「まなみ」

 

 失態だ。失態とはまさにこのこと。

 市立夏樹小学校四年二組の学級委員を務める者にあるまじき失態だ。

「まなみ。早く起きないと、朝ご飯食べる時間なくなるわよ?」

 揺すられた肩の振動に、パチッと目を醒ますまなみ。目の前にあったのは母、正子(まさこ)の顔だった。

 瞬時にして活動状態に入るまなみの脳細胞。

 お母さん。いる。私。ベッドの中。朝ご飯。時間がない。

 導き出される結論。

「が、学校に遅刻しちゃうっ!」

 バサッ!

 掛け布団を跳ね上げて飛び起きる。ベッドのすぐ隣に置かれたラックに乗る目覚まし時計に目を向けると、アラームが鳴っていなければならないはずの時間を、二十分もオーバーしていた。

 理由は不明だが、目覚まし時計のアラームが正常に作動しなかったらしい。

 しかし二十分の遅れとはいえ、致命的とまではいかない。

 まなみは「容姿端麗、頭脳明晰、運動神経それなり」の、市立夏樹小学校四年二組学級委員…と自負している。

 なので学校に遅刻するなんてことは、あってならないことだ。目覚まし時計のアラームは、いつも余裕をもって設定してある。

 なので正子がいうように、急げば朝ご飯だって食べる時間はあるだろう。

 まなみはベッドをおり、急いだ様子で上下のパジャマを脱ぎ始める。パジャマの上を脱ぐと、膨らみ始めたばかりの胸が露わになり、それはまなみの動きに合わせて、ぷるっ…とかわいらしく震えた。

「じゃあ、早く着替えて朝ご飯食べにきなさい」

 部屋を出ていく正子に、

「はーい」

 答えてまなみは、ショーツ一枚になると、ハンガーに吊してあった制服を手にとった。

 まなみの通う夏樹小学校は、市立だが制服がある。女子児童のそれは白を基調にしたセーラー服で、膝上丈のスカートも白だ。胸元を飾る小さめのリボンは学年によって違い、四年生は黒に近い紺色である。

 襟と袖口には深緑色のラインが一本はしっていているが、全体的にみて真っ白な制服だといっていいだろう。

 通学カバンもランドセルではなく、手提げだ。これはラインと同じ深緑色で、校章のワッペンが施されている。

 制服を着込んだまなみは、背中の半分までを隠す長い髪を、いつものようにゴム紐で「子馬のしっぽ」に縛り上げ、通学カバンを手にダイニングへと向かった。

 

 急いで朝食をとり家を出たまなみ。トイレに入っていられる時間は短く、小はできたが大までしている余裕はなかった。

 駅まで駆け足で向かったまなみは、なんとか遅刻しないですむ最後の電車には乗れた。乗れたのだから、遅刻はしないですむだろう。

 しかし乗れたといっても、

(うっ…く、くるしいぃ…な、なんでこんなにこんでるの?)

 今は朝の通勤ラッシュ。いつもはもっと早い時間の電車に乗っているので、運がいいとまなみは座席に座ることもできる。

 しかし今日は違った。

 車両はすし詰め状態。まなみは前面をドアに、後面とサイドを人に挟まれ、まるで身動きがとれない状態だ。

(学校まで二十分、このままなのかしら…)

 溜息が出そうになったその瞬間。

(きゃっ、やだッ! お尻になにかあたってるっ)

 しかしそれを確認しようと思っても、こんなに混雑していれば容易に後ろをみることもできない。

 まなみはなんとか身体をそらそうと足掻いたが、それは徒労に終わった。

(…しかたないか。こんなにこんでるんだもの)

 お尻の異物感を不快には思っても、これではどうすることもでない。ガマンするしかない…とまなみが思ったとき、

 さわっ…さわさわっ

 スカートの上からあたっている「なにか」が、まなみの小さなお尻を撫でるようにして蠢いた。

(ひっ!)

 ゾクッ…お尻から背筋にそってはい上がってくる、気持ち悪い電流。

 蠢く「なにか」は撫でるだけに止まらず、ぷにゅぷにとお尻を揉み、あろうことか谷底の穴を、クイッ…と的確に押して攻撃してくる。

 ここまでされれば、まなみにも「なにか」の正体はわかる。それは誰かの「手」だ。

 スカート、そしてショーツ越しにアヌスを押しているのは指だろう。

(チ、チカンッ!?)

