第二章 「牧田布由(まきた ふゆ)・初等部五年生の場合?」

 

 名家の子女が多く通う桃の丘女学園では、車で送り迎えされている生徒も少なくない。初等部五年生の牧田布由も、その例外ではなかった。

「どうぞ、お嬢様」

 運転手が黒い高級車の後部座席のドアを開け、布由をその中へと送り込む。布由は肩の少し上で水平に切りそろえられた髪を揺らし、軽く頭を下げてそれにしたがう。

 布由が座席に腰をおろすと、中年の運転手はバタンッと重々しい音でドアを閉め、運転席に移動した。

 マジックミラーで、外からは後部座席の様子をうかがい知ることはできない。だが中から外の様子をうかがうことはできる。

 布由よりも学年が二つほど下だと思われる生徒二人が、談笑しながら校門をぬけて歩き去る姿を、布由は「景色」として眼球に写したが、その二人の姿は走り出した車の後方に流れ、すぐに見えなくなった。

「さぁ、お嬢様」

 運転手が下卑た声を発した。

「はい…わかっております」

 布由は、世界的にも有名なデザイナーであるアイマール・クランセルがデザインした、白を基調とした制服の膝上丈のスカートを下ろし、次いでシルクのショーツをも同じように下ろした。

 そして両足をそっと開き、陰核包皮が見え隠れしている無毛のクレパスに指を誘う。

 くにゅ

 やわらかな肉の割れ目が、細くしなやかな指を飲み込んで、その形を変えた。

 布由は自分の大切な部分の肉を捏ねるように、馴れた手つきで指を蠢かせる。

「ぅん…ん、くっ…ぅん…」

 布由のくぐもった吐息に、くちゅくちゅと湿った音が重なり始めた。

「あっ、ふっぅんっ」

 瞳を閉じ、頬を鮮やかに染め、それでも布由は指を止めることがない。

 股間からあふれ出る透明の液体が、指だけでなく手の平にも絡みつく。

 運転席から「くくっ」と声が聞こえた。

 布由はそれを耳に残さず素通りさせて、にゅちゅにちゃと音を奏でさせる行為を続けた。車内に、鼻腔を刺激する甘酸っぱいような、それでいて生臭いような臭いが満ちる。

 家につくまでの約二十五分間。

 運転手というたった一人の観客に向けて、布由はオナニーショーを演じ続けた。

 

 車が止まり、布由の視界に、家というよりは館といったほうがいいような建物が写った。布由は運転手が手渡したタオルで濡れた手の平と股間、そして沁みをつくっているシートを拭う。無言でショーツを上げ、スカートを上げると、いつの間にか外に出ていた運転手が後部座席のドアを開けた。

 布由は側の鞄を手に取り、

「ごくろうさまです。お迎え、ありがとうございました」

 と、車内ではなにごともなかったかのように告げ、外に出た。

 玄関に向け歩き始めた布由の後ろで、不意にバタンッと車のドアが閉まる音が響いたが、布由は驚いて振り返ったりはしなかった。

 ただ、淑女を思わせる短い歩幅で変わらないリズムを刻み、運転手の視界からその姿を消していった。

 

     ☆

 

