キミとボクのカタチ

 

 

     0

 

 解り合えたという『勘違い』で、彼と彼女は幸福を手に入れた。

 でも本当は『勘違い』などではなく、彼と彼女が手に入れた幸福こそが、唯一絶対の『真実』。

 だから云える。

「あなたを愛しています」

 その〈言葉〉こそが、『真実』。

 

     1

 

 大学を卒業して就職のためこの街に引っ越してきたボクは、さほど多くもない荷物を整理し終え、初めての街を買い物がてら散歩に出ることにした。

 ……まではよかったのだけど、いざアパートに戻ろうとしたとき、自分がどこにいるのか把握できていなくなっていた。

「ここ……どこだ?」

 自分では把握できてきるつもりだったけど、一時間ほど道に迷っているうちに、「もしかして、これってマイゴ……?」という事態にまで陥ってしまった。

 やがて暮れ始めた陽光に照らされ、両手にぶら下がっている、散歩の途中で買った雑貨や食料の重さにボクは呆然となる。

 辺りを見渡しても、やはり事態が好転するわけがなく、見知らぬ住宅街の真ん中で立ちつくすしかないボク。

「大学まで卒業したくせに、マイゴになるなんて……」

 と、その時、

 前方から、仲良く会話しながら二人の女の子が歩いてきた。

 年齢はともに十歳前後。腰にまでとどく長く真っ直ぐな黒髪の女の子と、ショートカットがよく似合っている、少し小柄な女の子だ。

「ごめん。ちょっと教えて欲しいんだけど」

 アパートへの道を訊ねたボクに、

「そんなアパート知らないよ。アヤ、知ってる?」

 と、ショートカットの子が長髪の子に問う。

「いいえ。もうしわけございませんが、わたくしも存じませんわ」

 長髪の子は、丁寧な口調で首を横に振りながら答えた。

 質問にちゃんと答えてくれたのは有り難かったけど、これではなんの解決にもならなかったので、ボクは駅の場所を訊ねることにした。駅からだと、アパートまでの道順がなんとなくわかるような気がしたからだ。

 ボクは、偶然にも駅に向かう途中だという二人に案内されて駅に到着した……がそこは、アパートの最寄り駅の隣駅だった。

 どうやらボクは、一駅分歩いていたらしい。確かに考えてみると、ずいぶんと歩いた気はした。

「ありがとう。助かったよ」

 ボクがいうと、彼女たちは照れたように笑った。

 このときになって初めて、ボクは彼女たちがすごくかわいいことに気がついた。どうしてそれまで気がつかなかったのか不思議なくらい、二人ともかわいかった。子供服のモデルにだって、彼女たちほどかわいい子はそういない。

 ちなみにボクは、大学生のとき子供服のカタログを編集するアルバイトをしていた。先輩の紹介で始めたバイトだった。

 最初は気乗りしなかったけど、やってみると楽しい仕事だったし、ボクの自分でも知らなかった一面が露わにもなった。

 それは、

「どうやらボクは、小さな女の子が好きらしい」

 というものだった。

 モデルの女の子たちのかわいい写真にドキドキして、それが下着姿だったりすると、股間に血が集まり硬くなったりもして、それでボクは、自分が「ロリータコンプレックス」であることに気がついた。

 そのことを認めてしまうと、子供服のカタログ編集という仕事はボクにとって最高の仕事となった。写真撮影なども見学させてもらい、カメラの前でポーズをとっている小さな女の子たちに胸を高鳴らせた。

 写真撮影を見学させてもらって驚いたのは、モデルの子たちが、人前でも平気で着替えたりする。ということだった。

 もう胸が膨らみ始めた小学校中高学年の子でも、当然のように裸になったり、下着姿になったりしていた。

 その度にボクはどこに目をやっていいものか、まさかジッと見るわけにもいかないし、困ったり喜んだりしたものだった。

「どうしたの? まいごのお兄ちゃん」

 いつの間にか彼女たちを凝視していたらしいボクを、ショートカットの「ミャオ」ちゃんが、見上げるようにのぞき込んでいた。

 ちゃんと自己紹介してもらったわけじゃないけど、彼女たちの会話からすると、ショートカットの子が「ミャオ」ちゃん。長髪の子が「アヤ」ちゃんというらしい。

 ボクは慌てて「な、なんでもないよ」と答えたけど、声がどもっていたのは自分でもわかった。

「ふ〜ん……まぁ、いいけどね」

 ミャオちゃんは納得したのかしないのか、なぜかニヤニヤと笑った。

「じゃ、あたし帰る。また明日ね、アヤ」

「はい。ではごきげんよう、ミャオちゃん」

 ミャオちゃんは、きた道を戻って……と思うと、十メーターほどで振り返り、「まいごのお兄ちゃんも、バイバイ」と手を振って、今度は振り返らずに早足で消えていった。

 そしてボクは、ボクと同じ駅に向かうというアヤちゃんと電車に乗り、隣駅まで一緒に帰った。

 どうやらアヤちゃんは、ミャオちゃんの家に遊びに行っていて、ボクと会ったのはその帰りということだった。ミャオちゃんは、アヤちゃん一人だとちゃんと駅につけるのか不安だったので、ついてきたらしい。