 それ以外には考えられない。

(や、やめてッ! 気持ちわるいっ)

 声に出して「止めてください」といわなければ。チカンなんて絶対に許せない。

 しかしまなみは、恐怖で動けなくなっていた。

 クイクイと、アヌスをピンポイントで攻撃してくる指。気持ち悪い。止めてほしい。しかしそれ以上に、

(こ…こわいッ。だ、だれか助けてぇっ!)

 膝の力が抜けていく。声が出ない。唇は半開きで震えているだけで、なにも紡いではくれない。

 まなみがなにもいえず、ただ恐怖に脅えていると、

 スルッ

 手がスカートの中に進入してきた。

 手はお尻と股の境界あたりを二、三度撫でると、当たり前のようにショーツの中にまで潜り込んで、直接まなみのお尻に触れる。

(いやあぁっ…や、やめて…おねがい、やめてくださいぃ)

 恐い。本当に恐い。

 気持ち悪いとかおぞましいとかいう感覚よりも、まなみは恐くて仕方がなかった。

 自分がこんなにも弱いなどとは、思っていなかった。以前、クラスメイトが痴漢にあったと泣いていたときは、

「かわいそう」

 とは思ったが、

「チカンくらい、声だして、この人チカンです…っていえばいいのに」

 とも、心の底では思っていた。

 なのに自分が痴漢にあってしまうと、恐怖でなにもできない。されるがままにお尻を触られ、揉まれ、

(ひうぅっ!)

 アナルに指を埋め込まれている。

(やだ…こわい、こわいよぉ…た、助けて、だれか…おねがい、だれか…助けて、助けてくださいぃっ)

 どうしてこんなにも人がいて、誰も気がついてくれないのだろう? もしかしてここにいる人たちは、全員痴漢なのでは…

 まなみは、そんな被害妄想に沈んでいく。

 動かずなにもいわないまなみ。痴漢は「いい獲物」をみつけたといわんばかりに、執拗にまなみのお尻をいたぶる。

 ズプズブズプ…

 直腸の奥深くまで埋もれていく指。

(ウギっ! い、いたあぁーいぃッ)

 痛くて気持ち悪くて吐き気がして、それでもそれ以上に恐い。動けない。なにもいえない。

 ズプッ…ジヂュッ…ジュプッ…ジチャッ…

 直腸の中で、指が前後運動をしているのがわかる。なんだか、大便を出し入れされているようだ。

 そういえば今日は、排便する時間がなかった。お尻の中には、大便が詰まっていることだろう。

 まなみはそんなことを、思うというよりは、感じた。

(…いつまで、お尻さわってるんだろう?)

 それでも、少し冷静になってきたまなみ。とはいえ、声を出せるほどの勇気はないが。

 この電車は通勤快速で、まなみが乗った駅から次の停車駅までは十分。そして学校の最寄り駅があるその次の停車駅までは、さらに十分。

(このままだったら、次の駅でおりよう)

 学校には遅刻してしまうだろうが、背に腹は代えられない。こんなのはイヤだ。耐えられない。

 まなみはギュッと下唇を噛みしめ、次の停車駅まで痴漢の陵辱に耐えることにした。

 そしてそれは、次の停車駅のアナウンスが流れている最中に起こった。

 

 車内に流れる、停車を告げるアナウンス。

(…ハァ…ハァ…な、なんか、か、からだが熱い…どうしちゃったんだろ、私…お尻の中のチカンの指、ちょっ、ちょっと、き、気持ち…いい…)

 まなみの頬は上気し、瞳は潤んでいる。

(ウ、ウソ…なんで…? ど、どうして…?)

 まなみがそんなことを感じていたとき、

 ジュプッ

 不意に痴漢の指が、完全にアナルから抜かれた。

(アッ!)

 思わず声が出てしまいそうになった。

 声をかみ殺すのと同時にまなみが感じたこと。

 それは…安堵と、ほんの少しの、まなみにしてみればほんの少しもあってはならないことだが、未練だった。

(そ、そっか…チカン、おりるのね…)

 と、

 ゾワッ!

