アルバム 1 日曜の午前十時。待ち合わせの場所には、すでに彼女の姿があった。まぁこれはいつものことだ。これまで彼女が、オレよりも遅れて来たなんてことはない。 オレは小走りで、彼女がたたずむ時計塔の下に向かう。 「ごめん。待った?」 時間通りだったが、これもいつもの挨拶になっている。 「いいえ。あたしも、今来たところです」 たぶん嘘だ。でもオレは、「そう」とだけ答えた。 「今日はどうしようか? どこか行きたいとこある? ゆかなちゃん」 毎週日曜日。オレたちはデートしている。まぁ、ごく普通の恋人同士のように。 でも、手を繋いで歩くオレたちを見て、恋人同士だと思うやつはほとんどいないだろう。たぶん、少し歳の離れた仲の良い兄妹だと感じるんだろうな。なんせ一回りも歳が離れているんだから。 オレは二十二歳。ゆかなちゃんは十歳の誕生日を迎えて、まだ一月も経っていない。 そんなカップルが、世間からみれば異常だということはわかっている。でもオレは本気で彼女を愛しているし、彼女もオレを『好き』だといってくれている。 だから、誰がなんて思おうともかまわない。 オレは彼女。中村ゆかなを心から愛しているし、彼女はこの世界で一番大切な恋人だ。そう、オレ自身よりも大切な、たった一つの存在なんだ。 オレが彼女と出会ったのは、約半年前の珍しくこの街に雪が降った日のことだった。 その日オレは、大学をサボってレンタルビデオ屋でバイトをしていた。ホントはサボるつもりなんてなかったけど、バイト仲間がどうしても店に出られないというので仕方なく代理で入ってたんだ。 雪で客なんか来なくて、何気なくカウンターの中から外を眺めていると、白く染まった歩道をウロウロしている女の子が目に入った。その女の子が着ている制服は、この街では結構有名なエスカレーター式女子校の初等部のものだった。別にオレは制服マニアではないし、いわゆるロリコンでもない。何故その制服のことを知っていたかというと、店長の娘さんもその女子校の初等部に通っているからだ。娘さんは、制服のまま店に来ることがあり、オレはそれで憶えていた。 その子はなにかを探しているようすで、しゃがんで雪をかき分け、でも見つからなかったのか、少し離れた場所に移動して同じことを繰り返した。 その動作を、オレはどのくらい眺めていただろう。 五分? 十分? そんなことは忘れてしまったが、気が付いたらオレはその子の側に立っていた。 女の子は、泣いていた。 「どうしたの?」 と声をかけると、彼女はオレを見上げて「らんちゃん、いなくなっちゃったんです」と涙声で言った。 よく訊いてみると、彼女が『らんちゃん』と名付けた猫のキーホルダーを、落としてしまったということだった。 困ったことにその『らんちゃん』は白猫で、この辺りで落としたのは間違いないが、雪に紛れてしまって見つからないらしい。 真っ赤になった指先。オレはそれなりに常識を持っているので、その子がなんだか可哀相になった。 別にキーホルダーなんか無くなったって、また買えばいいだけだ。そんな高価なものでもないだろう。 当然、そんな常識外れなことは言わなかった。その子にとって『らんちゃん』は、二つとない、いや……二人といない大切な友達なんだろう。と思ったからだ。そうじゃなければ、こんなに必死になるわけがない。 「いっしょに探してください」 と、女の子は言わなかった。状況を説明すると、無言で作業にもどって、赤い指先で雪をかき分け始めた。だから、オレも無言でその作業を真似た。 運が良かったんだろう。オレはすぐ、その『らんちゃん』らしき物体を見つけた。何故女の子が必死になって探すのか理解に苦しみたくなるほど、それはかわいくない物体だった。 「これかい?」 まだ雪をかき分けている女の子の目の前に、オレはそのかわいくない物体を差し出した。 女の子は、オレが彼女の作業を真似ていたことに気がついていなかったんだろう。驚いたようにビクッとしてから、「は、はいッ」と嬉しそういった。 オレはその『らんちゃん』を女の子に手渡し、「よかったな。見つかって」といい残して店に戻った。 店に客の姿はなかった。まぁあったとしても、店をあけていたのは大した時間じゃない。トイレに行っていたようなもんだ。バイトをサボっていたとはいえないだろう。 なのにその子は急いで店内に入ってくると、「ありがとうございました」といって大げさなくらいに頭を下げた。 それに従って、肩の少し上で切りそろえられた軟らかそうな黒髪がサラッと音を立てて(オレには聞こえた。まぁ幻聴だろうが)揺れ、オレはその様子を見下ろしながら、「小さい頭だなぁ」と変なことに感心していた。 オレにしてみれば、別段取るに足らない親切だった。女の子が困っているから、なんとなく手伝ってあげようと思っただけだ。普通の行為であって、威張れるほどのことでもなかった。こんなに、力一杯礼をいわれるようなことをしたわけじゃない。 オレはなんとなく恥ずかしくなって、困ってしまった。なんといって応えればいいのかわかららず、オレは「ちょっと待ってて」といってから、店の外の自販機でホットアップルティーを二つ買い、一つをその子に渡した。 「手、冷たいだろ?」 女の子は一瞬不思議そうな顔をしてから、「ありがとう……ございます……」といって受け取ってくれた。 買ってから、「いりません」とかいわれたらどうしようと思ったが、それは杞憂だったみたいだ。 それから、アップルティーを飲みながら三十分ほど話をした。 他愛のない話だ。