 アヤちゃんは、「恥ずかしいですがわたくし、すぐ道に迷ってしまいますの。ミャオちゃんには、いつもお世話になってますのよ」と説明してくれた。

「ボクと一緒だね」

 冗談のつもりだったが、

「本当。ごいっしょですわね」

 アヤちゃんは真面目な顔で返してきた。

「それで、アパートにはお帰りになられないのですか?」

 電車を降りるとアヤちゃんが訊いてきた。ボクは「はぁ?」と思った。

「どうして? 帰るよ」

「でも、だったらなぜ電車に乗られたのですか?」

 そういえばボクは、一駅分歩いて二人に会ったことを説明していなかった。それにしても、なぜ今頃訊くんだろう。電車に乗った時点で、おかしいと思わなかったのだろうか?

 ボクが、一駅分歩いたという(マイゴともいう)恥ずかしいことを説明すると、

「まぁ……それは、ご苦労さまでございます」

 と、深々と頭を下げた。なにが「ご苦労さま」なのだろうか? それになぜ、頭を下げたのだろう。

「えっと……家まで送るよ。暗くなってきたし」

「はい。ありがとうございます。ですがわたくしを送ってくださった後、また、まいごになられたりいたしませんか?」

 ……相当信頼がないらしい。まぁ、仕方ないけど。

 訊いてみるとアヤちゃんの家の方向は、取りあえずボクと同じだったので、途中までということで一緒に帰ることになった。

「ここですわ。わたくしのお家」

 アパートまでの道のりを半分ほどきただろうか。ふと、アヤちゃんがいった。

 アヤちゃんの家は、駅からアパートへの途中にあった。彼女の家は、いかにも金持ちが住んでいそうな立派な門がある、三階建ての「お屋敷」だった。

「えっ? ここなの?」

「はい。それがなにか?」

 なにかって……。「この子。お嬢さまなんだ?」と思っていると、

「お帰りなさいませ、綾奈お嬢さま」

 いつの間にかボクの後ろに、五十代半ばだと思われる黒服の男がいた。「セバスチャンだッ!」と思ったが、「はい、ただいま帰りました。朝倉さん」とアヤちゃん。

 男は「セバスチャン」ではなく、「アサクラ」というらしかった。少し残念に思った。とボクを、「セバスチャン改めアサクラさん」が胡散臭げに眺めていた。

「このかたに送っていただきましたの」

 アサクラさんの視線に気づいたのか、アヤちゃんがフォローしてくれた。でも送ったといっても、駅からここまで五分ほどだ。

「わたくしとミャオちゃんのお友達です。あやしいかたではありませんわ」

 それでもアサクラさんは表情を崩さない。当たり前だ。ボクみたいな「大きなお友達」を、胡散臭く感じないわけがない。

「それはそれは、綾奈お嬢さまがお世話になられましたようですね。よろしければ、お名前、住所、電話番号などを……」

 うっわッ! メチャメチャ怪しまれてるッ。

「朝倉さんッ。わたくしのお友達に、失礼なことをきかないでくださいッ」

 強い口調でアヤちゃん。アサクラさんの顔色が、サッと青ざめた。

「も、申し訳ございません、綾奈お嬢さまッ」

「わたくしに謝られても、しかたありませんわ」

「はっ、仰る通りでございます。さすがはお嬢さま」

 なぜか誇らしげなアサクラさん。

「では……怪しげ、い、いえ、あの、お名前は?」

「崎谷です」

「サキヤさま……で、ございますね。申し訳ございませんでした。その、あまりにも胡散くさ……いえ、初めてお目にかかるかたでしたので、失礼なことを申してしまいました……」

 わざとか? 怪しげとか、胡散臭げとかいいかけたのは。

「構いませんよ。気にしないでください」

「はい。ではそうさせていただきます」

 あっさりとアサクラさん。ボクはもう、なにもいうきにならなった。この人は「こういう人」なんだと思った。

「じゃ、じゃあね。アヤちゃん」

 キッと、アサクラさんの痛い視線が刺さった。多分、「アヤちゃん」といったのが気に入らなかったのだろう。が、ボクは無視した。

「はい。お送りいただきまして、ありがとうございました。ではごきげんよう、サキヤお兄さま」

 アヤちゃんは、アサクラさんに守られるようにして門の中に消えていった。

「崎谷お兄さま」

 そんなふうに呼ばれたのは初めだ。なんだか妙にドキドキした。

 なんとか、再びマイゴになることなく念願のアパートにたどり着いても、そのドキドキはしばらく収まらなかった。

 

     2

 

