんでもない。三琴は、本当にかわいいな」

 いいながら光一は、三琴の股の間に身体を移動させる。三琴は素直に脚を開き、光一の下半身を受け入れた。

「少し、お尻を上げてくれ」

「あっ…はい」

 光一は、クイッ…っと上がった三琴の腰元に両手を添えると、熱を帯び硬くなった自身のペニスを、ほどよく湿った三琴の小さなワレメにあてがう。

「…あ、あなた」

「身体を楽にしていろ。俺は、お前を傷つけたりはしない」

「知って…います。あなたは、優しい人ですから」

 三琴は寝そべったまま両手を伸ばし、手の平を光一の頬に添えると、

「大好きです…あなた。だからわたしは、今、とても幸せです。大好きなあなたに、抱いていただけるのだもの…」

 光一の頬を数回なでると、三琴は腕を下ろして瞼を閉じた。

 それを合図として、光一が腰を落とす。

 グチッ

 外れることなく、スリットに埋もれる先端…いや、先端の先端。

「ヒッ! イ、イタッ…い」

 ほんの入り口を押し広げられただげだったが、三琴には身体が引き裂かれたかのようにすら思えた。

「止めるか? 三琴」

「へ、平気…ですっ」

 即答したが、三琴の表情は苦痛を表し、しわが寄った眉間から冷たい汗が伝う。

「がまんすることはない。まだ早いんだ」

「イヤですっ! わ、わたし、あなたに抱いて欲しい。ちゃんと、あなたにもらって欲しい…です」

 真剣な顔。真剣な想い。

 光一には三琴の、婚約者の想いを否定することはできなかった。まだ「引き返す」ことはできる。だが、できない。なぜならそれは、「裏切り」だから。

 光一は、三琴を「裏切る」ことはできなかった。

 三琴が彼を一番、自分よりも大切だと想っているように、光一も三琴を同様に想っていた。光一は本当に三琴と結婚するつもりでいるし、三琴を「悲しませる」ようなことは絶対にしたくない。

「抱いて欲しい」

 そう三琴が望んだのなら、光一は自分の全てをかけてその願いを叶えたいと思った。

「…わかった。もう、止めるとはいわない」

「は、はい…」

「だが、本当に最後までするぞ。お前を、俺の女にする。痛いといっても止めないぞ」

「はい…最後まで、してください」

 光一は肯き、掴んだ細い腰元に力を込める。そして一気に、

 ブチイィッ!

 …としか、明記できない響き。

「はがあぁっ!」

 三琴は瞼を完全に開き、首を反らせて呻いた。

 一息に三頃の「最深部」まで到達するペニス。が、光一のそれは、また三分の一以上が外に出ていた。

「み、三琴…大丈夫か?」

「…い、いっぱい、です…」

 なんとかそれだけを答える三琴。激痛のためか、目尻からの涙が止まらない。光一はそのままの結合体勢で、三琴が「落ち着く」のを待った。

「…も、もう…平気、です」

「本当だな? 俺に、強がる必要はないぞ」

「…はい。本当に、平気です」

 だが結合部からの破瓜の証は、未だ二人の性器を赤く染め、シーツへと滴り続けている。想像していた以上の出血に、光一は心を痛めた。もしかすれば光一の方が、三琴よりも「痛かった」かもしれない。

「して…ください。あなたがしたいように、わたしを…抱いてください」

 その願いに与えられたのは、弾け跳ぶような激痛だった。それは三琴の身体中を走り、思考力を奪っていく。

 ある意味リズミカルな、肉のぶつかる音。三琴はその音に合わせ、「ウッ…ウグッ!」と呻きを漏らしたが、「痛い」とは一度も口にしなかった。

 絡みつき、締めつける三琴の中で、光一は「高み」へと誘われる。

「み…ことッ!」

「あ、あなたあぁ〜っ!」

 身体を内部から灼く光一の「想い」を感じながら、三琴は白い光の中へと意識を溶かしていった

     ☆

 時の流れは誰しもに一定ではなく、「幸福」に包まれる者たちにとっては、速く過ぎ去るものなのかもしれない。

 すでに、学園での三琴と光一の「逢い引き部屋」となっている、放課後の社会科指導室。外では十一月初旬の肌寒い秋風が流れているが、室内にはさほど関係はない。

「せ、先生…これって…」

 オレンジ色の陽光に顔を染めた三琴は、光一から渡された「十一歳の誕生日プレゼント」に目を丸くしていた。

「婚約指輪だ。本当はもっと早く渡したかったが、教師というものは薄給…まぁ簡単にいうと、給料が多いとはいえない。だがやはりこういう物は、それなりに高価な物を渡したいと思うのは」

 冷静に、でも三琴には「照れている」のがバレバレな顔で告げる光一。その言葉を遮るように三琴は、

「あ、あのっ。先生っ!」

「なんだ。まだ話しの途中」

「あ、ありがとうございますっ! わたし、う、嬉しいです。とっても…嬉しいですっ」

「そ、そうか?」

「はいっ。これ、大切にします」

 腕の中で陽光を反射させる、シルバーのリング。三琴はそれを大切に手の中に包み込むと、

「絶対…大切に、します…」

 最後は涙声になりながらも、はっきりと告げた。

 嗚咽を始めた三琴の髪を、そっとなでる光一。

「俺も、お前を絶対に大切にする。ずっと…一生、大切にするから」

「は、はい…大切に、して…ください」

 涙に濡れた顔を上げる三琴。光一の顔が近づいてくる。

 重ねられることが「誓約」されている唇を受け入れるために、三琴は瞳を閉じて少しだけ背伸びをする。

 二人だけの「世界」。

 オレンジに染まる床に、重なり一つとなった影が描かれた。



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