『らんちゃん』が彼女にとってどれほど大切な友達かとか、彼女の学校のこと、友達のこと、まぁそれもどうでもいいようなことだったが。 彼女が丁寧な言葉使いで話すのを、オレは「ふーん」とか、「そう」とかいいながら聴いていた。 その間、まったく客は来なかった。 それがオレと彼女。 里村孝司と中村ゆかなとの出会いだった。 2 オレとゆかなちゃんが、いわゆる『お付き合い』というものを始めたのは、出会ってから二ヶ月ほどが経過してからだ。 その頃オレは週二日、月曜と木曜にバイトに出ていた。その曜日は、大学に行く必要がないからだ。といっても、四年生の今となっては大学に行くのも週一日か二日になっていたが。 ゆかなちゃんはあの雪の日以降、オレがバイトしている日は学校帰りに店に顔を見せるようになった。ゆかなちゃんが店に現れる平日の午後四時ごろは、はっきりいって暇な時間帯だ。レンタルビデオ屋が忙しくなるのは午後六時ごろからで、開店の午前十一時からそれまでは暇である。バイトを始めたはかりのころは、掃除や貸し出し中のビデオをチェックしたりでそれなりに大変だと感じていたが、馴れてしまえばそんなことは昼過ぎには終わってしまう。 ぼーと時間を潰し、偶に来る客に対応する。その繰り返しだ。そんな日々の中でいつしかオレは、ゆかなちゃんが来るのを楽しみに待っているようになっていた。 時計を眺めてだいたい彼女が現れる午後四時までの時間を、何度も確認しているオレ。だが彼女がやってくると、なにを話していいのか戸惑ってしまう。これだけ歳が離れているんだから、話題が合うはずがない。オレは、自分のことは話好きで社交的だと思っているし、実際友人の前だと自分から話題を振ることも多い。なのに彼女の前だと無口になってしまって、ほとんど彼女の話を聴いて相づちをうっているだけになってしまう。 ホントは、もっと楽しく話したいのに。オレの話も聴いてもらいたいと思っているのに。 そんな自分が、とてももどかしかった。 あの日。中学生くらいの男の人から告白されて「付き合ってほしい」といわれたと、ゆかなちゃんが困った顔でオレに相談したあの時に、自分の彼女に対する感情が『恋』なのだと理解できる瞬間まで。 その理解は、自分でも驚きだった。オレはそれまで、『恋』という感情を知らなかった。告白という珍奇な儀式を受け、『断る理由がないという理由』で女の子と付き合ったことはあったが、別にその子のことは最後まで『好き』だと感じなかった。初めてキスした時も、初めてセックスした時も、オレはなにも感じなかった。 そういう人間なのだと諦めていた。 だけど違った。これは言い訳じゃないけど、オレはロリコンじゃない。ゆかなちゃん以外の子供には、なにも興味がない。 ゆかなちゃんだから、中村ゆかなだから、オレは『恋』をした。 こんなセリフは、それまでのオレなら「なにってんだ? バッカじゃねーの」と思っていたようなセリフだ。だけど、今は違う。調子がいいといわれようが、オレは彼女だから彼女を『好き』になったんだ。そう、はっきりいえる。 だから、オレはいった。 「オレだって、ゆかなちゃんが『好き』だ。付き合って欲しいって思ってる。ゆかなちゃんの恋人になりたいし、ゆかなちゃんにオレの恋人になってほしいって思ってる」 彼女は、オレの言葉の意味がよく理解できていない様子だった。冗談だと思って、どう反応していいのか分からなかったのだと、何回目かのデートの時、ゆかなちゃんはそういって恥ずかしそうに頬笑んだ。 だけどその時のオレは、自分の気持ちがはっきり伝わらなかったのだと思って、もう一度繰り返した。 「ゆかなちゃんが『好き』だ。オレの恋人になってほしい」 あまりにもストレートで、なんの洗練もされていない告白の言葉。仕方がない、オレはそれまで告白なんてしたことがなかったんだから。 「……あ、あの……本当です……か?」 「冗談でこんなこといえるほど、器用じゃないよ」 「あ、あたし……まだ子供ですよ……それに……」 「もちろんキミがイヤなら断ってくれていい。確かにオレはキミから見れば大人だろうし、キミの恋愛対象としては歳上過ぎるだろうからね。でもオレは、本当に、本気でゆかなちゃんが『好き』なんだ」 心臓が、いや……身体全部が壊れてしまいそうだった。そのくらい緊張していた。だけどオレは、意識して冷静に淡々と告げた。 ゆかなちゃんはオレの視線から逃れるようにうつむいた。 そして、そのままどのくらいの時間が流れたのかはわからない。たぶんほんの一、二分だったのだろうが、オレにとっては一日とも一週間とも感じる沈黙の後、ゆかなちゃんは顔を上げて、 「本当に……あたしでいいんですか?」 と、小さな声でいった。 オレはその言葉の意味を理解し、なにかいわなければと思ったが、肯くことしかできなかった。 「……あたしも……里村さんが『好き』です。ずっと……あの日から……ずっと『好き』でした」 ゆかなちゃんの、黒目がちな大きな瞳から涙が溢れた。その涙は、とても綺麗だった。 「あたし、まだ子供だから……里村さんに『好き』になってもらえるなんて、思ってもいませんでした……だから……見てるだけでいいって……お話ししてもらえるだけでいいって……」 涙混じりのはっきりとしない言葉。でもオレにとっては、これまでの人生の中で最高の言葉だった。 その瞬間。 オレたちは『恋人』になった。 それから、オレの生活は変わった。勉強にも力が入ったし、『立派な人間』になろうと思うようになった。 全ては、ゆかなちゃんに相応しい男となるために。