『希望』
皆本政幸はベッドに腰掛け、赤い首輪をつけただけの姿で跪き自分のペニスを喰わえる、一月ほど前に義妹となったあゆりの形のよい頭を見下ろしていた。
八歳の誕生日を迎えたばかりの義妹のこの姿は、政幸にはもう見なれたものになっている。
法律上は義妹とはいえ、政幸にとってあゆりは父親が買い与えてくれた玩具であり、自分を楽しませるためだけに存在している小さな肉人形だ。
当然なにをしてもいいし、最悪「壊れて動かなく」なってもさほど問題はない。
「うぅん…くぅ」
先端に口をつけチロチロと舌を這わせるだけの奉仕。
すでに大抵の行為は経験している(させている)が、あゆりの奉仕は上手くならない。政幸は艶やかな黒髪に被われたあゆりの頭を鷲掴みにし、自らのモノを捻り込んだ。
「うッ! ふぅぐうぅ」
小さな口を目一杯に広げても、あゆりの口内は政幸の膨張した先端部分だけで満たされてしまう。
「ふぐうぅ。うぐ、うくん……」
口が塞がれているので、あゆりはヒクヒクと鼻で空気を肺に送り込む。だが思うように息ができず、息苦しさと顎の痛みで彼女の頭の中は白い靄で染まっていく。少しでも気を抜けば、意識が奪われてしまいそうだ。
「おらッ。ちゃんと舌動かさないか。お仕置きすんぞッ!」
お仕置き。
その言葉にあゆりはぞっとして、堅い肉に満たされた口内で小さな舌を必至に動かした。確かに「これ」も辛いが、お仕置きの方がもっと辛くて怖い。
昨日、二穴を同時にバイブで責められている最中にお漏らしをしてしまい、まったく膨らみのない胸を飾る桜色の乳首と、閉じたワレメに隠された敏感な突起に何本も針を突き刺されたばかりだ。あの痛みと恐怖は、簡単に忘れることはできない。
あゆりは「ふぐふぐ」と声を漏らしながら、口元を涎で濡らして奉仕を続けた。
あゆりは、自分が母親に「売られて」しまったことを理解していない。
なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか?
「お母さんは、あたしを置いてどこに行ってしまったの? 助けてお母さん……」
心の中で母に助けを求めても、それが母に届くことはないし、届いたとしても助けてはくれないだろう。
母は「お荷物」のあゆりを売りはらい、その代わりにえた自由と一千万円という金銭を、あゆりに与えられる苦痛などという「取るに足らない」ことと引き替えにはできない。
クラスメイトとの「お遊び」で出来てしまったあゆり。「処分」しようとしても、ぐずぐずしている間に後戻りできなくなっていて、産むしかなかった。
15歳の我がままな少女にとって、母になるということは幸福ではなく苦痛でしかなかった。娘は彼女の自由を奪った忌々しい存在でしかなく、物好きが買ってくれたことは救いだった。
これで自由になれる。もう一度自分の人生が歩める。
私は自由だ。
あゆりがどうなろうと、「知ったこと」じゃない。もう自分には関係ない。
この一ヶ月間。母と娘が過ごした時間は、行為、行動としては似通っている。ただ、母は快楽を、娘は苦痛をそれによって感じていたが。
「ふぐうぅん、うぐっ」
苦痛を感じている方の口内に、政幸の欲望を含んだ白い半液体がぶちまけられる。
「うはぁ……げッ、げふげほっ」
口の中の半液体を零すとなにをされるのか分からないので、手の平で口元を押さえながらあゆりはそれを嚥下した。
咽に引っかかり、舌がざらざらして気持ち悪い。気を抜くと嘔吐してしまいそうになる。もう何度も飲んだが、いつになっても馴れることはない。
(……もうイヤだよぉ。お母さん。おかあさん。アカアサン……)
咽せているあゆりは休む間もなくベッドに引き上げられ、覆い被さる義兄の体重を下半身に感じさせられた。
あゆりの身長は120cmに満たない。その小さく、細く、薄い身体には、22歳の成人男性の体重は自分を押しつぶすかのように感じられる。
グリグリと幼いワレメを押し開いて、体内に進入してくる硬い肉の感触。痛くはない。最初の何日かは痛みを感じたが、もう馴れてしまった。
それでもイヤなことには変わりない。お腹の中をかき混ぜられ、内臓を傷つけるかのようにのたうつ肉の棒。
「ぐっ、うぅっ、はっはっ、ひぎゅうぅ」
(イヤッ。やめて、ゆるして。ごめんなさい、ごめんなさいぃッ)
ガクガクと身体が震える。頭の中が割れそうに痛む。
でも……。
「おらッ。いいか? 気持ちいいかッ?」
「ふぐっ……い、いいです。き、いぐうぅっ! い、いいです……はがあぁっ」
そう答えなければ、お仕置きされてしまう。
泣くのもダメだ。あまり泣くと、「そんなに泣きたいのなら」と、痛いことをされてしまう。身体中にいろんなモノを入れられてしまう。
手足を束縛され、二穴にバイブを挿入されたまま何時間も放っておかれるのは、もうイヤだった。お尻の穴を広げる「変なモノ」を付けられ、お尻の中におしっこをされるのも、タバスコを入れられるのも、もうイヤだった。
だから「気持ちいいか」と訊かれたら、「気持ちいいです」と答えなければならないし、辛くても泣いたりできない。
それが、あゆりが学んだ自らを守るための方法だ。
下半身の感覚が薄れていく。痺れているのではなく、なにも感じなくなっていく。
(はやく、はやくおわって……)
しかし「これ」が終わっても、今度は違う「イヤなこと」が待っている。政幸は、様々な「イヤなこと」をあゆりに与えてくる。
あゆりに抗う術はなく、ただ耐えるしかない。できるだけ「イヤなこと」を小さくするために、素直に、従順にしているしかない。
八歳になったばかりの、本来なら友達と頬笑み合って遊んでいるのが当然の少女(幼女?)の境遇としては、今のあゆりに与えられているものは最悪に限りなく近いものだろう。
死んだほうがまし……かもしれない。しかしあゆりは、これまで「死にたい」と思ったことはなかった。
「つらいのは、くるしいのはいまだけ。すぐに、おかあさんがむかえにきてくれる」
だから耐えなければならない。
死んでしまったら、もうお母さんには会えない。
それは絶対にあってはならないことだ。
(おかあさん。あいたいよぉ……おかあさん、おかあさんっ!)