 まなみを強烈な便意が襲った。ほぐされた肛門から、大便が零れ出てきそうに感じた。

 慌てて肛門に力を込め、ギュッと閉じるまなみ。

(よ、よかった…で、でなかった)

 だが次の瞬間には、痴漢は安堵したまなみのショーツを引っ張って隙間をつくると、なにか細い棒状のモノを閉じた肛門に刺し込こんできた。

(な、なにっ!?)

 直腸内に注ぎ込まれる、冷たい液体。

(いやッ! な、なにこれっ!?)

 ガタン…ガタン…ガタン

 電車が止まる。

 開いたのは、まなみが身体を押しつけているのとは反対側のドア。まなみは下車する人たちの圧力に押され、強くドアと密着した。

(いっ、いたいッ!)

 これでは、おりようにもおりられない。それにここで痴漢が下車するのなら、まなみが下車する必要はない。

 パンッ

 痴漢がまなみのショーツを手放し、ショーツは伸びたゴムをまなみにぶつけるようにしてもとの状態に戻った。

 次の瞬間。

「かわいいお尻ちゃんには、イチジク浣腸のプレゼント期間中」

 後方から男の声が、まなみの耳元に囁く。

「えっ?」

 まなみが、「わけがわからない」といった感じの声を発すると同時に、

 ドンッ!

 まなみはドアに押しつけられた。

 なんとか首だけで振り返るまなみ。背広を着た小柄な男の背中が見えた。だがその背中は、すぐさま開いたドアの方へと消えた。

「ドア閉まります。駆け込み乗車は…」

 アナウンスが響く。

(カ、カンチョウ…な…の? お、おりなきゃッ!)

 おりてトイレにいかなくては。次の停車駅まで十分もある。

「お、おりますっ!」

 しかしまなみは乗車してきた人の圧力で、再び身動きができなくなっていた。

 そして非情にも、

 …ガタン…ガタン…ガタンガタン

 電車は、動き出していた。

 

(ウソ…ど、どうしようッ!?)

 動き始めた電車。もう次の駅まで止まらない。車内の混雑はさきほどとかわっておらず、まなみは身動きがとれない状態だ。

 お尻の中に感じる異物感。液体だとわかる。

(ホ、ホントにカンチョウなの…?)

 信じられない。どうしてそんなことをするのか。見ず知らずの男に、どうして電車の中で浣腸されなければならないのか。

(私…なにもわるいことしてないのに)

 学校では優等生。教師には信頼されているし、クラスではリーダー的な存在。多少気の強いところはあるが、嫌みなほどではないし、おんなの子友だちから敬遠されているということもない。

(私、なにもわるいことなんてしてないっ)

 それはそうだろう。だが、よい悪いは関係ない。まなみがそこにいて、そして痴漢もそこにいた。

 理由はそれだけだろう。

 そしてまなみは、痴漢に抵抗しなかった。いや、できなかったのだ。

 できなかったことを「悪いこと」だとして、まなみを責めることはできないだろう。悪いのは完全に痴漢で、まなみにはなんの責任もない。

 しかし抵抗できなかったことで、事態が悪化してしまったのは事実だ。

 かわいそうとしかいえないが、そうなのだ。

 ギュルルルウゥ〜

 下腹部からの音。音とともに与えられる、ヒクつくような痛み。

 血の気が引いた。

 まだ電車が動き出して、一分も経過していない。

 腹部の水っぽさが増加していく。肛門がヒクヒクと痙攣し始める。身体中を駆けめぐる排泄願望。波のように打ち寄せてはまなみを責める。

(やだぁ…やだよおぉ…)

 涙が零れそうだ。

 こんな満員電車の中で排泄してしまうなど、想像しただけで膝が崩れそうになる。

(ひ、ひどい…ど、どうして私が…)

 考えても答えは示されない。まなみに示されるのは徐々に勢力を増して暴れ始めるうねりと、勝手に弛もうする肛門括約筋の動きだけ。

 グウゥ…グルギュウルルッ

 大きな波がまなみを打つ。

 ピクッ!