彼女の恋人として、恥ずかしい男にはなりたくない。 そしてオレは、二年間続けてきたバイトを辞めた。これまで、時間がある時になんとなくこなしていたイラストの仕事に打ち込むために。 オレは、イラストレーターと呼ばれる仕事も少しだけどしている。子供のころから絵を描くのが好きで、中学高校は美術部だった。 きっかけは大学に入って初めての夏のこと、高二の時クラスメイトだった友人から電話がかかってきて、それはオレのイラストを小説雑誌の挿し絵に使いたいということだった。オレの記憶が確かなら、そいつは東京の国立大学で法律を学んでいるはずだ。なぜ雑誌のイラストの仕事を依頼してくるんだ? と思ったが、説明されて納得した。要するにそいつは、ライターのバイトをしていて、自分の書いた小説がライターをしている雑誌の姉妹誌に掲載されることになったらしい。その挿し絵を描いてくれということだった。断る理由もないので、オレは引き受けることにした。 すぐにその小説をネットで送ってもらって読んだ。中高生向けのファンタジー小説だった。高校の時そいつの書いた小説を読ませてもらったことがあったが、それはこむずかしい純文学風のもので、送ってもらった作品とはまるでちがうものだった。どちらかといえば、オレは昔の作品のほうが好きだと思った。 オレはそのファンタジー小説(原稿用紙に換算すると五十枚の短編)の指定された場面に、自分が作品に合うと感じた絵柄でイラストを描いた。トビラとなる絵を含めて、全部で六枚のイラストを三日で上げて、宅急便で送った。コピーもとらずに原稿をそのまま送ったので、後でそいつに怒られた。どうやら普通は、コピーを送って確認しあった後に原稿を送るものらしいのだ。そんなこと知るわけがない。 だが、オレのイラストは手直しする必要がなかったらしく、そのまま雑誌に掲載された。初めての仕事だったので、オレも浮かれていたのだろう。学校帰りにその雑誌を買って帰ると、出版社から同じものが郵送されてきていて、無駄な買い物をしてしまったと思ったものだ。 どうやらそいつの小説は評判が良かったらしく、計五回の連載となって、オレも五回イラストを描いた。その作品は文庫化されて、オレのイラストが表紙となっている小説が本屋に並んだ。こんどは本屋に並ぶ前に送られて来ていたので、無駄な出費をすることはなかった。 その後も、こんどは小説雑誌の編集者の依頼でイラストを描いて送った。月に三枚か四枚ほどだ。それと実家からの仕送りだけで食べていけるほどオレは裕福じゃないし、世間は甘くないので、レンタルビデオ屋でもバイトを始めたというわけだ。 そのイラストレーターとしての仕事を、オレの担当(なぜかそんな人がいるのだ)をしてくれている桜島さんという女性(自称二十七歳だが、ホントは三十を超えているらしい)に増やしてもらえないか頼んでみると、なんだかあっけなくオッケーされた。 オレに与えられた仕事は、中高生に人気がある作家の新作小説のイラストと、信じられないがゲームのキャラクターデザインの仕事だった。まぁそのゲームは企画段階で、本当に発売されるかどうかは現段階で未定だそうだが。それでも、仕事の料金はこれまでとは雲泥の差があった。 小説のほうは、作家自らがオレの絵を使いたいといってくれたらしい。その作家とは先日会った。大学に行かなくてもいい日に、東京まで行ってきたのだ。東京なんて中学の修学旅行以来だったが、考えていたよりもすんなりと待ち合わせの出版社につけた。家を出てから、三時間もかからなかった。東京ってのは近い場所にあったんだなぁと、変に感心した。 その作家は、女性だとはきいていたが、デビューして五年経っているというのでオレより年上だろうと思い込んでいたが、実際はオレと同じ二十二歳だった。高二の時にコンテストで賞を取ってデビューしたらしい。彼女はこれまでに出版されている作品を全部もってきてオレにくれたが、オレはなにも用意してこなかったので、家に帰ってから貰った本を読んで、オレの絵でその小説の登場人物を描いて送ったらえらく喜んでくれた。その小説は中学二年生の女の子が主役の学園ミステリー(と帯に書いてあった)で、全八巻もあり読むのが大変だった。まぁそれなりに面白かったが、女の子向けに書いてあると本人がいった通り、オレなら買ってまで読まないだろうという内容だった。 作家もいっていたが、どうやらオレのイラストはそれなりに人気があるらしく、桜島さんはオレが仕事を増やしてくれというのを待っていたそうだ(一応学生なので遠慮していたらしい)。そういえば、ファンレターというもが送られてくることがある。礼儀として返事は返しているが、頻繁に送られてくるものでもないしあまり気にはしていなかった。 そんなわけで、今オレは学校に行っていない時はアパートの部屋(六畳一間)でイラストを描いて生活している。もちろん、日曜は夕方までゆかなちゃんとデートだけど。 そんな生活を始めて一番嬉しかったのは、オレの絵をゆかなちゃんが褒めてくれたことだ。 「孝司さんって、すごいですね」 付き合うようになって、ゆかなちゃんはオレのことを「里村さん」ではなく「孝司さん」と呼んでくれるようになった。オレは「ゆかなちゃん」のままだ。 ゆかなちゃんは「ゆかなって、呼び捨てにしてください」といったけど、照れくさいのかどうかはわからないが、オレは「ゆかなちゃん」で通している。 オレは今、仕事も順調だし、私生活も充実している。 これまでの人生で、一番いい時なのは間違いない。 まったく悩みがないわけじゃないけど……。 