 それから三日後。ボクは彼女たちと再会した。

 それはボクが、就職先のデザイン事務所(主に、カタログや広告のデザインをする事務所だ。バイト先の人に紹介してもらい、就職した)に挨拶に行った帰りだった。

「あっ、まいごのお兄ちゃんだっ!」

 駅前の商店街をアパートに向かって歩いていると、すれ違いそうになった二人組の女の子の一人が、ボクに指をさしていった。

「あぁ、確か、アヤちゃんとミャオちゃん……だったね。こんにちは、この前はありがとうね」

「むっ、どうしてあたしが声かけたのに、アヤのほうが先なのッ?」

 どうしてといわれても、そんなのに意味なんてない。ただ、なんとなくだ。

「まぁ……奇遇ですわね、サキヤお兄さま」

「えっ? なに? このまいごのお兄ちゃん、サキヤって名前なの?」

 そういえば、ミャオちゃんには名乗っていなかった。正確には、アヤちゃんにも名乗っていないが。ボクが名乗ったのはアサクラさんにだけだ。

「あら? ミャオちゃん、ご存じなかったのですか?」

 そりゃ知らないだろう。アヤちゃんかアサクラさんが、ミャオちゃんに教えてなければだけど……。

「崎谷良(さきや りょう)だよ。ボクの名前」

「ふ〜ん。あたしは早瀬美緒(はやせ みお)だよ」

 ミオ……それで「ミャオちゃん」なのか。

「わたくしは、海王丸綾奈(かいおうまる あやな)と申します。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」

 丁寧に頭を下げるアヤちゃん。

「で、お兄ちゃんなにしてんの? 仕事はサボリ?」

 今日はスーツを着ているからか、学生とは思わなかったようだ。まぁ、実際社会人だし、間違ってはいないけど。

「今日の仕事は、もう終わったよ。それよりキミたちこそ、学校はどうしたの? まだお昼過ぎだけど」

「なにいってんの? 春休みに決まってんじゃない」

 そうか、まだ春休みか。そういわれればそうだった。ボクだって本格的に仕事が始まるのは、二日後からだ。

「それよりお兄ちゃん、仕事終わったんならヒマなんでしょ? どっか遊びにつれてってよ」

「はぁ? なんで?」

「遊びにいきたいから」

「じゃあ、二人でいけばいいじゃない」

「ミャオちゃんは、お兄さまとごいっしょしたいのですわ」

「ち、違うわよッ!」

 慌てて否定するミャオちゃん。

「あら、どうしてですか? 顔に書いてありますけれど……?」

「書いてないわよぉッ」

 二人が同じような会話を繰り返す。放っておけば、いつ終わるのかわからなかったので、

「わかったよ。遊びにいこう」

「えっ、ホント? お兄ちゃんっ」

「でも一度家に帰って、着替えてからね」

 二人は嬉しそうな顔をした。ホントに嬉しそうな笑顔。ボクも嬉しくなった。

「だったら、お兄ちゃんちで遊ぼうよ」

 ミャオちゃんがいう。

「まぁ、それはよい考えですわね」

 と、アヤちゃんも同意した。

「ちょ、ちょっとまってよ。ボクの家で遊ぶって、別に面白い物なんてなにもないよ」

 ボクは引っ越してきたばかりで、部屋には家財道具しかない。二人が面白がる物なんか、なにも持っていない。

 が二人は、どうやらボクの家で遊ぶことに決めたらしく、「楽しみだね」、「楽しみですわね」などといっている。

 結局ボクは、二人と一緒に家へ向かった。

 

「わっ、ホントなにもないや」

 部屋に入るなり、ミャオちゃんは遠慮なく感想を述べた。

「わたくし、男の方の部屋に入るのは初めてですの。緊張しますわ」

 意味深なことをいうアヤちゃん。そんなこといわれたら、ボクのほうが緊張する。別に二人になにかしようなんて考えてなかったけど、ボクはドギマギしてしまった。

 二人に見られて困るような物は……ない。エロい本とかビデオは越してきてから買ってないし、ここに持ってきてもない。

「……っと」

 ぽふっとベッドに飛び乗って、当然のように横になるミャオちゃん。なんでそこまで無防備なんだ? ボクが悪いヤツだったら、どうするつもりなんだろう。

 アヤちゃんは、なぜか「はぁ」とか「ふぅ」とか溜息を漏らしながら室内を眺めている。お金持ちのお嬢さまだから、ワンルームアパートが珍しいのだろうか?

