「真衣子 ―まいこ―」

 

 風にそよぐ髪は長く軽い。漆黒でありながら光をまとうように反射するその姿は、天使の輪を幾重にもしたかのように思える。

 真衣子とは、そんな美しい髪をもつ少女だ。

 誰に対しても優しく、そして髪に輝く光にもまけない明るさをもつ真衣子は、当然のように誰からも好かれている。

 十一歳の小学六年生。年相応に発育した身体は青い瑞々しさに満ちあふれ、ともすれば自らも光を放っているかのようにさえ感じられた。

 だが、そんな真衣子には、ひとつ大きな秘密がある。

 それは、

「かわいいわ…真衣子」

「あっ…だ、だめよ、お、お姉ちゃぁん」

 浴槽に浸かる二人の少女。真衣子と、六歳年上の姉、優子。優子は後ろから真衣子を抱きしめるようにして、まだ固さの残る真衣子の胸を揉んでいる。

「アッ…こ、声でちゃう…お、お姉ちゃん、や、やめてよぉ」

 顔立ちはよく似た姉妹。そしてどちらも、美少女として完全に合格レベルに達している。

 だがもちろん、体型は異なっている。優子のそれは大人のものとして通用するだろうが、真衣子のそれはまだまだ熟れてはいない。それに髪型も、真衣子はロング。優子はショートだ。

「お母さんたちにも聞いてもらおうか? 真衣子のエッチな声」

 笑いながらいう優子。

「えっ? や、やだっ。そ、それはゆるしてぇ」

 イヤがるような、でもそれでいて甘えるような声で真衣子。

「じゃ、声もれないように、お姉ちゃんが真衣子の口ふさいであげる」

 優子は真衣子の顔を横に向けると、当然のようにその唇に吸いついた。

「ぅんッ」

 唇を塞がれたとたん、真衣子の瞳はトロンとなって、彼女は自分から優子の口の中に舌をさし込んだ。

 間もなく浴室に響く、舌を絡ませる湿った音。

 優子は真衣子の口をしっかりとふさぎ、胸への責めを激しくした。全体を潰れるほどに圧迫し、硬くなった先端を摘んで抓る。

「ウッ!」

 真衣子のスリットからおしっこではない液体が溢れ、それはお湯に溶けて拡がった。

(あぁ…だいすきぃ、お姉ちゃあぁん)

 真衣子の秘密。

 そう、それは、真衣子が実の姉と「恋人関係」にあるということだった。

 

 それは、ある土曜日の夜のこと。

「お姉ちゃん…おねがいだから。あたし、本当にお腹いたいの…」

 優子の部屋で少しのスキンシップをした後、真衣子は乱れた服を整えながらいった。

「ダ〜メ」

「お姉ちゃぁん」

 明日は家族で遊園地。家族サービス精神旺盛な両親が楽しみにしている、一ヶ月に一度の「家族の日」だ。

 真衣子は、本当は優子と二人きりで「デート」のほうがいいのだが、「家族でお出かけ」を楽しみにしている両親のことを考えると、

「お父さんもお母さんも、いつになったら子離れしてくれるんだろ? でも、お姉ちゃんもいっしょだし、しかたないよね」

 と思ってしまう。

 しかし今回は、子離れできない両親のことを気づかっている余裕はない。

 なぜなら真衣子は、優子の命令で水曜日からお尻に栓をしていて、そのお腹の中には外部からでも下腹部の膨らみが認識できるほどに、たっぷりと具が詰まっているからだ。

 こんな状態で遊園地にいき、両親孝行できるわけがない。それにせっかく遊園地にいくのだから、大好きな恋人(といっても実の姉だが)と楽しい時間を過ごしたいと思うのは、恋する乙女なら当然のことだろう。

 なので真衣子は、お尻の栓をとってくれるように優子にお願いしたのだが…。

「真衣子? 真衣子はお仕置き中なのよ? そのお尻の栓は、お姉ちゃんがイッちゃダメっていったのに、真衣子が勝手にイッちゃったお仕置きなの」

「だ、だってぇ…お姉ちゃんのエッチ、気持ちよすぎるんだもの…」

「それをがまんするのが、あの日のエッチだったでしょ?」

「う、うん…ごめんなさい…」

 たしかに水曜日のエッチは、「がまんプレイ」だった。優子がイッてもいいというまでイかないと、真衣子も優子に約束した。

 しかし真衣子は、ものの五分もがまんできず、それで約束を破ったお仕置きとして、お尻にアナルストッパーで栓をされてしまったのだ。

「お姉ちゃんがいいっていうまで、お尻の栓ぬいちゃダメよ?」

 自分のお尻に栓をしてそういった優子に、真衣子は「はい…わかりました」と答えた。

 優子につけてもらった、アナルストッパーの感触。そのとき真衣子は、

「あたし…お姉ちゃんにお仕置きされて、お尻に栓してるんだぁ」

 思うと、ゾクゾクして、キュンとして、正直な気持ち嬉しかった。

 愛する姉からのお仕置き。自分は姉に支配されている、所有されている。それはまさに、「自分も姉に愛されていること」にほかならない。

 愛されていると感じることができるのは嬉しい。だが、お腹に具が溜まり続けるにしたがって、真衣子はジクジクした下腹部の痛みと、具を吐き出したいという生理的欲求が肥大して、ついには「こんなお腹じゃ、遊園地にいっても楽しめない」と思い、優子にお尻の栓を抜いてもらえるように頼んだのだが、それは無意味なものとなってしまったようだ。