あゆりで遊ぶのは楽しい。
なにをしても問題ないし、非力なあゆりは自分に危害を与える存在でもない。
怖くない。
政幸は無害で無抵抗な肉人形を、心底楽しんでいた。
政幸は一応、高校は卒業した。しかし大学にも行かず(学力的にも無理だったが)親の金で遊んで暮らす生活を続けている。
「家は金持ちだから当然だ。金があるのに、遊んで暮らせるのに働くのは、〈バカ〉のすることだ」
政幸にとってそれが現実で、〈バカ〉ではない自分は、人形をこねくり回して遊んでいればいい。
誰にとがめられることもないし、「お前はそうしていればいい」とパパもいっている。
あゆりの尿道にストローを刺し、ちょろちょろと零れ出る尿がグラスに溜まっていくのを眺めていると、政幸は落ち着いた気分になれる。
グラスに溜まった尿を、あゆりに「飲め」と命令する。当然あゆりは、こくこくと咽を鳴らして自分の尿を嚥下する。
「美味いか?」
「は、はい……おいしいです……」
「じゃあ、おれのも飲め」
「……はい……いただきます」
フローリングの床に座り込んでいるあゆりは、顔を上げて小さな口をめいっぱいに広げる。すでに何度も経験した動作だった。
政幸は勃起しても皮が余っているペニスをあゆりに向け、放尿を始める。
それは開いた口にというよりは、ぎゅっと目を閉じているあゆりの顔にびちゃびちゃと降り注ぎ、あゆりの身体を伝って床に溜まる。
放尿し終わった政幸は、
「なに零してんだよッ! 便器の変わりにもなんねぇーのかッ!」
とあゆりと蹴った。
「ご、ごめんなさい」
「申し訳ありません……だろッ?」
「あっ。は、はい。も、もうしわけありません……」
あゆりは床に手をつき、顔を近づけて汚水を舐め始める。
面白いように、政幸が心地よく感じる行動をとるあゆり。肉付きの薄いお尻を突き上げ、裸体に首輪だけという犬のような格好で汚水を舐めるあゆりの姿は、政幸の欲望を下半身に伝えるには十分だった。
政幸はあゆりの後方にまわり、これだけ陵辱しても新品のように閉じている陰部に隣接する排泄口に指をねじ込んだ。
あゆりは一度ピクンッと身体を跳ねさせたが、それでも無言で汚水を舐め続ける。
政幸はぐりぐりと親指を埋め込んで直腸の感触を楽しみ、ほどよくほぐれたところで自らのそそり起つモノを、本来は排泄物の出口としての役割を与えられているあゆりの穴にそえ、一気に突き刺した。
「フギイィッ」
あゆりは、さほど痛くはなかったが、思わず悲鳴を上げてしまった。
政幸はそんなことにはお構いなしに、あゆりのお尻に腰を打ち付ける。パンパンと肉がぶつかり合う音が響く。
あゆりは身体にかかる負担に耐えながら、汚水に顔を浸し、それでも床を濡らす汚水をぴちゃぴちゃと舐めて続けた。
あゆりの直腸に欲望を放出した政幸は、排泄物が付着したモノをあゆりに口で洗わせ、一休みするために「遊戯室」をあとにした。
あゆりが床の汚水を舐めるぴちゃぴちゃという音を後ろに、政幸がドアを閉める。内側からは開かないタイプの鍵がかかる音が、あゆりの耳に届いた。
「……ぅ……ぅう」
政幸が出ていった安心感があゆりを満たす。
あゆりは泣いた。
安心して泣くことができた。それでも、泣きながら床を舐めた。床をきれいにするまで、本当に安心できなかった。
「こんなこと、いつまでつづくの……?」
毎日繰り返される疑問。解けることがない。
「おかあさんが、むかえにきてくれるまで?」
それはない。が、あゆりは知らない。
だからあゆりは、希望を失っていない。
「あたし、いいこにするから……。わがままいわないから。おかあさん……はやく、はやくむかえにきて……」
途切れた希望にすがり続けたあゆり。
叶うことない望みへの希望によって、正気を保ち続けたあゆり。
「どう……して……? お、かあ……さん……」
これがあゆりの、「最後の言葉」だった……。
|