 牧田布由が「おじさま」に「買われ」、この家で生活を始めてもう一年になる。

 一年。

 それは、この家に足を入れ三十分に満たない間に「おじさま」に処女を奪われていた布由が、「私は奴隷なんだ」と認識するには十分過ぎる時間だった。

 使用人たちに「お嬢様」と呼ばれていても、布由は使用人やメイドが自分を見下していることを理解している。

「おじさま好みの、おじさまを楽しませるためだけに存在している奴隷。それが私」

 布由にとって「おじさま」は絶対の存在だ。

 なぜなら、自分の「所有者」だから。

 布由は、おじさまに買われた奴隷。

 それが事実。

 それが現実。

「お帰りなさいませ。お嬢様」

 まだ年若いメイドが布由に頭を下げる。隠された顔が、どのような表情をつくっているのかは確認できないが、布由には容易に想像することができた。

 蔑んだ嘲笑。

 布由は愚鈍を装い、「ただいま帰りました」と頬笑みを返した。

「すぐに鮎川先生がいらっしゃる時間ですので、準備がお済みしだい勉強部屋にいらしてください」

 鮎川先生とは、布由の家庭教師のことである。

 鮎川は二十代後半の厳しい目つきをした才女で、布由の家庭教師を務めるようになって半年ほどになるだろうか。

 布由は鮎川が嫌いではない。勉強の教えかたは厳しくて容赦ないが、鮎川が布由の身の上を全て知りながらも、彼女を見下してはいないことを知っているからだ。

 自分に家庭教師がつけられているのは、おじさまが「賢くて、素直で、絶対にさからったりしない奴隷」が好みだからだと、布由は「理解」している。

 名門女子校である桃の丘女学園に編入させられたのも、おじさま好みの奴隷につくりあげられるためだ。

 そのために布由は、寝る間も惜しんで勉強させられた。彼女の成績は悪くなかったが、それは普通の小学校での話だ。

 桃の丘への編入試験は想像を超えるほど厳しく、困難なものである。だが布由は、その試練を乗り切ってみせた。

 それができなければ、「あの人」のようにされてしまう。

 地下室…というより地下牢でおじさまにみせられた、「あの人」。

 裸に犬のような首輪。首輪に繋がった太い鎖。

 目に光がなく、「くすくす」と笑いながら涎を垂らしていた。汚物の臭気が染みついた細い身体で、胸だけが取り付けたように大きかった。

 たった一度だけの邂逅だったが、「あの人」の姿は布由の脳裏に焼き付いて消えない。多分一生消えない。と、布由は思っている。

 その時の布由は、「あの人」に対して同情や哀れみを覚えなかった。

 だた、

「こうはなりたくない」

 と思っただけだった。

「がんばって勉強しなさい」

 おじさまの言葉は、「無能だったら、お前もこうしてやる」と聞こえた。

 だから布由は答えた。

「はい。がんばります」

 勉強と陵辱。睡眠時間が三時間にも満たない一ヶ月を過ごし、布由は桃の丘女学園初等部への編入を果たした。

 どれほど並べられているのか想像もつかないハードルの一つ目を、布由は無事に飛び越えることができた。

 それからも、布由はなんとかハードルを越え続けている。

 

「では、今日はここまで」

「ありがとうございました。先生」

 午後九時。三十分の食事休憩をはさんだけの授業が終わった。

 鮎川の授業が始まったのは午後四時半だったので、布由はきっちり四時間の授業を受けたこととなる。

 だがこれは、桃の丘でトップレベルの成績を指示し続けるためには、最低限必要なことだろう。

 事実布由は、毎日鮎川の授業をこれだけ受けているし、休日に至ってはその時間が倍以上に増える。

 授業が終わり、鮎川が勉強部屋を出ていく。だが、これで布由の一日が終わったわけではない。

 これから風呂で身体を清めると、おじさまとの時間がまっている。

 綱渡りのような、おじさまとの時間。

 失敗しないように、不要だと思われないように、「あの人」のようにされないように。

 布由にとって一日を締めくくる、一番「失敗」できない時間が始まる。

 

     ☆

 