3 オレは、自分では自分のことを『それなりに普通』のヤツだと思っている。だから、恋人とセックスしたいと思うのは当然なわけだ。 だけどオレとゆかなちゃんは、まだキスだけの関係だ。それ以上の行為に踏み切るのはまだ早いと思っているし、それが事実だろう。オレはゆかなちゃんが大人になるまで待つつもりでいるが、それが何年後になるかはわからない。かといって、性欲とかいうヤツは厄介なヤツで、そんなに我慢できるものじゃない。自分で処理するしかないのだが、オレはゆかなちゃん以外の女性に対して、まったく興味がなくなってしまった。はっきりいってしまえば、そのての本やビデオに写っている女優じゃ勃起しなくなってしまったんだ。 ゆかなちゃんに相談できるわけないし、オレは結構本気で悩んでいる。初めは躊躇っていた、ゆかなちゃんとの行為を想像しての自慰も、今では恒例になってしまった。 まぁ、それで我慢していればいいんだろうけど……。 ゆかなちゃんは、キスは唇を重ねるだけだと思っていたような女の子だし、オレの悩みを察してくれるとは思っていなかった。 だから、彼女のその言葉は以外だった。 「孝司さん。あたしを『大人』にしてください」 ショッピング街で買い物を終えて、オレたちはオレが住んでいるアパートの部屋にきた。ゆかなちゃんがオレの部屋にくるのは、これで三度目だ。 初めてのときは二人共変に緊張していて、ずっと黙ったままだった。二度目のとき、初めてキスをした。 そして、今日が三度目だ。 ゆかなちゃんがそんなことをいったのは、買ってきたお弁当を食べ終えてお茶を飲んだ後、どちらからともなく求めあったキスを終えたときだった。 どこでそんな言葉を覚えてきたのかわからないが、ゆかなちゃんは真面目な顔でそういった。 そういえば今日は、ゆかなちゃんの口数は少なかった。この言葉をいうタイミングを計っていたのかもしれない。それに、緊張もしていたんだろう。 でも……ホントに、自分がいっている言葉の意味がわかっているのだろうか? オレはわかってないと思うけど……。 ゆかなちゃんの真意、というか『どこまでしっているのか』を図りかねているオレに、彼女は追い打ちをかけた。 「あたしだって、『大人の愛し合いかた』はそれなりに知ってます……」 うーん……それなりに……か。まぁ、そのそれなりってのが問題なんだろうな。 「ゆかなちゃん。もしかして、その『大人の愛し合いかた』ってのは、裸で抱き合うだけだとか思ってない?」 「えッ? ち、ちがうんですか?」 やっぱりな。そんなことだと思った。 「ザンネンだけど、違うかな」 「どう違うんですか?」 「ゆかなちゃんは、赤ちゃんがどうすれば産まれるか知ってる?」 「はい。結婚した男の人と女の人が、裸で抱き合うと生まれるんですよね」 マジか? ここまでとは……。でも、この歳だとこんなもんなのか? 「半分正解」 ホントは全然違うけど……。 「じゃあ。あとの半分はなんですか?」 うッ……ちゃんと説明したほうがいいのか? 「教えてください」 「ゆかなちゃんにはまだ早いよ」 「……それは、あたしがまだ子供だからですか……?」 そうだよといったら、ゆかなちゃん傷つくんだろうな。ここは、ちゃんと説明すべきだろうと思った。 「ゆかなちゃんは、おしっこの穴の下にもう一つ穴があること知ってるよね?」 恥ずかしいこといってるわりに、あまり照れることなく訊けた。 「……はい。さわっちゃいけない場所ですよね」 ゆかなちゃんは少し恥ずかしそうだ。でも『さわっちゃいけない場所』とは……。 女の子はそう教えられるのだろうか? 「その穴に、男の人の性器……ってわからないよね」 「すみません……わからないです」 「うん。その……おちんちんを入れるんだよ」 ゆかなちゃんは驚いたような顔をした。考えたこともなかったのだろう。 「……本当……ですか?」 「ゆかなちゃんに嘘なんか吐かないよ」 「あっ……そう……ですよね。ごめんなさい」 「いいんだ。ゆかなちゃんが信じられないのも当然だと思うから」 「でも……どうやって……その……」 「大人になれば、身体がそう変化するんだよ」 今でも無理すれば入らないこともないと思うけど、そんなことはいわないほうがいいだろう。 「そして、男の人が女の人の中に精液というものを出すと、女の人が妊娠……これはわかる?」 「はい。わかります」 「妊娠して、子供が産まれるんだ。そして妊娠するのには、結婚しているしていないは関係ないんだよ」 「結婚してなくても、子供ができるんですか?」 「大人の女の人だったらね。だからゆかなちゃんには、まだできないない……と思う。ゆかなちゃん、生理はまだだよね」 「せいり……ですか? なんですかそれ?」 「女の人が、子供を産める身体になったって証拠だよ。たぶん、もう少ししたら学校で教えてくれると思うよ」 「そうですか……」 ゆかなちゃんの頭の上には『?』が浮かんでいる。想像できないらしい。オレもこれ以上は説明できない。男だし。 「『大人の愛し合いかた』っていうのは、その妊娠するようなことをすることなんだよ」 「だから、あたしには無理なんですか?」 「今はね」 「でも……孝司さんはできるんですよね……」 「それは……そうだけど……」 「孝司さんは、それでいいんですか?」 「なにが?」 「ですから……その……『大人の愛し合いかた』ができないあたしでも……好きでいてくれますか?」 「もちろんだよ。そんなこと関係なく、オレはゆかなちゃんが好きだよ」 かわいいな。