『人形』

 

 バイオ有機アンドロイド、通称〈ドール〉。

 その身体を形成する成分、パターンの99.99%は人間と同じだが、人間とは違う、人間の下僕として造られた物だ。

 ドールの使用用途はさまざまで、西暦2203年現在では、ドールは人類にとって必要不可欠な存在となっている。

 100年ほど前。ドールが実用化され始めたころには、信じられないがドールに対して『人権』を主張した人たちがいたらしい。しかし今では、そんな常識外れなことを主張する人はいない。

 ドールは物であって、人ではない。人に似ている、人の形をした物である。

 ドールは大きく二種類に分類される。一つは労働に従事する〈セフィスドール〉。もう一つは、性欲の処理道具として使用される〈セクサドール〉である。

 セクサドールの実用化以降、性犯罪は減少し、現在、性犯罪者は希少動物より珍しくなっている。

 セクサドールに好みのプレイパターンをインストールすれば、どんなプレイだって体験できる。疑似レイプでも、疑似調教・陵辱でも、疑似殺人でもなんでもだ。

 そして今日。

 僕のところに新しいセクサドールが届いた。前のやつは三世代前の物で、もう飽きたから業者に回収してもらった。回収されたセクサドールは大抵、疑似殺人指向者に安価で払い下げられる。

 僕が〈フィーナ〉と名付けて使用していた、長い銀髪のセクサドールも、誰かの手によってバラバラにされ、楽しまれるのだろう。

 約二年。よくもったほうだと思う。

 僕はセクサドールを乱暴に扱うほうじゃないし、疑似殺人指向も持ち合わせていない。だから二年ももったのだろう。もう少しは使えるはずだったけど、二年も同じセクサドールでは飽きる。型も古くなったし、僕は思いきって新しいセクサドールを購入した。