「失礼いたします。おじさま」

 おじさまの私室のドアをノックし、「入りなさい」とドアごしに声がかけられたことを確認すると、布由はそのドアを開けた。

 いつものように、高価そうなスーツを着こなしたおじさまが布由を迎える。

 おじさま。

 布由がそう呼ばされている「彼」は、百八十センチを越える長身で、俳優としても通用するような整った容姿の持ち主だ。

 自分を「おじさま」と布由に呼ばせているわりには、彼はまだ若い。布由は正確なおじさまの年齢を知らないが、三十歳くらいだと思っている。

 実際、彼の年齢は三十四歳で、小学生の布由が大人の年齢を測っていることを考えると、四歳の誤差は許容範囲だろう。

 それに、おじさまは実年齢よりも若くみえる。

「布由」

 名を呼ばれた布由は、デスクチェアに腰掛けるおじさまのもとへ向かった。

 肩紐で結ばれているタイプの、センスよくフリルで飾られた、寝間着を兼ねる純白のワンピース姿でおじさまの目の前に佇む布由。

 スッ

 おじさまがワンピースの肩紐を解く。布由はされるがままにじっとしている。

 ふわりとワンピースが絨毯の上に落ち、布由は産まれたままの姿をさらした。

 十一歳の誕生日を間近に控えた布由の裸体は、輝くばかりに美しい。

 細く薄い身体。細く長い四肢。ほのかに膨らむ胸部の先端を、小さく色のよい突起が飾っている。

「おじ…さま…。今夜も、よろしくおねがいいたします…」

「あぁ…わかっている」

 布由は、今夜はおじさまの機嫌がいいことを見抜いた。

 最初の挨拶に返答をくれるのは、機嫌のいい証拠だ。機嫌の悪いときは黙ったまま布由に押し入り、荒々しく肉を打ち付けることもある。

 機嫌のいいおじさまは、甘えられるのを好む。

 それを知っている布由は、おじさまの胸にしなだりかかり、

「おじさま…今夜は、優しくしていただけますか?」

「優しくしてほしいのか?」

「は、はい…」

「アルも準備できているのだがな」

 アルというのはおじさまが飼っている大型犬(ボクサーという種だ)で、布由は週に一、二回、アルと交わることを強制されている。

 アルは「クスリ」でいつでも発情している犬で、ペニスも人間と比べて遜色がない。

 アルとの行為の時、布由は首輪をつけられ、それを鎖でアルの首輪と繋がれる。

 逃げることもできず、獣のモノで性器を埋められながらも、布由はおじさまが好むように「できて」いるか、頭の隅で考えている。

(おじさまがワインを飲んでいる。気持ちいい声をだしたほうがいい)

 アルが激しく腰を振るのに合わせ布由は喘ぐ。喘ぎ声に、ときどき言葉を挟む。

(おじさま、脚を揺らしている。煩くしないほうがいい)

 布由は下唇を噛みしめ、漏れそうになる声を堪える。

 アルとの行為中でも、布由は冷静におじさまの様子を観察し、どうするのが一番望まれているのかを考える。

 いつでも、なにをしているときでも、布由はおじさまを中心にして生きている。

 運転手にオナニーショーを強制されていることは、おじさまに知られないほうがいいと布由は考えていた。

 自分が黙っていれば、運転手がおじさまに話すことはないだろう。もう少し様子を観て、どうするのが一番いいのか考えよう。

 考えること。

 布由にはとても大切なことだ。

 布由は、自分がバランスの悪い場所にいることを理解している。油断すれば「落ちて」しまう。

 慎重に行動しなければならない。

 失敗できない。

 私は、「あの人」のようにはなりたくない。

 上手く行動しなければ。

 私を守るために。

「今夜は、おじさまにしていただきたいです。おじさまのがほしいです」

「…まぁ、いいだろう」

「ありがとうございます」

 そっと顔を上げ、おじさまの顔を覗き込む。

「おじさま?」

「なんだ」

「…だいすき…です」

 布由は、ぽっと頬を染めた。「そのくらい」の演技はできる。

 そして布由はおじさまに抱えられ、隣の寝室へと運ばれた。

 