 細い肩が震えた。

 まなみの周囲から、音が遠ざかっていく。自分がとても小さくなってしまったように感じ、肉体の存在が希薄になっていく。

 視界は真っ白に染まり、なにもみえない。

 グルウゥ〜…ギュルッ!

 胃と内臓を握り掴まれたような感覚に、まなみの肉体へ存在感が戻る。そして自分が、少しの間だろうが思考の空白に陥っていたことを悟り、ゾッとした。

(しっ、しっかりしなくちゃッ! こんなところで気を失ってしまったらどうなるか、考えるまでもないわっ)

 確かにそれは考えるまでもない。

 ブチまけられる排泄物。車両内に満ちる排泄臭。車内はパニックになり、誰もがまなみを責めるだろう。

 そして見下し、嘲笑するだろう。

「あの子、ビチクゾ垂れ流してるぜ。真っ白スカートビチグソ色じゃん。すっげぇ〜」

「なに? この子。最低、親の顔がみてみたいわ」

「ヘンタイなんじゃない? 人前でウンチしたくして、人の迷惑なんて考えないヘンタイなのよ」

「どうでもいいけど、臭すぎ」

「…死んじゃえばいいのに」

 そんな声が、まなみには聞こえた気がした。

 被害妄想。

 いや、違う。それはまなみにとって、高い確率の可能性をもってやってくる未来の光景だった。

(だ…だめ…こ、こんなところで、し、しちゃ…だ、だめぇ)

 意識をハッキリともたなければならない。

 下腹部の痙攣に耐えなければならない。

 肛門に込めた力を弛めてはならない。

 頭がクラクラする。白かった視界は、いつしか黒くかわっていた。

 まなみの顔面は蒼白となり、額には脂汗が滲んでいる。目の焦点は曖昧で、どこをみているのかよくわからない。

 まなみは自分を陵辱する圧倒的な波の力に翻弄されながらも、

(だしちゃ…だめえぇッ!)

 自分にいい聞かせ続けた。

 肌は粟立ち、膝はガクガクと震えている。混雑しておらず隙間があったのなら、倒れ込んでいても不思議ではない。

 ドアと人の圧力に立たされている状態。

 身体中に液体が拡がってきたように感じる。頭の先からつま先まで、水っぽい排泄物でいっぱいに満たされてしまったように感じる。

 ギュウル…グルギュルウゥ〜ッ!

(ヒイィイイィッ!)

 肛門が内側から強く押され、なぜか胃の内容物が逆流しそうになった。

 上からと下から、同時に溢れ出してしまいそうになった。

 舌を刺激する酸味。どうやら下は大丈夫だったようだが、上はそうでもなかったらしい。まなみは口腔内に、少量だが嘔吐してしまっていた。

 その逆流物のすえた臭いが、鼻孔を通ってまなみをさらに苦しめる。胃が痙攣して、咽がヒクヒクと鳴った。

 手で口元を押さえようとしたが、腕を上げることもできない。

(く…るし…だ…れか、た…たす…け…て)

 だが、まなみを助けてくれる者はいない。誰もまなみの様子に気がついていないのか、それとも気がついていても無視しているのか、または苦しむまなみをみて愉悦に浸っているのか。

 どれが正解なのかはわからないし、どれも正解ではないかもしれない。

 しかしどれが正解だとしても、まなみが置かれた状況にかわりはない。まなみは苦しんでいて、助けを求めていて、だが誰も助けてはくれない。

 そのことに、なんらかわりはないのだ。

(ハッ…ハァ、ハァ…く、くる…しい)

 ビクンッ! ビクンッ!