 ボクが住んでいるアパートの部屋は細長い形をしていて、床はフローリングだ。広さは八畳で、ユニットバスと狭いキッチン、押入がついている。

 室内には、ミャオちゃんが寝転んでいるベッド。パソコンを置いてある机、とセットの椅子。テレビ。ビデオ。ミニコンポ。雑誌が数冊立ててあるだけの本棚。そして、部屋の中心辺りに置いてあるガラステーブル。あとは小物がいくつかあるだけで、散らかっても汚れてもいない。

「ほら。面白い物なんて、なにもないだろ?」

 ボクがいうと、

「パソコンあるじゃん」

 ミャオちゃんがベッドに寝転んだままいった。

「珍しい物じゃないだろ? パソコンなんて」

「あたしもってないよ。アヤはもってるよね? パソコン」

「えぇ。もってますわ。ほとんど、使ってはいませんけど。お兄さまは、なにに使っておられるのですか?」

 やばい方向へ話題が流れ始めた。ボクだって、インターネットでロリ系のエロサイトを観るのに使っているだけで、これといった使用はしていない。本格的に仕事が始まれば使うようになるのだろうが、今はその程度にしか使っていなかった。

「お兄ちゃん。パソコンでエッチなのみてるんでしょ?」

 どうして女の子ってのは、こんなに勘がいいんだ?

「そ、そんなことないよっ」

「あわててる、あっやしいぃ。ねっ? アヤ。あやしいよね」

「はい。あやしいですわ」

 二人が顔を見合わせて肯き合う。

「やっばいね。あたしたちに、エッチなことするかもよ」

「まぁ、こわいですわ。わたくしたち、エッチなことされてしまいますか?」

 アヤちゃんが頬笑んでボクを見る。ミャオちゃんも、ニヤニヤとしてボクを見ていた。

「し、しないよッ」

「ホントかなぁ?」

「本当でしょうか?」

「ホント、ホントだってッ」

 いくらなんだって知り合ったばかりの、それも小学生(これで、中学ってことはないだろう)に、「エッチなこと」なんてする(できる)わけがない。

「……そっか、ざんねん」

 細い脚をぱたぱたさせてミャオちゃん

「ざんねんですわ……」

 頬に手をそえるアヤちゃん。

 残念? どういうことだ?

 ま、まさかッ! もしかして二人は、「期待」してここにきたのか?

 そ、そんなはずないじゃないかッ。この子たち、まだ小学生(だと思う)だぞ。ボクをからかっているだけだ。そう……そうに決まってるッ。

 でも、もし……。

 あぁあああぁぁ〜っ! な、なに考えてるんだッ。

 ダメだ。ダメダメだッ! なんでボクは、こう都合いいこと考えちゃうんだッ?

「ねぇアヤ。服……脱いじゃおっか?」

 へっ?

「そうですわね。お兄さまがウソつきではないか、確かめないといけませんわね」

 な、なにいってんだ?

 ボクが混乱しているとミャオちゃんはベッドに立って、茶色と白のチェック柄のキャロットスカートを無造作に下ろした。薄い水色のショーツに、ボクの目は釘付けになった。

「なに見てるのかな? お兄ちゃん」

 ミャオちゃんはニヤけた顔でボクを見、パーカーのついた裾の長いシャツをペロンと脱いで、それをベッドの上に落とす。

 ショーツと靴下だけになったミャオちゃんは、まったく膨らみのない胸を隠すことなく、ベッドから降りてボクの目の前に移動してきた。

 固まっているボクをいたずらっぽい表情で見上げ、

「これでも、エッチなことしない?」

「なさらない……ですか?」

 その声に振り向くと、いつの間にかアヤちゃんも白のワンピースを脱いで、下着姿になっていた。

 アヤちゃんはミャオちゃんと違い、ブラをつけていた。着やせするタイプなのか、アヤちゃんの胸は、服を着ていたときよりも大きく感じた。大きいといっても、ボクの手の平に余るくらいだったが。