「お、おじさまぁ」

 大きなウォーターベッドに仰向けに寝かされた布由は、覆い被さるおじさまを真っ直ぐに見つめる。瞳を潤ませることも忘れてはいない。

「…あ、あの…キス、ください」

 おじさまの顔が近づく、布由は目を閉じた。

「…ぅん」

 唇が重ねられ、おじさまの舌が入り込んできた。布由はそれに自分の舌を絡め、「んっ、んっ」と甘い音で咽を鳴らす。

 しばらくキスを続ける二人。

 おじさまが離れると、布由はとろんとした表情をつくった。つくったといっても、キスによって布由が快感を感じなかったわけではない。

 布由はアルに犯されている時でも、実は「感じて」いる。彼女は敏感で、感じやすい体質だ。だが感じていても、冷静さは失わない。失うわけにはいかないから。

 冷静さをなくしてしまうと、どんな失敗をしてしまうかわかならい。

 布由の立場を考えると、それは危険だ。

 布由はおじさまに買われた。千四百万円という、布由には高いのか安いのか判断がつかない値段で。

 布由に与えられた価値。千四百万円。

 だがそれが支払われたのは布由にではなく、布由の実の叔父にである。布由は三歳の時に事故で両親を亡くし、叔父夫婦に引き取られ育てられたという過去をもっている。

 叔父夫婦との生活は肩身が狭く、窮屈なものだった。

 叔父の家を出られると知ったとき、布由が喜ばなかったといえば嘘になる。

 今の生活と叔父の家での生活を比べると、さほど差はないようにも感じている。

 ここではおじさまの望んでいる自分を演じ、彼に従っていればいい。

 そうしていれば美味しいものも食べられるし、おじさまは布由が一番辛いと感じる言葉、伯母が布由に対して二日に一度は吐いていた、「死ねッ!」という言葉を布由に向けない。

 そう考えると、自分さえ上手く立ち回ることさえできれば、おじさまとの生活は「最悪」なものではない。

 そう、「あの人」のようにされなければ。

 犯されることはもう馴れた。馴れてしまえば、それほどイヤなことではない。アルとの交尾も、おじさまとの性交と変わることはない。

 相手が違うだけで、していることは同じだ。

 布由にとって重要なのは、おじさまが自分をどう思うかであり、行為そのものではないのだから。

「あっ、おじさま」

 服を脱ぎ裸体になったおじさまの股間から伸びる、太く長い肉棒を顔もとに差し出された。

「布由」

「は、はい。いただきます」

 名前を呼ばれただけだが、おじさまがなにを望んでいるのか布由には明白だった。

 布由が身体を持ち上げると、おじさまはベッドに横になった。布由はおじさまの上向いた肉棒の先端にキスをする。

 何度もなんども、繰り返しくりかえし。

 おじさまは、こうされるのが好みだと知っているから。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱっ

 先端、棒の側面、裏側、二つの玉を包む袋にもキスを送る。陰毛が顔を擦りごわごわするが、布由は無言でキスを繰り返し送る。

「…ふ、布由」

「は、はい」

 おじさまは口でされるのにすごく弱い。早い時は一分も持たない。

 性器やアナルでの時は、布由が何回イッてもおじさまはイかない。だが、口での奉仕は別だ。

 布由が出した結論は、

「おじさまは、「される」のに弱いらしい」

 というものだ。

 性器やアナルは、主体がおじさまで受け手が布由だ。だが口の奉仕は違う。口での行為は、布由が主導権を握っている。

 だから口での奉仕は楽だ。

 おじさまが顔にだしやすいように、布由は目を閉じて心持ち顔を上に向けた。気配でおじさまが立ち上がるのがわかった。

 おじさまは顔にだすのが好みだ。性器でもアナルでも、でそうになると抜いて顔にだすことが多い。

 むわっとした熱気を布由は顔に感じた。

 そして、

 びちゅっ!

 勢いよく、白濁液が布由の小さな顔に降りそそぐ。

 ぴゅっ、ぴちゃっ

 降りそそぐそれを、布由は身動きせずに顔で受け止めた。

 どろりと液が布由の頬を伝い、未成熟な胸元に零れても、布由はじっとしている。

「はぁ、はぁ」

 そそがれる液が止み、おじざまが息を吐く。

 布由はそっと瞳を開き、滑る液まみれの顔に手をそえた。

 ぬるっ

 摩擦係数が少ないため、なんの抵抗もなく指がすべる。布由は一差し指と中指を揃え、液をひとすくいすると、それを口もとへ運び舐め取った。

「…美味…しい。おじさまの、美味しいです…」

 顔の滑りに光を反射させながら、布由が呟く。その顔は満足気で、同時に恥じらいを含み、ゾクッとするほど愛らしい。

 十歳の少女でありながら、「女」を感じさせる表情。

「おじさま…して、ください」

「どこにほしい?」

「どこでも…おじさまがお好きな穴に、ください」

 準備運動は終わり、今夜の「お勤め」の本番はこれからだった。

 