 内部で弾けるような、そしてうねるような鈍痛。

 それは一撃ごとに、確実にまなみの理性を削ぎ落としていく。

 だがまなみは、諦めたりはしなかった。

 それはできない。

 全意識を肛門に集中させる。イメージする。閉じた穴を。

 ヒック…ヒック…

 肛門というよりは、お尻全体が痙攣している。まなみは下唇を強く噛む。

 苦しい苦しいくるしいクルシイ…

 自分がどういう体勢にあるのかわからない。なんだか、手でお尻を押さえているようにも感じるが、実際にそうなのかどうかはわからない。

 いや、確かにまなみは、お尻を押さえていた。

 右手は通学カバンをギュッと握りしめプルプルと震えているが、左手はスカートの上からお尻を押さえている。

 いつ、どうやって押さえたのか、まなみは理解していない。しかし押さえることによって、どれほどの効果があるというのだろう。

 押さえていた方がマシ。もしくは、余計な刺激なのではないのか。

 その判断を下すことは、まなみにしかできない。無意識とはいえ押さえることをまなみの身体が選択したのだから、やはり押さえていた方がマシなのだろう。

 まなみの唇は真っ青に染まり、瞼は完全に閉じられている。眉間によったシワ。閉じた瞼の隙間から、ポロリ…一粒、涙が零れた。

 そのときだった。

 車内に、停車を告げるアナウンスが響いたのは。

 停車駅の名を告げるアナウンス。まなみは朦朧とする意識で確かに聞いた。

 なぜか急激に、下腹部で暴れる波が引いていた。

 電車が止まる。

 気がついたときなまみは、駅のホームに立っていた。

 どうやって電車からおりたのか覚えていないが、そんなことはどうだっていい。まなみは震える膝を懸命に堪え、女子トイレという目的地へと一直線に歩き出した。

 

 階段をおりるまなみ。手すりを掴んでいなければ、転げ落ちてしまうかもしれない。

 まなみの具合が悪いのは一目瞭然だ。なのに、なぜ、まなみに声をかける者はいないのだろう。

 誰もが急ぎ足で、まなみを追い越していく。

 だがそのことを恨む余裕は、まなみにはない。

 一段ごと確実におり、目的地に向かう。

 一歩ごと…確実に…。

 そしてついにまなみは、目的地へとたどりつくことに成功した。もちろん、目的を果たすために…だ。

 まなみの目の前には個室のドア。震える腕でドアを開ける。便器は洋式だった。フタはあがっていた。

 ビクビクビクッ!

 便器を目にした瞬間、圧倒的ともいえる便意がまなみを強襲した。

 が、まなみは耐えた。

 まだだ。まだ出せない。

 ガクガク…ガクガク

 震えているのは膝だけではない。身体全体が震えていた。

 まなみは通学カバンをその場に落とし、両手で下腹部を押さえながら便器に近づく。表情は苦悶に歪んでいた。

 便器を後ろに中腰になる。スカートのホックを外した。そのままスカートとショーツを同時に膝までおろすと、まなみは震えながら便座に腰を落としていった。

 が、便座にお尻がつくよりも一瞬早く、

 ブビイイーッ! ブビブビブビブビビイィーッ ブチャビシャビチャッ!

 ポッカリと肛門を大きく開き、まなみは脱糞噴射していた。

 それは本当に、噴射としか表現できない勢いだ。最初は汚水、そして液状化した大便とゲル状の大便が、便器の中にブチまけられる。

 汚物色に染まる便器。汁が跳ね、まなみのお尻に付着して、付着したそこを自分色に塗り替えていく。

 お尻が便座と密着しても、

 ビチャッ! ブチャビチャッ プスウゥ〜…ピチャ…ブリッ! ブリリッ

 まなみは液状の排泄物だけでなく、最後にはドロリとした腸液までも排泄した。

 全て出し切って、お尻を濡らす液状の排泄物が便器に滴り落ちる状態になったとき、

 チョロチョロチョロ…

 閉じたスリットから黄色い尿が零れ出る。その量は少なく、変ないい方だが、「おまけ」のようにも思えた。

「ハァ…ハァ…ハァ…ハッ、ハアァ…」

(た、助かった…なんとか…助かったわ)

 安堵。本当に、もうなにも心配はない。

 肛門周辺が、痛いくらいにヒリヒリする。

「あはっ…あははっ」

 笑いが漏れた。そして、涙が零れた。

「ははっ…あはははははっ…くすっ、くすくすっ」

 まなみは泣きながら笑った。

 自分でも理解できない楽しさ。幸福。そして…快感。

 肛門周辺のヒリヒリが、なんともいえず心地いい。

 スリットの奥から、尿ではない透明な液体が糸を引いて垂れていたが、まなみがその透明な液体の存在に気がつくことはなかった。

 


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