 最新モデルであるNS−UX−2203の、S10だ。

 NS−UX−2203は型番を表していて、S10は形を表している。S10いうことは、見た目が10歳の人間をモデルにして造られているということだ。

 僕はそのセクサドールの造形パターンを、細く薄い未成熟にして、髪は黒のショートを選んだ。

 前のフィーナがファンタジーモデルだったから、今回は現実界モデルにしてみた。僕は幼女指向者なので、モデル年齢は前と同じだけど。

 これ以上モデル年齢を低くすると、僕は「ちょっと違うかな」と感じてしまうので、S10がちょうどいい。

 さて、そろそろ起動させてみようかな。

 納入されたばかりのセクサドールは、まるで眠っているような姿だ。起動させない限り、身動き一つしない。

 僕はフィーナも使っていた、様々なギミックが内蔵されたセクサドール用の寝台に横たわった〈彼女〉に、起動コードを告げた。

 彼女には僕の好みで、1990年代の学校という場所で使用されていた、体操着なる服を着せている。

 下半身を被う、紺色のブルマという物と、袖口と襟元に緑のラインが入った少し長めのTシャツがそれだ。

「おはよう」

 単純で有り触れたコードだけど、音声認識で僕の以外の声では絶対に起動しないよう設定されているから、これでも問題ない。

 彼女は薄く瞳を開けた。

「……はじめまして、マスター……」

 上半身を起きあがらせ、彼女は抑揚のない口調で起動した。

「マスター。私の初期設定を行ってください。まず、私の名前を教えてください」

 僕はあらかじめ決めていた名前を告げた。

「夏穂子」

「か・ほ・こ……文字を教えてください」

「夏の夏、稲穂の穂、子供の子だ」

「……かほこ……夏穂子。はい、認識しました。夏穂子の一人称を教えてください」

「夏穂子でいい」

「認識しました。夏穂子は、マスターをなんとお呼びすればよいのか教えてください」

 これも決めていた。

「兄さまと呼べ」

「にいさま……はい、認識しました。にいさま、夏穂子の性格を設定してよろしいですか?」

「あぁ」

「ではにいさま。夏穂子は明るい子ですか? おとなしい子ですか? それとも普通の子ですか?」

「明るい子だ」

「……了解しました。これよりデータのインストールを行います。しばらくお待ちください」

 そのまま30秒ほどが経過し、

「にいさまぁ、インストールが終わったよ」

 と、夏穂子はこれまでと違った元気な表情と声で、作業の終了を告げた。

「うんとぉ……これでいいかなぁ?」

 ……少しイメージと違っていたが、これも悪くないだろう。

「それでいい」

「えへッ……じゃあ、にいさま。夏穂子はエッチな子? エッチはちょっと苦手な子? それとも普通の子なの?」

「最初は普通でいい。行為によって学習するタイプだ」

「はーいッ。じゃ、にいさま。ちょっとまってね。すぐ設定しちゃうから」

 夏穂子は目を閉じて、なんだか「うーん。うーん」と唸っている。

「設定終わったよ、にいさま。じゃあ……夏穂子が一番気持ちいい場所を決める? そんなのいらない?」

「お尻だ」

「おしりぃ……お尻のどこなの? 穴かなぁ? それとも肌の部分?」

「穴」

「はーいッ。夏穂子は、お尻の穴が一番気持ちいいですぅ。えへッ……ちょっと恥ずかしいなぁ。にいさま? 第二レベルの設定もする?」

「それはいい」

 第二レベルの設定は、プレイでの微妙な動きの設定だ。学習するタイプに設定したから、それは教育していく過程で学んでいくだろう。

「はい。だったら、これで初期設定は完了ですぅ。にいさま。これから夏穂子をいっぱい、い〜っぱいッ、かわいがってね? 夏穂子、にいさまのいうことはなんだってきくからね。でもぉ……夏穂子は明るくて、エッチも普通の子だから、あんまりいじわるしないでくれると嬉しいな。あっ……にいさまがしたいのならいいよ。夏穂子はにいさまの〈人形〉なんだから。これからよろしくね、にいさまッ」

 こうして、僕と夏穂子のセックスライフは始まった。

 

 セクサドール身体は成長しない。髪も伸びなければ、体型も変わることはない。プレイによって性器やアナルが広がり、形を変えることはあるが、それも最小に抑えられているし、メンテナンスで元に戻すこともできる。

 やろうと思えば、毎回処女膜を張ることもできる。

 だけど僕は、セクサドールの成長の過程が楽しいから、いちいちメンテナンスに出したりはしない。

「に、にいさまぁ……か、夏穂子ぉ……もう、はあぁんッ! ヒッ……イっちゃうぅ。夏穂子またイっちゃうよぉ〜ッ」

 心地よいBGMを聴きながら、僕は仕事をしている。

 僕の仕事は〈シティ〉の食品管理だ。

 とはいえ、在宅勤務でディスプレイを流れる文字列を眺めているだけの、楽な仕事だ。もちろん、なにか問題が発生すれば警告音が報せてくれるので、ずっとディスプレイを眺めている必要はない。それに僕がこの仕事に就いてもう四年になるが、問題が発生したことは一度だってない。

 はっきりいってしまえば仕事の時間だけ、管理システムの動きをディスプレイに表示させておけばいいだけだ。

「ああぁあぁぁぅんッ! にいさまぁ……あうぅ。か、夏穂子またイっちゃったよぉ……ごめんなさいぃ……に、にいさまに、勝手にイっちゃダメって。で、でもぉ……クウゥン……も、もう16回もぉ。に、にいさまぁ……」

 裸で寝台に大の字で固定された夏穂子には、性器とアナルを同時に責める二穴用可動式バイブを突っ込んである。僕はこうして、夏穂子のかわいい声を聴くのが気に入っていた。

 それにしても、連続16回とは新記録だ。昨日は14回でショートしてしまい、しばらく使い物にならなかったから、夏穂子は確実に成長している。

 夏穂子を使うようになり、今日で13日目になる。

 これまで使った感触は、悪いものではない。やはり最新モデルだけのことはある。

「ご、ごめんなさい……にいッ。ヒイィ〜ンッ! あっあっあぁッ! だ、ダメぇッ。また、またきちゃううぅッ! に、にいさまぁ……も、もう……ヒャウゥッ。イッ、イっちゃううぅうぅぅ〜ッ!」