そんなこと心配していたのか。 「でも……でも……」 「心配しなくても、オレはゆかなちゃんが大人になるまで待つよ。もちろん嫌いになんかならない」 「はいッ。ありがとうございます」 なにが「ありがとう」なのかわからないが、ゆかなちゃんが嬉しそうだからいいか。 「だったらいいです。でも……」 「でも?」 「……あの……た、孝司さん?」 「なに?」 「孝司さんは……あたしの裸……見たいですか……?」 「……は?」 「ですから……男の人は、好きな女の人の裸が見たいって……友達が……」 どんな友達だ? ませたガキがいるもんだな。それとも、やっぱりゆかなちゃんが知らな過ぎるのか? 「そ、そりゃ見たい……よ」 「そ、そうなんですか……」 沈黙。なにをいえばいいのかわからない。 「……だったら……いいですよ……あたし、孝司さんになら……今日は、そのつもりでしたし……」 恥ずかしそうに、顔を真っ赤してゆかなちゃんはいった。 オレは(たぶんバカ面をしながら)「いいの?」と訊いた。 「……はい……孝司さんがよろこんでくれるなら……あたしの裸、見てください……」 そういうとゆかなちゃんは、水色のワンピースを脱いで、きれいな肢体を露わにした。それは想像していたより白く、細かった。 腰は強く掴むと折れてしまいそうで、微かな膨らみをもつ胸部の頂上に位置する桜色の乳首は、そのほとんどが陥没している。そしてなによりも、肌の透き通るような白さが眩しかった。 未成熟な少女の体型。小さくて、細くて、薄い。 呆然と見取れているオレをチラッと見て、ゆかなちゃんはなんの飾り気もない真っ白なショーツを下ろした。 現れたつるつるの股間は、一本線としかいい現せなく、当然陰唇は顔を覗かせていない。ぷっくりとした柔らかそうに膨らみ。でもそれは、完全に閉じきっている。 身体には靴下だけを纏った姿で、 「恥ずかしいですけど……見てください……」 と顔を赤らめるゆかなちゃんは、オレがこれまでに見たどんな存在よりも美しく、可憐で、きれいだった。 「ゆかなちゃん……」 「……はい……」 「その……あッ……きれい……だよ」 「は、はい。ありがとうございます……。うれしい……です」 「……触っても……いい?」 ゆかなちゃんは小さく肯いた。 オレはどこに触れていいのか迷ったけど、最初は肩に触れた。すべすべした、きめ細かい肌。でも手の平にしっとりと吸い付くようだった。 オレが腕を移動させて小さな膨らみに触れると、ピクッとゆかなちゃんは身体を振るわせた。 「ぅん……くすぐったいです……孝司さん」 「ご、ごめん」 オレは慌てて手を離した。ぷにっとした柔らかい感触が、その手に残っていた。頭の中が真っ白になるような感触だった。 「いいですよ。孝司さんがしたいようにしてください」 オレはゆかなちゃんをベッドに移動させると、仰向けに寝かせた。 「ゆかなちゃん……脚……開いて」 少し躊躇いの時間は必要だったが、ゆかなちゃんはオレの要望に応えてくれた。 これまで隠れていた部分も、はっきりと確認できた。脚を開いても完全に全部閉じていて、性器というよりは素肌だ。この閉じた割れ目の奥に、本当の性器が隠れている。 ゆかなちゃんの大切な部分が、この割れ目の奥に……。 オレはまだ誰も触れていないであろうその部分に顔を近づけ、思わず割れ目に沿って舌を這わせていた。 「あッ! ダメです……そんな……汚いですぅ」 「きれいだよ……ゆかなちゃんのは」 「でもぉッ」 「オレのしたいようにしていいんだよね?」 「はい……でも……そこは……」 「イヤ?」 「イヤじゃありません……恥ずかしいですけど、孝司さんなら……いいです」 それを確認すると、オレは割れ目を指で開いた。 「あッ」 初めての経験だったのか(それはそうだろう)、ゆかなちゃんは声と共に腰を浮かせた。 光の下に露わになったピンク色の内部は、やはり想像通り未発達だった。 小さなクリトリスは完全に皮に埋もれていて、陰唇もまったく伸びていない。それが被う膣口もキュッと堅く閉じていて、指一本受け入れてはくれないだろう。 でも、ゆかなちゃんの幼いその部分の香りに、オレはクラクラした。 舌を伸ばして、その大切な穴に触れる。ゆかなちゃんの味がした。 「そ、そこは……触っちゃダメです……」 「オレでも?」 「……」 「オレでも……ダメ?」 「……孝司さんなら……いいです……」 オレは再び大切な穴の味を楽しんだ。しかしゆかなちゃんは、「くすぐったいです」というだけで、感じてはいないようすだった。その証拠に、まったく濡れていない。 オレはその穴から、おしっこの穴に舌を移動させた。少し、おしっこの味がした。 いつまでも舐めていたかったけど、くすぐったさに耐えているゆかなちゃんの「ぅん」という声と、小刻みに震えている身体のことを思って、股間から顔を離した。 「……孝司さん……」 はぁはぁと息を切らせながら、潤んだ瞳でゆかなちゃんがオレを見る。 「ごめんね。くすぐったかったよね」 「はい……でも……なんだかうれしかったです……」 「オレもうれしかったよ」 と、オレは自分の股間がズボンの中で完全に起立しているのに気づいた。それは痛みを伴っていて、外に出たいといっていた。 そのようすに、ゆかなちゃんは気が付いたようだ。 「あの……孝司さんの……大丈夫ですか……?」 「うん……大丈夫だよ……って、ゆかなちゃん知ってるの?」 「えっと……少しですけど……。