「あたし、かわいくない?」

 ミャオちゃんがボクの右腕にしがみついく。

「わたくし、かわいくありませんか?」

 左腕にアヤちゃんの、ぷにゅっとしたやわらかさを感じた。

 夢か? これ。

 現実にしては、あまりに都合がよすぎる。

 だけど腕にかかる重さ、やわらかさは、どう感じても現実のものだった。

「お兄ちゃん?」

「お兄さま?」

 甘い声。頭がクラクラした。もう、なにがなんだかわからない。

「……ホントにしないのかな?」

「そうですわね。なさらないのかもしれませんわ」

「あたしたち、みりょくないのかなぁ?」

「ミャオちゃんは、とてもかわいいですわ」

「アヤもかわいいよ」

 ボク腕を掴んだまま、二人はキスを交わした。ロリな美少女同士のキスシーン。それも下着しか身に纏っておらず、ボクの腕にしがみついたままで……。

 やっぱ夢だ……これ。

 こんなことあるはずない。現実離れし過ぎている。

「わっ。お兄ちゃんのチンチン、おっきくなってるぅ」

「まぁ、本当ですわ」

「ズボン脱がしちゃおっか?」

「そうですわね。そういたしましょう」

 夢なので、そういうこともあるだろう。ボクはされるがままにした。されるがままにしていると、ズボンだけでなくトランクスもずり下ろされた。

「……すっごい。モジャモジャだぁ」

「それに……カチカチですわ」

「あたし、初めてみちゃった。これって、ぼっきっていうんだよね」

「お兄さまは、本当はこうふんしておられるのですわ」

「エッチしたいんだね」

「エッチしたいのですわ」

 そりゃ、したいに決まってる。したくないと思うヤツのほうが変だ。

「あ、あたし……なんだか……」

「わたくしも、へんな……エッチな気分ですわ」

「さわってもいいかな……?」

「いいと、思いますわ」

「さわっちゃお」

「わたくしも」

 ミャオちゃんが先端を、アヤちゃんが棒の部分をぎゅっと握った。

「……あったかいね。アヤ」

「えぇ、熱いくらいですわ」

「それに……」

「かたいですわ」

「ね、ねぇ……せ、せいし、出ないね」

「も、もう少しこうふんしないと、その……で、出ないのではないですか? 授業でも、確かそのようなことを……」

「どうしたら、せいし出るかな?」

「男のかたは、なめられるとこうふんするらしいのですわ」

「……な、なめるの? おちんちんを?」

「だと……思いますけれど……?」

「じゃ、なめちゃお」

 くちゅ

 ミャオちゃんはボクの先端にキスするように口をつけると、尿道のワレメを舌で刺激した。

「ど、どうですか? ミャオちゃん。せいし出ましたか?」

「……う、ううん。出ない」

「もっと、いっぱいなめなければ出ないのかもしれませんわ」

「うん。やってみる」

 今度は大きく口を広げ、先端をぱくっと口に入れた。

 吸い付く唇。上方で軽く当たる歯。チロチロと裏側を這う舌。それにしても口の中がこんなに温かいなんて……まぁ、夢だけど。

 ミャオちゃんのおしゃぶりは、同じ場所で舌を動かすだけで肉体的な快感は薄いけど、それでもこんなにかわいいロリっ娘がボクのを舐めていると思うと、それだけでイッてしまいそうだ。

 夢だから、このままイッてもいいのかも……。

「ぷはぁっ」

 苦しくなったのか、ふいにミャオちゃんが口を離す。すると今度は、アヤちゃんがボクのモノにしゃぶりついてきた。

 アヤちゃんはミャオちゃんとは違い、口の中に入れるのではなく、全体に舌を這わせるしゃぶりかただ。

 その動きは稚拙で、舌よりも、モノを固定する手のほうが気持ちよかった。

 アヤちゃんは先端をぎゅっと握ったり、根本をつまむように持ったりしながら、舐めるというよりは突き出した舌を顔と一緒に動かす。長い髪がボクの太股をなで、それもなんともいえず気持ちいい。

「アヤぁ……あ、あたしもぉ」

「……は、はい」

 アヤちゃんが身体を少し横にそらすと、ミャオちゃんが割り込んでくる。二人は、仲よくボクのモノを舐めた。

 先端を重点的に攻めるミャオちゃん。棒を、そして袋までも舐めるアヤちゃん。二人は無言で舐め、しゃぶる。いくら二人のおしゃぶりが稚拙でも、ボクは我慢の限界を迎えていた。

 そしてボクは、

 どぴゅっ!

 第一射が、ミャオちゃんの顔……というよりは、おでこと前髪に命中。

 ぴゅっ、ぴゅるっ!

 次いで第二射、第三射。

 驚くほど大量の精液が、ミャオちゃんの顔を白く汚した。

「……」

 目を見開いたまま、無言で固まる二人。ミャオちゃんの頬から顎にかけてどろりと液が伝い、膨らみのない胸元に垂れた。

 ボクは「はぁはぁ」と息を吐く。なんだか、身体が一気に軽くなった気がした。

 そして、射精して冷静になったのか、ボクはこれが夢ではなかったことを理解した。

 現実にボクの目の前には下着姿のロリ美少女が二人もいて、今ボクは二人のおしゃぶりではてたのだ……と。

 

     3

 

「あ……あの」

 間の抜けた声。自分でもそう思った。

 声を発したボクに、驚いたままの顔の二人が視線を向ける。

「こ、これが、せいし……ですか?」

 問うアヤちゃん。

「正確には、精液だけど……」

 ボクは答えた。

「せ、せーえき?」

 反芻したのはミャオちゃん。彼女の顔と前髪は、精液でベトベトに濡れている。

 頬にこびり付く精液を指ですくい、ミャオちゃんはそれを鼻に近づけた。

「な、なんか、へんなにおい……だね」

 ボクはハッとなって、ミャオちゃんの顔を拭こうと、ベッドの脇に置いてあるテッシュの箱を取りに……行こうとしてこけた。

 ボクの足下は、ズボンとトランクスで束縛されていた。それを忘れていたからだった。

「だ、だいじょうぶですかっ?」

 こけたボクに慌てるアヤちゃん。

「だ、大丈夫……」

 ボクは答えて立ち上がり、トランクスとズボンを上げるとベルトを締め、それからテッシュを取ってミャオちゃんの顔を拭いた。ミャオちゃんはおとなしく、されるがままになっている。