 17回目。

 今日の連続責めはこのくらいでいいだろう。

 僕は夏穂子に刺さった、二穴用可動式バイブを抜いた。

「あぅ……はぁはぁ……に、にいさまぁ……面白かったぁ? か、夏穂子がイクのぉ……」

「あぁ」

「よ、よかったぁ……」

「がんばった夏穂子に、ご褒美をあげよう」

 僕は夏穂子の拘束を解き、夏穂子を裏返しにした。

「さぁ。お尻を上げろ」

「は、はい……にいさま……」

 夏穂子はガクガクと震える膝を立て、愛液でグッショリ濡れた下半身を突き上げた。

 僕のペニスは、ズボンの中で準備が整っていた。僕はファスナーを開け、力強いそれを外に出すと同時に、夏穂子のアナルにぶち込んだ。

「ヒイィッ! あッ、に、にいさまッ……い、いたいよおぉッ」

 小柄な夏穂子には、まだ僕のペニスは大きい。もう少し教育を進めれば、ちょうど良くなるだろう。

 だが僕は、きついくらいのほうが好きだ。

 連続責めでお尻の中は広がったままだが、僕のモノはバイブほど細くも短くもない。夏穂子の奥の奥まで届き、串刺しにした。

「あうッ……にいさまぁッ! も、もっと……優しく、ううぅんッ……や、優しくしてぇ」

 僕は力一杯、夏穂子に打ち付けた。

 パンパンと肉のぶつかる音と、「ヒィヒィ」と夏穂子が苦しげに喘ぐ声が混じり合い、僕は楽しくなって腰の動きを速めた。

「かはあぁッ! グゥッ。に、にい……ヒウゥッ。も、もう……」

 キュッと、これまで以上に夏穂子のお尻の締め付けがきつくなった。

 ペニスに絡み付く直腸が、ペニスに巻き込まれて外に顔を出す。

 ビクッ! ビクビクビクンッ!

 夏穂子の小さな身体が、跳ねるように大きく痙攣した。

 僕は引いた腰を思い切り突きだし、グリュウゥッという感触をペニスに感しながら、夏穂子が発した獣のような悲鳴に合わせて、今日最初の精液を夏穂子の直腸に注ぎ込んだ。

 もちろん、これは準備運動でしかない。本番はこれからだ。もうすぐ仕事の時間は終わり、自由時間になる。

 夏穂子でたっぷり遊べる。

 夏穂子の小さな乳首をちぎれるほど引っ張ったり、クリトリスに針を刺したりして、痛みに身を悶えさせる声や、涙でグチョぐちょになった顔を楽しめる。

 直腸に溢れるほどの精液を注ぎ込んで、白い液状ウンチを吐き出す様を眺める。当然それは夏穂子に食べさせる。

 昔は精液の量をコントロールすることができなかったらしいけど、今は薬を飲めば一日中だって勃起したままで、精液だって大量に生成できる。多少身体に悪いと聞くけど、それでも煙草を吸うほどのことはない。僕は喫煙しない。

 夏穂子だって、そんなことくらいで壊れたりしない。僕はソフトなプレイが好きだから、その程度のことしかしない。

 ハードな人は、もっと無茶なことをするらしい。セクサドールの身体を火で炙ったり、ナイフで皮膚を裂いたりするという話だ。

 野蛮なヤツもいると思う。

 そんなことをして、なにが楽しいんだろう? 正気を疑う。

 あと、胸が大きなセクサドールを好んだり、太ったのを好む人もいるらしいけど、それも僕には理解できない。

 やはりセクサドールは、幼女タイプに限る。

 小さく薄い身体。ぷちっとした乳首。狭い性器とアナル。それに高く甘い声。ミルクのような香り。

 そう考えると、夏穂子は理想的なセクサド−ルだ。

 その全てを兼ね備えている。

 今日は、どうやって夏穂子で楽しもう。

 いわなくても、僕のペニスを口できれいにしている夏穂子を見下ろし、僕は今日のプレイに思いを巡らせた。



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