男の人の……お……おちんちんは……気持ちいいと大きくなるって……その……」 「そうだよ」 「孝司さんの、お……おちんちん……大きくなってるんですか?」 「そう……みたいだね」 「あの……」 「ん?」 ゆかなちゃんは身体を起こして、 「見せてください……孝司さんの……おちんちん」 と、膨らんだオレの股間をまじまじと見ながら言った。 「……」 「ダメ……ですか?」 「……見たいの?」 「……はい……孝司さんのだから……」 少しの葛藤の後、オレはズボンのファスナーを開けて、勃起したペニスを外に出した。思った通り、それはカチコチになっていて、亀頭は真っ赤に充血していた。 「……これが……孝司さんの……」 「普通はこんなになっていないよ。ゆかなちゃんの裸を見たから、こうなっているんだ」 「あの……大きいです……ね」 なんと返答すればいいのか。それに、誰と比べて大きいのか。たぶん父親なんだろうけど……。 「気持ち悪いでしょ?」 「そんなことありません」 といって、ゆかなちゃんは不意に手を伸ばした。ゆかなちゃんがオレの膨張しきったペニスに触れた瞬間。 ドピュッ! 触れられただけで、自分でも信じられないほど大量の精液が、勢いよく噴出した。 よりによって、ゆかなちゃんの顔めがけて……。 「きゃッ」 一度では収まらず、ピュッぴゅっと続けてオレは放出してしまった。それも、狙ったかのようにゆかなちゃんの顔面にこびり付いた。 かわいい顔をベットリと精液で汚し、ゆかなちゃんはびっくりした表情で固まっている。 「ご、ごめんッ。ゆかなちゃんッ」 「……た……孝司……さん? これ……なんですか?」 「ごめん。その……精液……」 「これが、さっきいってたせーえきですか……」 オレは慌ててテッシュの箱を取ると、何枚も引き抜いてゆかなちゃんの顔に付着した精液を拭った。 ゆかなちゃんは、されるままになっている。 「ごめんね、ゆかなちゃん……オレ……気持ちよっくって……我慢できなかったんだ」 「気持ちいいと出るんですか? せーえきって」 「そうだよ。ゆかなちゃんがあまりにかわいくて、それで気持ちよくなって……」 「そうなんですか……」 ティシュが山になっていく。それでもまだ、ゆかなちゃんの顔はテカテカと光っていて、洗わなければきれいにならないだろう。 「ちょっとまってて」 オレは洗面台でタオルを濡らして、それでゆかなちゃんの顔を拭いた。よく見てみると、髪にも、お腹や胸元にも精液が付着していた。それもタオルで拭った。 ゆかなちゃんは少し恥ずかしそうだったけど、じっとオレの作業を受け入れていた。 「ごめん。気持ち悪かったよね……」 ゆかなちゃんは首を横に振って、 「いいえ。少し驚きましたけど、イヤじゃありませんでした。それに、孝司さんが気持ちよかったのなら、あたしそれでいいです」 「ゆかな……ちゃん……」 なんてかわいいんだ。そしてこんなにかわいいゆかなちゃんが、オレの恋人だなんて……。 「孝司さん……あの……」 「ん? なに?」 「おちんちん……また、大きくなってます……」 あんなに放したにも関わらず、俺のモノは力を取り戻していた。 「ご、ごめん」 「なんであやまるんですか?」 「……なんとなく」 「クスッ……孝司さん、もっとあたしの身体で気持ちよくなってください。孝司さんの思うままに、あたしの身体さわってください。あたし、くすぐったくても我慢しますから」 オレはゆかなちゃんに抱きついて、そのままベッドに押し倒した。オレの体重で潰さないように気を付けて。 「きゃッ」 「ゆかなちゃん……大好きだよ」 「あたしも大好きです」 オレは、首筋から下にくだるようにキスを浴びせた。胸にも、乳首にも、おへそにも、お腹にも、もちろん性器にも。 そして裏返しにして、背中に、腰に、お尻に、そしてキュッと閉じた肛門に。 「ぅあぁッ」 肛門にキスした瞬間。ゆかなちゃんはこれまでと違う反応をした。 「……孝司さん……そんなとこ汚いです」 「汚くないよ」 と、オレはもう一度そこにキスした。閉じた穴を舐めた。 「くぅうん」 なんだろう? もしかして……感じてる? オレは穴を割って、舌を差し入れた。 「はあぁぅッ」 間違いない。感じている。 オレは舌を動かして肛門に唾液を塗り付けると、顔を離して湿った排泄口に指を挿入した。 「あッ。た、孝司さんッ」 メリッというか、コリッというか、ゆかなちゃんのお尻の中は様々が感触でオレの指を締め付ける。 ゆかなちゃんは自然にお尻を突き上げるような体勢なっていて、オレが指を動かす度に「はっはっはっ」と湿った声で鳴いた。 オレはその声をもっと聴きたくて、夢中になって指を動かす。 コリコリした腸壁を擦る。 「ふぅんッ」 締め付ける肉を広げるように指を回す。 「あぁぁあぁぅうぅ」 ぞくぞくとした感覚が、オレの全身を走った。 そして…… 「……た……たかし……さん……」 ゆかなちゃんの切なげな声と共にキュッと肉が強く締まり、オレの指は温かいお尻の中から押し戻された。 オレの指が抜けたと同時に、ゆかなちゃんの小さな肛門の奥から、にゅるぅッと勢いよく褐色の細長い物体が飛び出した。 ゆかなちゃんの肛門を押し広げて出てきたのは、彼女のウンチだった。 プッ その音を最後に、肛門がキュッと元通りに閉まる。 オレが、褐色の物体が付着したゆかなちゃんの肛門を呆然とみていると、 「……うぅ……えッえッ……」 ゆかなちゃんが泣いている。ヤバイッ。オレはなんてことしてしまったんだッ! 「ゆ、ゆかなちゃ……」 「えッ……ご……ごめんなさい……ごめんなさい孝司さん……ううっ……ごめんなさい……」 オレの謝ろうとする言葉を遮って、ゆかなちゃんが泣きながらいった。 