『錯綜』

 

 天気予報でいっていた。

 今夜は雪が降るんだって。

 寒いのはイヤだけど、雪は嫌いじゃない。なんとなく、楽しい気分になれるから。

 でも、そんなのウソ。ホントは、楽しいことなんてなんにもない。

 学校の帰り道。アーケードの商店街にはたくさんの人がいるけれど、誰もあたしを『見てる』人はいない。

 あたしは一人ぼっちだ。

 どこでだって。

 友達もいないし、家に帰っても居場所がない。お母さんは、新しい『お母さんの旦那さん』に夢中で、あたしのことをじゃまだって思ってる。

 はっきりそういわれたわけじゃないけど、なんとなくわかる。だから、家には帰りたくない。

 だけど、あたしにはそこしか帰る場所がない。しかたないから、こうしてゆっくりと歩きながら帰ってる。

 高校生のお兄さんとお姉さんが、仲良くお話しながらあたしを追い越していった。

 うらやましい。

 あたしにも恋人がいたなら、こんなに『寂しい』なんて思わないのかな? でもあたしはまだ10歳の子供だから、恋人なんていないし、あたしを恋人にしてくれる人もいない。

 背中のランドセルが、これまで以上に重く感じた。

 はやく大人になりたい。大人になって、一人でも大丈夫になりたい。「お母さんなんかいらない」って、そうなりたい。

 ……このまま、どこかへ消えてしまいたい。このまま、誰かにさらわれたい。

 こことは違うどこかへ、お願いだから誰かあたしをつれていってください。こことは違う、もう少し『ゆったり』できるどこかへ。

 あたしには無理だから。あたしは子供だから、一人じゃなにもできないから。

 だから誰か、できればあたしを『好き』になってくれる誰か、あたしをここからさらってください。

 そしてずっと、あたしといてください。あたしを『好き』でいてください。

 放さないでください。

 あたしは『いい子』にしますから。じゃまにならないように努力しますから。

 お願いします。

 誰か、あたしを『見て』ください……。

 

 天気予報でいっていた。

 今夜は雪が降るそうだ。

 寒いのは嫌いだが、雪はそんな嫌いじゃない。なんとなく、楽しい気分になるからな。

 オレは隣を歩いているクラスメイトに適当に相づちを返しながら、アーケードの商店街を歩いている。

 友達の間じゃ人気がある女だが、オレにとってはただのクラスメイトでしかない。そもそも、なんでオレはこうしてこいつと並んで(他人が見れば、恋人同士だと勘違いされそうな位置関係で)歩かなくちゃいけないんだ?

 そんなことを思っていても、オレは口にも顔にも出せない。どうやらオレは、落ち着いていて、優しくて、頭のいい人間だと他人からは見られているらしい。自分ではそんなことないのはわかっているが、まぁ無理に否定したり訂正したりすることでもないから、オレはそう思わせておくことにしている。

 少なくともこうして同い年の女と並んで歩いている限りは、実はオレがロリコン(イヤな言葉だ。もっと他にいい方がないもんかね。幼女趣味……? もっとイヤだ)だってバレることはないだろう。

「でね? 朔美ったら……」

 隣の女が発する、なんの興味ももてないうるさいだけの言葉を、聞いているふりをしながら聞き流し、オレは前方をゆっくりと歩いている小学四年生くらいの女の子を盗み見ていた。

 赤いランドセルを、その子はやけに重そうに背負っている。後ろ姿だけだが、オレはその子がかわいい子だとわかった。

 なんというか、かわいい子だけがまとっている、そんなオーラみたいなものを感じる。

 追い越す瞬間。チラッと横目でその子の顔を見ると、オレは自分の感性が間違っていなかったことを確認できた。

 どこか影がありそうな憂いを帯びた表情のその子は、本当にかわいかった。

 でも、なぜだろう? 今にも泣き出しそうな顔にも見えた。

「どうしたの?」

 そう声をかけて、その子を元気付けてあげたいと思ったけど、そんなことできるはずがない。見ず知らずの女の子(それも小学生)に声をかけるなんて、「オレはロリコンです」といっているようなものだ。

 ……そんなことないか? いや、でも普通の高校男子ならしないだろうから、やっぱできない。

 オレは、隣のうざったいクラスメイトと一緒にその子を追い越し、振り向きたいのを我慢しながらアーケードを進んだ。

 

 あたしが家に帰ると、そこにお母さんはいなかった。

 でも、リビングのテーブルの上に千円札一枚と、「今夜はお父さんと出かけます。明日の昼には帰ります。お母さんより」と書き置きがあった。

 そうか……今日は、あの人たちいないんだ……。

 あたしは少し嬉しくなった。

 一人は寂しいけど、あの人たちといるよりはいい。それに、セックスしてるあの人たちの声を聴かなくてもいいから、安心して眠れそうだ。

 あの人たちは、あたしの前でも平気でセックスする。すごくイヤで、気持ち悪い。

 この前なんか真夜中に起こされて、雨の中を『こんどーむ』とかいうのを買いにいかされた。セックスのときに使うものらしいけど、あたしはよくしらない。

 なんであたしが……って思ったけど、逆らうとまた叩かれるかもしれないし、外に放り出されるかもしれないから、あたしはアパートから200メートルくらいの場所にある自動販売機まで買いにいった。

 雨が激しくて、買って帰ってきたときには、あたしはずぶ濡れになっていたけど、お母さんはなにもいわずに受け取ってセックスを続けた。

 あたしはそのセックスの声を聴かされながら、セックスしてる隣の部屋で蒲団にくるまってまた寝た。

 だけど今日は、そんなことはない。あの人たちは帰ってこない。だから、ゆっくり安心して眠れる。

 あたしは国語と算数の宿題を終わらせて、テレビを観ながらカップラーメンを食べた。食べ終えて外を見ると、少しだけと雪がちらちらしていて、あたしはしばらくの間その雪が舞っているのを窓越しに眺めた。

 それからお風呂に入って、テレビを観て、10時になったから蒲団に入った。

 雪……積もるかな?