「ご、ごめんね」

 ボクが謝ると、ミャオちゃんは「ううん」といった。

 テッシュでだいたい拭ったが、やはりそれだけでは不十分で、それにミャオちゃんの頬やおでこにはテッシュのかすがこびり付いている。

「ちょっと待っててっ」

 ボクは急いでタオルを濡らし、それでミャオちゃんの顔を拭った。

「ごめん。ホント、ごめんね……」

「どうしてあやまるの? あたしたちがいたずらしたのに……」

「そうですわ。悪いのは、わたくしたちのほうですわ」

 違う。そうじゃない。

 ボクには二人を止めることはできた。でもボクは、これは夢だとかバカげたことを思っていて、止められなかった。

 ボクは大人なのに……。

 だから、悪いのはボクだ。

 二人は多分、好奇心から「こんなこと」をしたのだろう。だけどボクは、そんな二人の好奇心からの「いたずら」に快楽を感じていた。そして、ミャオちゃんの顔に射精してしまった。

 こんなかわいい女の子の顔を、ボクの精液で汚してしまった。

 罪悪感。

 それしか感じなかった。

 

 それから二人はのそのそと服を着て、

「ごめんなさいっ」

「もうしわけございませんでした」

 と、頭を下げた。

 ボクも、「ごめん」といって頭を下げた。

 最初にふきだしたのはミャオちゃんだった。それからボクたちは、なにが可笑しいのか三人で声を出して笑った。

 その後二人の説明……というか申し開きというかによると、二人は、女の子だけの授業で習った「精子」というものを見てみたかったのだそうだ。

 それで「あんなこと」をしたらしい。

「女の子が「あんなこと」をするなんて、ボクが悪いヤツだったらどうするつもりだったの?」

 と問うと、

「お兄さまはお優しそうでしたので、だいじょうぶだと思いましたの」

 ボクは気がつかなかったけど、二人はここに来る途中で、「ボクの精子を見よう」と相談していたらしい。

「ごめんね、お兄ちゃん。怒った……?」

 部屋の中央に置かれたガラステーブルを囲み座る三人。ボクの右側にアヤちゃん、左側にミャオちゃんという位置関係だ。

 ボクは、ミャオちゃんの言葉に首を横に振る。怒るというよりは、呆れた。そして二人が「あんなこと」をしたのが、ボクでよかったと思った。

 もしヤバイヤツに「あんなこと」をしていたら、二人は無事では済まなかっただろう。なにをされていたかわかったものじゃない。

「でも、もう「あんなこと」しちゃダメだよ。男っていうのは、キミたちが考えているよりも、ずっと危ないんだからね」

「お兄ちゃんも?」

「ボクも……だよ」

「でもお兄さまは、わたくしたちにエッチなことなされませんでしたわ」

「そうだよ。お兄ちゃんは、ウソつかなかったじゃない。最初にいったように、エッチなことしなかったじゃない」

 どうやら二人は、「あれ」がエッチなことではないと思っているらしい。

「だから違うんだよ。「あれ」は、とってもエッチなことなの」

「そんなの知ってるよ」

「知ってますわ」

「あたしたちがいってるのは、お兄ちゃんがしなかったってこと」

「いたずらをしたのは、エッチなことをしたのは、わたくしたちです。お兄さまは、わたくしたちにエッチなことをされたのですわ。ですからお兄さまが、わたくしたちにエッチなことをなされたのではないのですわ」

 そういうことか。でも、それは違う。

「そうかもしれないけど、ボクは大人なんだよ。だから悪いのはボク。わかる?」

「……わかんない」

「わかりませんわ」

「ボクは大人だから、子供のキミたちがあんないたずらをするのを、止めなければならなかったんだ。だけどボクは止めなかった。だから、ボクに責任があるんだよ」

「どうして?」

「ど、どうしてって……それは、キミたちがまだ子供だからだよ」

「子供は、エッチなことしてはいけませんか?」

「だれが決めたの?」

「誰がって……そんなの決まってるじゃないか。」

「わたくしとミャオちゃんは、もうエッチなことしているのですわ」

「……へっ?」

「そうだよ。してるしてる。キスしたり、さわりっこしたりしてるよ」

 そういえばこの二人、「あれ」の途中でキスしてたっけ……。

「わたくしとミャオちゃんは、エッチ友達なのですわ」

「エッチ友達……?」

「はい、そうですわ。エッチなことをするお友達ですわ」

 また、なんだか意味不明なことをいい出したぞ。

 だけど二人の話を聞いてみると、「エッチ友達」とは、キスしたり、身体を触り合ったりするだけの、かわいいお遊び的なものらしい。彼女たちが通う学校では、女の子同士の「エッチ友達」というのは珍しくないのだそうだ。