「ごめんなさい……嫌いに……嫌いにならないでください……あ、あたし……」 ゆかなちゃんは、一方的に自分が悪いと思っているようだ。 「嫌いになんかならないよッ。その……オレが悪いんだ。ごめん、ゆかなちゃんッ」 そう、これはオレが悪いんだ。ゆかなちゃんは悪くない。 ゆかなちゃんはオレにお尻の中を掻き回されて、急にウンチがしたくなったに違いない。だけど、彼女にはそれがいえなかった。恥ずかしかったんだ……。当たり前だ、女の子なんだから。 なのにオレはそんなことに気づきもしないで、ゆかなちゃんのお尻の中を指で掻き回すことに夢中になっていた。ゆかなちゃんのことを考えもしないで、独りよがりな快楽に耽っていた。 最低だ……オレ……。 なのにゆかなちゃんはオレを責めもしないて、オレに嫌われるんじゃないかって、そんな心配をしている。 オレはシーツに顔を押しつけて泣いているゆかなちゃんを、後ろから抱え上げるようにして抱きしめた。 「ごめん、ゆかなちゃん。ゆかなちゃんはなにも悪くない。悪いのはオレだ。ごめん……ホントにごめん……」 「うぅ……孝司……さん」 「大好きだよ……ゆかな……」 オレは初めて彼女を呼び捨てにした。 そして、ゆかなの涙を彼女の排泄物が付着していない指でぬぐって、唇にキスをした。舌を絡めない、触れ合うだけのキスを。 愛している……ゆかな……。 心から、そう想いながら。 4 夏休みに入り、ゆかなは毎日オレの部屋に来ている。 仕事が忙しくなったオレのことを考えて、それほど長居するわけじゃないけど、それでも午後一時から四時までの三時間、オレたちは恋人の時間を過ごしていた。 「ふぁふぁふぃふぁん。ひほふぃひひふぇふふぁ?(孝司さん。気持ちいいですか?)」 ベッドに股を開いて座ったオレの目の下には、しゃがみ込んでオレのペニスを喰わている全裸のゆかながいる。とはいえゆかなの小さな口では、亀頭部分を頬張るだけで精一杯なのだが。 すでにゆかなはの性的知識と経験は、その年齢以上のものになっているだろう。セックスの意味も説明したし、避妊によって妊娠が防げることも話した。 上目使いでそう訊ねるゆかなに「気持ちいいよ。ゆかな」と答えると、ゆかなは口元を涎でベトベトにしながら、ニコッと笑って忙しく舌を動かす。 あの日以来、オレたちの関係は急速に進んだ。結合はまだしていないが、ゆかなは濡れるようになったし、フェラチオも覚えた。 オレのパソコンのハードディスクには、デジカメで撮ったゆかなの恥ずかしい映像が数えきれないほど納められている。 ゆかなはここに来ると毎日のように、「もう大丈夫です。ここに入れてください」と割れ目を開いて見せるのだが、オレは躊躇っている。 ゆかなの性器はまだ未発達で、オレを受け入れることができるとは到底思えないからだ。オレは、もう二度とゆかなを泣かせたくない。例えゆかなが望んでいるとしても、これは譲れない。 それに、もしゆかなを『壊して』しまったらと考えると、身体が結合できないことなど大したことじゃない。 オレとゆかなは、心で結合している。それで今は十分だ。 ゆかなの舌が、オレの尿道を刺激する。もう……放そうだ。 「……ゆかな」 ゆかなはオレが達しそうなのを察知して、これまで以上にオレが感じる場所を責める。 ちゅぴゅ。ちゅちゅ。 湿った音が室内に響く。そしてゆかながちゅうーッと強く吸った瞬間、オレは果てた。 ドプッと、ゆかなの口内に射精した。 ゆかなは咽せることなく精液を口に溜めて、ペニスに残った精液を残らず吸い出してから、オレのペニスを放して精液を飲み込んだ。 コクンとゆかなの咽が動き、オレはなんともいえない幸せな気分になった。 ゆかなにしゃぶってもらうのは、これで何度目だろう? 随分ゆかなの舌技は上達した。最初は口内に射精する度び咽せていたし、精液を飲み込むのにも苦労していた。 オレはゆかなをベッドに上げると、ゆかなの股間に顔を埋めた。閉じた割れ目を指で開いて、未発達な膣口に何度もキスをする。 ゆかなは「んッ」と甘い声で応えてくれる。ジュンと、オレの唾液じゃない液が量は少ないが溢れ出し、オレはその美味しいジュースを一滴も零さないように舐め取った。 力が抜け、クタッとなったゆかな。オレはゆかなの秘部から顔を離し、ベッドに仰向けで横たわる彼女の小さな胸に触れた。 膨らみはほとんどない。でも、最高に触りごこちのいいゆかなの胸。通常は陥没している桜色の乳首が、オレの手の平の中でツンッとした堅さになる。 オレがその突起を口に含むと、ゆかなは「アンッ」と高く甘い声で鳴いた。舌で捏ねるように刺激すると、その声は一層甘さを増す。 ビクンッとゆかなが身体を反らすと、肉付きが薄い色白の肌にはっきりと肋の形が浮き出した。 「た……かし……さん」 柔らかくてすべすべの肌が、うっすらと汗ばみ始める。ゆかなの香りに、オレはクラクラした。 「孝司さん……あたし……もう……」 切なげに訴えるゆかな。 「わかってるよ。お尻にしてほしいんだね」 ゆかなは、コクンと恥ずかしそうに肯いた。 「じゃ、後ろ向いて」 ゆかながうつ伏せになってお尻を突き出すと、オレの目の前にゆかなの小さなお尻と濡れた割れ目が露わになる。 オレはゆかなの股間を濡らすジュースで指を湿らすと、それをキュッと閉じたゆかなの肛門にゆっくりと差し入れた。 「ぅンッ」 オレは指を締め付ける愛おしい感触を楽しみながら、ゆかなの排泄器官の中をやさしく刺激した。 