 あたしは少しだけ明日を楽しみにて、久しぶりにぐっすり眠った。

 

 オレはもう推薦入学で大学が決定していて、他のみんなのように受験で苦しむ必要がない。これも猫を被って、真面目にしていた恩恵だろう。勉強も苦手じゃないし、コンスタントにいい成績を収めていたっていうこともあるだろうが。

 だからこうして、みんなが必死で勉強しているだろう時間に、自室でのんびりとロリ系のエロマンガなんか読んでいられる。

 天気予報の通り、外は雪が降っている。この調子だと明日の朝には、それなりに積もっているだろう。

 明日は受験休み(っていうのが、オレの通っている学校にはある)で、三年生は登校しなくてもいい(別にしてもいい)から、電車のことを気にしなくてもいい。積もるなら、精一杯積もってくれ。

 そんなことを思いながらページを捲っていると、あるページでオレの指が止まった。そのページは一枚のイラストで、そのイラストのキャラが、今日の下校時にアーケードで見かけた女の子に似ていると感じたからだ。

 年齢(イラストだから年齢はわからないが、絵から受ける印象として)も、三つ編みという髪型も、そしてなにより、今にも泣き出しそうな表情が似ていると感じた。

 イラストの女の子は、どこか(公園だと思う)のベンチに腰を下ろして、寂しそうな顔で誰かを待っているかのようにしている。

 オレが観ているのはエロマンガだけど、このイラストにはそういうイヤらしいというか、エロい感じはない。

 つい声をかけたくなるような、守ってあげたくなるような、そんな女の子のイラストだ。

 オレはなんというか、こういう雰囲気の女の子に弱い。守ってあげたくなる。元気づけてあげたくなるような女の子。

 小さくて、かわいくて、脆そうな、そんなボヘミアンガラスのような女の子。

 オレはロリコンだから、こういうロリマンガでオナニーもするし、ロリな女の子とエッチなこともしたいと思ってる。もちろんしたことないけど。

 でも……実際どうなんだろう?

 もしあのアーケードの女の子がオレの恋人だったら、オレはあの子とセックスできるのだろうか?

 だぶん……できないだろう。

 マンガや妄想ではロリな女の子とのエッチを楽しめるけど、現実だったらオレにはできないと思う。

 犯罪者になるのが恐いっていうのもあるけど、それよりもオレは、「それは絶対してはいけないことだ」と思う。

 結局のところオレが好きなのは『子供』だし、同意のもとの行為であったとしても、子供に責任は問えないと思うからだ。

 自分がその子の全てに責任を持ち、守ってあげられるという保証、確信がないのなら、やはりしてはいけないことだと思う。

 幼児期の人格形成は重要で大切だと思うし、それは事実だろう。

 子供は大人が守ってあげなければならない存在で、自分勝手な欲望をぶつける存在ではけしてない。

 だから、オレにはできない。オレには、そんな保証も確信もない。

 頭の中だけで、ロリな女の子との行為を妄想して、自慰に耽るくらいは許される……というか許してほしい。オレは、そういう病気なんだから仕方ない。

 しかしその妄想を、現実に移行させてはダメだ。してはいけない。してしまうようなヤツは、ただの変態の犯罪者だ。ロリコンでも、幼女愛好者でもない。

 オレはそんなヤツ、『仲間』とは認めない。

 十分な罰を与えて、一生牢屋に閉じこめて、二度と外に出られないようにすればいい。そんなヤツに、オレの好きなロリな女の子を見てほしくないし、手を触れてほしくない。

 オレは守ってあげたい。かわいい女の子たちが、安心して心から笑っていられるように。

 もちろん。オレにそんなことできないだろうし、もしかしたらそう思う資格すらないのかもしれない。

 それでも……それでもオレは、やっぱりロリな女の子が好きだし、好きな女の子たちには笑っていてほしい。

 あの子。今ごろ、どこでなにをしているんだろう? もう眠ってるかな? だったら、楽しい夢が見れてるかな?

 泣きそうな顔……もうしてないかな?

 あの表情もかわいかったけど、でも笑った顔はもっとかわいいだろうと思う。

 だから、あの子にも笑っていてほしい。

 笑った顔も、見てみたい。

 オレは、本当にそう思った。

 ロリコンだけど、ロリマンガも読むし、ロリな女の子とエッチなことする妄想してオナニーもするけど、オレは本当にそう思ったんだ

 あの子にも、そしてオレが好きなロリな女の子たちみんなにも、できればいつも笑っていてほしい……って。



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