 ただ「エッチ友達」というのは「カップル」に限定されていて、「エッチ友達」以外の子とエッチなお遊びをするのは、「裏切り行為」になるらしい。

 女の子って、よくわからない。

「ボクにするのはいいの?」

 問うと、

「お兄さまは、女の子ではありませんわ」

「それにあれは、あたしとアヤの二人でしたことだから」

 なんだか、これもよくわからない。女の子は不思議でいっぱいだ。それに好奇心も強い。まぁ、この二人が特別なのかもしれないけど。

「だけど、どうしてボクを選んだの?」

「いいましたわ。お兄さまがお優しそうでしたからですわ」

「……それはどうも」

 喜んでいいんだか……。

「でもわたくしたちですって、だれでもよかったわけではないのですわ。お兄さまだから、エッチなことして、せいしを見せていただきたかったのですわ」

「ボクだから?」

「はい。お兄さまはニブチンさんですわね。まだおわかりになりませんの? ミャオちゃんがかわいそうですわ」

「ちょっ、ちょっとアヤっ! な、なにいってるのよっ」

 ミャオちゃんが、慌ててアヤちゃんのほうに身を乗り出す。

「ミャオちゃんは、お兄さまに一目惚れしてしまったのですわ。わたくしは、すぐにわかりましたわ」

 ボクがミャオちゃんを見ると、ミャオちゃんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 マ……マジ?

 こんなかわいい子が、ボクなんかに?

「そ、その……ホント? ミャオちゃん」

 うつむいたまま固まっているミャオちゃん。

「素直になったほうがよろしいですわよ。ミャオちゃん」

「……う、うん」

 ミャオちゃんがコクンと肯く。

 そして、

「あ、あたし、お兄ちゃん……好き」

 今度はボクが固まる番だった。女の子に好きだなんていわれたのは初めてだったし、それもミャオちゃんのようなかわいい子からいわれたのだから、固まってもしかたないだろう。

「ほらお兄さま。ミャオちゃんに答えてあげてください」

 ボクはしどろもどろになりながら、

「あ、そ、その……ミャオちゃん?」

「美緒……ですわ」

 すかざずいうアヤちゃん。

「う、うん。ミ、ミオちゃん?」

「は、はい……」

 なんだかすごく素直……というか、しおらしく答えるミオちゃん。ボクはもう、身体が砕けてしまいそうなくらい緊張して、

「その……う、嬉しいよ。ありがとう。ボ、ボクも……その……す、好き……だよ」

 こんなに緊張したのは、産まれて初めてかもしれない。

 でも、その「告白」にウソはなかった。ミオちゃんのようなかわいい子を嫌いだなんて、とてもじゃないけど思えない。

 ボクのことを、「好き」だといってくれたミオちゃん。

 もしボクに恋人がいたなら困っただろうけど、幸運(?)にも今のボクに恋人はいない。

「よかったですわね、ミャオちゃん。お兄さまも、ミャオちゃんのことがお好きですって。両思いですわ」

 両思いって……まぁ、そうなるのか?

「お兄さま。なにをじっとしておられるのですか?」

「えっ?」

「本当にニブチンさんですわ。これからミャオちゃんも、くろうなさいますわね」

 アヤちゃんが、ボクの肩をミオちゃんのほうに押した。どうやら、抱きしめるとかなんとかしろ……と、いうことらしい。

 ボクは「いわれる」ままに、顔をうつむけて恥ずかしがって(なぜだか、はっきりとそうわかった)いるミオちゃんを、ギュッと、でも力の加減をして抱きしめた。

「あっ」

 小さく声を発し、その一瞬後、ミオちゃんがボクの胸に顔を押しつける。

「……うれしい」

 胸元から呟きが聞こえた。

「ボクも、嬉しいよ」

 無意識に応えていた。

 そしてボクは、ボクたちは、触れるだけのキスを交わした。

 アヤちゃんが見てるだろうけど、気にはならなかった。

 

     4

 

 節度のある「おつき合い」というのは、とても大変なことだ。恋人が小学五年生のお子さま(って、美緒にはいえないけど)なら、それはなおさらだった。

 ボクと美緒が恋人同士になったあの日から、約一ヶ月が経過した。

 お互いが休みの日にはデートを繰り返し、逢えない日は、美緒が「美由お姉ちゃん」に注意されるまで長電話をして、ボクは美緒のことを、美緒はボクのことを知っていった。

 美緒が、十歳の小学五年生だということ。誕生日は、夏休み最後の八月三十一日だということ。意外だったけど、料理が得意なこと。三人姉妹の末っ子で、十歳離れた双子の姉たち(上が美瑠(みる)で下が美由(みゆ))がいること。母親が五年前に他界していること。父親が某理系大学の教授(物理学を教えているらしい)であることなど……。

 それ以外にもボクは、美緒のことをたくさん知った。

 逢う度、話す度、知る度に、ボクの美緒への「想い」は強くなっていった。

 とはいえボクたちは、キス以上進んでいない。何度も、数えきれないくらいキスは交わしたけど、それ以上はホントにしていない。もちろんしたくないわけじゃないけど、できない。