「あッはぁーぅんッ」 「気持ちいい? ゆかな」 「は……はい……きもち……いいですぅ」 最初の行為がそうだったためか、元々ゆかながそうだったのか、ゆかなはお尻が一番気持ちいいらしい。 しばらくゆかなのお尻の中で指を動かしていると、キュッきゅっと腸が収縮を始めた。 「た、孝司さん……出ます……」 オレはテッシュの箱を引き寄せて、何枚がテッシュを引き抜いた。 「いいよ。出して」 「は、はい……」 オレが指を抜くと、肛門を押し広げながら、にゅるッと『それ』が飛び出した。オレは『それ』をテッシュで受ける。 今日は、いつもより少し多めだ。香ばしい香りのゆかなの『それ』は、オレの物より黄色で艶やか色をしている。 ティシュの上に盛られた、ゆかなの『ウンチ』。かわいいと感じても、汚いとは感じない。ゆかなの物だから、ゆかなのウンチだから汚くない。 お腹の中の物を吐き出したゆかなは、「はぁ……はぁ……」と息を吐いて余韻に浸っている。オレは再びテッシュを引き抜いて、それでゆかなのお尻をきれいにしてあげた。 「気持ちよかった?」 「はい……気持ちよかったです。孝司さん……」 ウンチを吐き出すのが、ゆかなが『イッた』証拠だ。 お尻が性器。指がペニス。それがオレたちの疑似セックスになっている。できればペニスはペニスにしたいが、ゆかなの小さな肛門では、それはまだ不可能だ。 前の穴に比べて後ろの穴のほうが指を素直に受け入れてくれる(前の穴には第一関節までしか入れていない。無理をして、処女膜を破ってしまうのが怖いからだ)が、前の処女を失うより先に後ろの処女を失うのもなんだか可哀相だし、指は一本しか入れないようにして、お尻を開発するのは留めている。 オレはまだ余韻に浸っているゆかなをそのままに、ウンチが盛られたテッシュとお尻を拭いたテッシュをトイレに流した。オレの指に付着したウンチもテッシュで拭って、それも流した。 戻ってみると、ゆかなはベッドにちょこんと腰掛けていて、オレをみて少し恥ずかしそうに頬笑んだ。 オレも頬笑み返してゆかなの側に近づくと、小さな頭を被う軟らかい髪をそっと撫でた。するとゆかなは目を瞑って、その感触を楽しんでいるように「ふふっ」と幸せそうに笑った。 行為が終わるとオレは、シャワーを浴びると髪が濡れてしまってゆかなの両親に不審に思われるので、タオルを温水で濡らしてゆかなの身体を拭ってあげる。 そして乾いたバスタオルで細い身体を拭いていると、その日のお別れの時間が近づいているのを感じて、なんだか寂しくなる。 また明日逢えるのに、それまでの時間がとても長いように思える。 「ねぇ、ゆかな」 「はい? なんですか」 オレはゆかなの細長い脚を拭きながらいった。 「今度の日曜、どこか出かけないか?」 今日は木曜だから、その日は三日後だ。先週の日曜はずっとオレの部屋で抱き合っていたので、二人で出かけるのは二週間ぶりになる。 「いいですよ。あたし、お弁当作ってきます。今度は上手に作りますから」 ゆかなは、あまり料理が得意ではない(と、本人はいっている)。オレと遭うまで、料理は母親の手伝いしかしたことがなかったそうだ。 でも、今は料理の勉強をしているらしい。この前お弁当を作ってきてくれて、オレは美味しいと思ったのだが、「……あまり美味しくないですね……ごめんなさい、孝司さん」と、泣きそうな声でいった。 オレは感じた通りに「美味しいよ」と応えたのだが、 「孝司さん、優しいですね。でも、あまりあたしを甘やかさないでくださいね。あたし、甘えることしかできなくなってしまいますから」 と真剣な顔(でもかわいい)でいった。 「ゆかなは、行きたいとこある?」 「うーん……そうですね。水族館に行きたいです」 「初めてのデートのときに行ったとこ?」 「そうです。憶えててくれたんですね。うれしいです」 「忘れるはずないよ。ゆかなと一緒にいたときのことは、全部憶えてるさ」 「あたしも孝司さんと一緒にいたの、全部憶えてます」 そしてゆかなはオレの目をみて、 「絶対に……忘れません」 といった。 オレは肯いて、 「オレも忘れない。これまでのことも、これからのことも……。ずっと、ゆかなと、ゆかなとの思い出と一緒に生きていく。だから、ずっとオレと一緒にいてほしい」 「……はい……あたしは、ずっと孝司さんと一緒にいます。約束します」 「あぁ……ありがとう。ゆかな」 オレはゆかなをギュッと抱きしめた。ゆかなの温かさ、柔らかさ、ゆかなの存在を証明する全てが愛おしい。 「た、孝司さん……苦しいです……」 「ご、ごめん」 オレが力を緩めると、ゆかなはくすくす笑って、 「大好きです。孝司さん」 とオレの腰に腕を回した。 「オレも大好きだよ。ゆかな」 いつまでもそのまま抱き合っていたいけど、時間は止まってくれない。ゆかなは家に帰らなければならないし、オレは仕事を始めなければならない。 生きるということは、幸せであると同時に残酷だ。 でもゆかながいてくれるから、オレは生きていることが嬉しい。 大切な存在をみつけてしまったと思う。自分以上に大切な存在。絶対になくすことはできない、大切な人。 オレはみつけてしまった。 オレを強く、そして弱くする存在を。 「……ゆかな……」 「はい。孝司さん……」 言葉は続かない。でも、それでよかった。 名前を呼べば応えてくれる大切な人が、今この瞬間、オレの腕の中にいる。その事実が全てだった。 だからもう少し、もう少しだけこのままで。 そして……ずっと、『この人』と一緒に。 End |