幕間二 「神田硝(かんだ しょう)・初等部三年生の場合?」

 

「ひいぃ…ちんぽぉ。も、もっと、ちんぽおぉ」

 リビングのソファに座る直人の腰の上で、硝は自らの性器を串刺しにされる快感を、涎をたらして貪っていた。

 一回り以上年上の従兄が腰を突き上げるたび、硝は脳髄がとろけてしまいそうになり、気持ちよくなること以外はどうでもよくなっていく。

「いぃ…きもち、きもちひいぃのおぉ」

 五歳の誕生日に叔父(今、硝を犯している直人の父)にレイプされ、処女を奪われた硝は、セックスという遊びを覚えてもう四年になる。

 硝にとってセックスは、なによりも楽しく、気持ちいい遊びだ。

 それに直人が教えてくれた、「クスリ」を注射してするセックスは、それまでのセックスなどとは比べものにならないくらい、硝に快楽を与えてくれた。

 「クスリ」を注射してもらうと、なんだってできる気になり、怖いものがなくなる。しばらくすると動けないくらい気持ち悪くなったり、「幽霊」が見えたりするが、「クスリ」が与えてくれる快楽に比べれば、そんなことは些細なことだ。

 もう硝には、「クスリ」のないセックスは考えられないし、考えたくもない。

 「クスリ」とセックスは、硝に幸福をもたらしてくれる「優しい」存在だ。

「あうぅんッ! いっ、いっちゃうよおぉ」

 硝の声に応え、直人が大きく腰を突き上げる。

「うはあぁんッ…あぅ、ぃ、いっちゃ…た…」

 九歳の少女のものとは思えない白濁した「本気汁」が溢れ、結合部から直人のペニスを伝い、革張りのソファに沁みをつくる。

 だが二人はそんなことを気にしたようすもなく、快楽を貪り続ける。

 直人はまだ果てていないし、硝も一回や二回イッたくらいでは満足しない。一回目は、感じやすくなるための準備運動というところだ。

「うあっ、うっ、あっ、あっ、ああぁあんっ!」

 身体中が性器になったかのように、直人と触れ合う部分、全てが気持ちいい。硝は自分と直人との境界線が曖昧になり、「一つ」になっていく感覚を感じた。自分が液体になったかのようにも感じる。

 それは「クスリ」を使ったセックスをするよになってから得た、新しい気持ちよさだった。

(とけちゃう)

 なら、それでもいい。溶けて、なくなってもいい。硝は思う。

 これほど気持ちいいのだから、溶けてなくなってしまってもいい。

 だからもっと、もっともっと気持ちよくなりたい。

「ナ、ナオにいぃ…ちんぽおぉ、もっと、ちんぽいっぱいしてえぇ」

 具体的に硝がなにを求めているのか理解しがたいが、直人は「あぁ」と、硝が壊れてしまうのではないかと思えるくらいに激しく動く。

「あうゥンッ! い、いいよぉ。もっと、もっとおぉ」

 ガクガクと、細い首にのった頭部と、センス良く整えられたショートの髪を揺らし、硝は恍惚をその面に宿らせた。

 直人が、硝の膨らみのない胸を飾る、ぷちっと自己主張した乳首を摘む。

「うっ、はうっ…ゥンッ」

 突き刺されているのとは別の快感に、硝はキュンッとなった。

 「クスリ」を使っていなかったころは、「おっぱい(と硝は呼んでいるが、前記したように膨らみはない)」も気持ちいいとは知らなかった。

「し、硝…」

「あっ、イクのぉ? せ、せーえきぃ?」

「あぁ」

「いいよぉ。な、なかにぃ、いっぱい…せ、せーえきだしてぇ」

 瞬間。

 硝の膣内に、溢れるほどの温かいモノが放出された。

「アウゥンッ! あ、あついッ」

 硝はそれを、温かいとようよりは熱いと感じた。

 身体を燃やされるように感じた。

 でも、その熱さがとても気持ちよかった。

 世界は、「気持ちいいこと」で満ちあふれている。硝はその「気持ちいいこと」を、全て知りたいと思った。

 その、小さく幼い身体に刻み込みたいと感じた。

 「クスリ」があれば、なにも怖くない。

 ビデオで観た、痛そうなこともできる。ビデオのお姉さんは、とても気持ちよさそうだった。きっとホントは痛くなくて、気持ちいいのだろう。

 ウンチや虫を食べて、おしっこを飲んでいたビデオのお姉さんもいた。あのときは「汚いな」と思ったが、きっとホントは汚くなくて、気持ちいいのだろう。

 「クスリ」があれば、なんだってできる。

 そして、気持ちよくなれる。

 硝はまだまだ自分の知らない「気持ちいいこと」があることを、とても嬉しく思った。

 もっともっと、あたしは気持ちよくなれる。

 いっぱいいっぱい、気持ちよくなれる。

 硝にとってそれは、幸福いがいのなにものでもなかった。

 幸福で満たされた<夢>の中で、硝は気持ちのいい<夢>を見続ける。

 その身が砕け散る、終わりの瞬間まで。



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