     ☆

 

 布由の「お勤め」が終わったのは、時計の針が午前一時をまわったころだった。

 布由はおじさまの部屋のシャワー室で、様々な液にまみれた身体を洗い流して、着てきた寝間着のワンピースを身に纏い自室に戻った。

「…どうしたのかしら? 今夜は、身体の中にだしてくださらなかったわ…」

 おじさまは計三回放出したが、それはすべて布由の顔にだされた。

 いつもなら、一回は体内にだすはずだ。

「私、なにか失敗したかしら…」

 考えてみても、「上手く立ち回った」としか思えない。

「…こんな日もあるわよ。そう、偶然よ、偶然…」

 布由は、ぱたんっと自分のベッドに横たわる。

 急速に睡魔が押し寄せ、目を瞑るとほぼ同時に彼女は眠りへと落ちていった。

 

 それは夢だったが、布由には自分が夢の中にいるという自覚はなかった。

「ひっ、ひいぃ」

 周りが紅く発光している、なんだがとても広く暗い場所。そこで彼女は、地面から生える五本の右腕に囲まれ、とても脅えていた。

(イヤッ! 怖いッ、こわいッ、コワイイィッ!)

 布由にとって、自分を取り囲む五本の右腕は、「恐怖」以外のなにものでもなかった。

(に、にげなきゃッ)

 しかし、どこにも逃げ場所がない。一歩でも動けば、自分が内から腐ってしまうのがわかる。

「いや、いやあぁ…イヤアアァアァァッ!」

 頭を抱えうずくまった瞬間。

 布由は「落ちて」いた。

 高層ビルの屋上から突き落とされたかのような落下感。恐怖に声もでない。

(し、死ぬ…死んじゃうッ)

 ビチャアアァンッ!

 落下していた布由は、不意に背中から水面にぶつかり、沈んだ。

 沈む。

 今度はどこまでも沈んでいく。

 自分の周りを満たしている水が、実は水ではなく、腐った血液だというとに布由は気づいた。

 粘度の高い腐った血液が、布由をからめ取り溶かそうとする。

 布由は声にならない絶叫を上げた。

 

 目覚まし時計の音に目を醒ますと、布由は自分が泣いていることに気づいた。しかし、なぜ泣いているのかわからない。悪夢をみていたのかもしれないが、どうしても思い出せなかった。

 布由は制服に着替え、朝食が容易されているはずの広間へ移動した。

「おはようございます。お嬢様」

「はい。おはようございます」

 あいさつをしてきた給仕のメイドにそう返し、十人はかけられる大きなテーブルに布由は一人で腰をおろす。

 朝食はいつも一人で採る。給仕のメイドがすべて準備をしてくれるので、布由は黙って運ばれてくる料理をまっていればいい。

 布由は、完璧なテーブルマナーを披露しながら朝食を収めていく。

「ごちそうさまでした。とても美味しくいただきました」

 給仕のメイドに告げ、布由が席を立つ。

 メイドは布由に頭を下げ、テーブルの片づけを始めた。

 布由は自室に戻り、時計を確認した。外に出るまでには、まだ十分ほど時間が残されていた。

 昨日のうちに学校の準備は終えていたが、することもないので、布由は鞄の中身を確認することにした。

 忘れ物はない。完璧だった。

 布由は少し早いが外に出ることにして、鞄をもって部屋をあとにする。

「いってらっしゃいませ。お嬢様」

「はい、いってきます」

 玄関ですれ違った使用人に軽く頭を下げ、布由は外に出た。

 布由の姿に、昨日と同じ運転手が車の後部座席のドアを開ける。布由はその後部座席に滑り込む。

 ゆっくりと車が動き出し、布由は運転手が口を開く前にスカートとショーツを下ろした。

 往路のオナニーショーと共に、牧田布由の「今日」が始まる。



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