 ボクが躊躇してしまうからだ。

 美緒が「先」に進みたがっているのはわかってるけど、どうしてもできない。

「良(美緒もボクのことは呼び捨てだ)なら、あたし後悔なんかしないよ。良になら、あたしの全部あげてもいい。ううん、もらってほしい」

 理性が吹き飛んでしまうような言葉。三回目のデートの後で告げられた。

「今はできない。美緒が大人になったら、ボクからお願いする」

 そう答えると美緒はうつむいて、

「あたしが子供だから? あたしが子供だから、良はキスしかしてくれないの?」

 ボクは正直に答えた。

「そうだよ」

 ウソは吐きたくなかった。

「だから大人になったら……」

「大人っていつッ? どうしたら大人になれるのッ? どうしたら良は、あたしを……あたしをもらってくれるの?」

 答えられなかった。答えがわからなかったから。

 大人の定義。わからない。ボク個人の意見として、義務教育が終了すれば「大人」だと思う。

 でもそれはボクだけの考えであって、実際には「十八歳」だとか「二十歳」だとかいうのが一般的で、それに例え成人しても、「子供」はたくさんいる。

 そういう「精神的」な意味では、「大人」の定義なんて難しくてボクなんかにはできない。

「ボクは、美緒が好きだよ。ホントに、どうしようもないくらい好きだよ」

「……うん。あたしも、良が好き」

「だったら、わかってくれるよね?」

「わかってるつもりだよ。でも、良はそれでいいの? あたしたち恋人だよね? 恋人だったら、したいって思うよね? だってあたし、良としたいもん。キスだけじゃなくて、ちゃんと……したいもん」

 震える細い肩。零れる涙。ボクはただ、美緒を抱きしめることしかできなかった。

 それ以降美緒は、「したい」とは言葉にしていない。でもふとした隙間、それはデートの途中だったり、美緒が作ってくれた料理を一緒に食べてる途中だったりに、美緒はなんともいえない「寂しそう」な顔をする。

 ボクは気づかないふりをして、意識して明るく振る舞う。多分美緒は、そんなボクの「わざとらしさ」を見抜いているのだろうけど、その度にボクに微笑みをくれる。これじゃ、どっが「大人」でどっちが「子供」かわかならない。

 多分美緒は、ボクが考えてるよりずっと「大人」だ。

 そしてボクは、ボクが考えてるよりずっと「子供」だ。

 ただ、美緒より年齢を重ねているというだけ。二十歳を越え、「成人」しているというだけ。

 だからボクは、もっと「しっかり」しなくてはならない。

 美緒の恋人として恥ずかしくない人間に、男にならなければならない。ボクはそう思っているし、努力もしているつもりだ。

 だけどアヤちゃんにいわせると、

「お兄さまはまじめすぎますわ。まじめなのはいいことですけれど、度をすぎれば臆病者なだけですわよ」

 と、いうことらしい。

 そういわれてもボクは、自分の信念(って、そんな立派なものじゃないけど)を曲げることなんてできない。

 していいこと。してはいけないこと。その判断は、自分でしなければならない。

 ボクはとっくに義務教育が終わっているのだから、その義務、責任は負っている。

 そして美緒の「想い」への判断を下すと、ボクは「まだしてはいけない」という答えを出す。

 何度考えても、その「答え」は変わらない。

 ボクは、美緒が「大切」だ。多分美緒は、ボクが「自分よりも大切」だと思う、唯一の存在だろう。

 だから真剣に考える。

 ボクたちの「今」を。

 ボクたちの「これから」を。

 ボクは、できるだけ「間違う」ことはできない。もちろんボクは「たいした」人間じゃないから、いっぱい「間違える」し、失敗もする。

 だけど美緒に関することでは、「間違う」ことはできない。

 美緒が「好き」だから。「大切」だから。

 ずっと、一緒にいたいと思うから。

 ボクたちの「時」は、まだ始まったばかりだ。

 これからどうなっていくかなんて、わからない。ボクは予知能力者じゃない。

 ボクにできるのは、「ボクと美緒」にっとて「よりよい方法」を模索し、判断して行動することだけだ。

 それで「ダメ」になるなら、それはそれで「仕方のない」ことなんだろう。

 だけど「仕方ない」なんて諦められるわけないし、そんなことで忘れられる程度の「想い」なら、初めから美緒のことを「好き」になってはいない。

 ボクは美緒のことがホントに「好き」だから、「大切」だから、だから「適当」になんか考えられない。

 こんな「想い」は初めてだ。

 こんなに「誰か」のことを真剣に「考える」なんて、初めてだ。

 苦しい。辛い。

 でも、充実している。満たされている。

 生まれてきてよかった。

 そして、美緒に逢えてよかった。

 ボクはホントに、そう思っている。

 心からいえる。

「大好きだよ。美緒」

 ……と。


End


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