「真衣子。今日はもう寝なさい」

「えっ? だ、だってまだ…」

 今日はまだ、なにもしてもらっていない。少し遊んでもらっただけで、日課になっている「オナニーショー」も優子にみせていない。

 しかし真衣子は、愛する優子の言葉に逆らうことはできなかった。

「…おやすみなさい、お姉ちゃん」

 そういって、優子の部屋を後にした。

 

 翌朝。外はまさに快晴。絶好の遊園地にお出かけ日和(ってなに?)だ。

 だが真衣子のお腹は、今日の天気のようにはいかない。ジクジクと痛み、パンパンにはっている。そのせいか、昨夜はあまり眠れなかった。

 夜中に何度も目が覚め、真衣子は浅い眠りを繰り返しただけで、朝を迎えてしまっていた。

(本当に、もうがまんできないよぉ…)

 もう一度優子にお願いしてみよう。優子は優しいから、きっとお尻の栓をとっていいと、トイレにいっていいといってくれるはずだ。

 ベッドをおり着替えを終えた真衣子は、優子の部屋に向かった。

 しかし、

「わがままな真衣子って、お姉ちゃんは嫌いだわ」

 真衣子のお願いに返ってきたのは、優子のそんな突き放すような口調と言葉だった。

(そ、そんな…ど、どうしようっ! お姉ちゃんに捨てられるっ)

 真衣子にとって、優子は「全て」といっていい。優子を愛し、そして愛されることが、真衣子の「全て」なのだ。

 真衣子は優子にすがりつき、

「ご、ごめんなさいお姉ちゃんっ! あたし、いうとおりにするからっ。お姉ちゃんのいうとおりにするからっ」

 涙を流して告げる真衣子に、

「じゃあ…浣腸しましょうか?」

 優子はいった。

「えっ? そ、そんなのしなくても、ちゃんと出るよ?」

「違うわよ。浣腸して、遊園地いきましょう? っていってるの」

 真衣子は、意味がわかなかった。

「な、なにいってるの? お姉ちゃんっ」

 優子は真衣子の疑問を無視して、

「ほら、お姉ちゃんが浣腸してあげるから、パンツ脱いでお尻だしなさい」

 いいながら、勉強机の引出から、なぜそんな物が勉強机の引出に入っているのか謎だが、三本のイチジク浣腸を取り出した。

「早くしなさい」

 戸惑う真衣子。しかし真衣子は、優子のいう通りにパンツを脱いで、小さなお尻を優子に向ける。

 外に出ている部分はわずかだが、真衣子の肛門の奥に埋まっている、勃起した成人男性の亀頭ほどの大きさがあるアナルストッパーが露わになった。

「いい? 真衣子。お尻の栓抜くけど、うんちしちゃダメよ」

「…はい」

 返事を確認するやいなや、優子はアナルストッパーを、

 ギュポンッ

 と引き抜く。

 真衣子は飛び出しそうになる具を肛門に力を入れて堪え、三度に渡って直腸に注入された浣腸液の冷たさに耐えた。

 再び真衣子のアナルにつけられる栓。

 と、

「ユウちゃん、マイちゃん。二人とも、朝ごはんよぉ〜」

 母の声が聞こえた。

「朝ごはんだって…さ、いきましょう? 真衣子」

 ポンッ

 優子は真衣子のお尻を叩き、さっさと部屋を出ていってしまった。真衣子は泣きたいのをがまんして、パンツを上げて定位置に戻すと、優子を追うようにダイニングへ向かった。

 そして真衣子は母が用意してくれた朝食を、食欲はなかったし、これ以上お腹の具を増やしたくもなかったが、それでも誰にも心配をかけたくなかったので、詰め込むようにして全て胃の中に納めた。

 

 休日の遊園地。とうぜん人は多くにぎわっている。しかし真衣子の顔色はすぐれない。

「どうしたの? マイちゃん」

 心配そうにいう母に、

「な、なんでもないよ」

 真衣子は返した。

 まさか、

「お姉ちゃんに浣腸されていて、お腹の中ギュルギュルなの」

 とはいえない。

「真衣子、遊園地にくるのが楽しみで、昨日の夜よく眠れなかったのよね?」

 優子が、なんでないような顔でフォローをいれた。それに、昨夜よく眠れなかったのは事実だ。真衣子はそのフォローにしたがって、

「そ、そうなのお母さん。でも、だいじょうぶだから」

 無理やりにだったが微笑んだ。

 疑うことを知らない…というか、単純な母はそれで納得したようだ。

「さ、いこ? 真衣子」

 優子が真衣子の手を取る。こんな状況でも、真衣子は優子と手を繋げることが嬉しかった。

 誰がみても姉妹。そして事実、姉妹だ。

 だが、他人からは仲のよさそうな姉妹としてみられているのだろうが、真衣子にとって優子は姉である以上に恋人で、愛する人である。

 真衣子にとってこれは「家族の休日」ではなく、「恋人とのデート」…だと思いたいし、やはりこうして手を繋いでいると、「デート」だと感じてしまう。

 恋人とのデートが嬉しくない女の子なんていない。真衣子も例外ではない。

「うん、お姉ちゃんっ」

 ぐるぎゅるるっ

 お腹が鳴ったが、浮かれ気分の真衣子には聞こえていなかった。腹部に汁気たっぷりになった具が詰まった苦しさも、この瞬間に吹き飛んでいた。

(すきっ! お姉ちゃんだいすきっ)

 真衣子は優子に手を引かれて、「コーヒーカップ」の乗り場に向かった。

 

(うぅ〜…き、気持ち悪いよぉ…)

 「コーヒーカップ」で身体ごとシェイクされた真衣子は、まぁ当然だが気分が悪くなってしまった。

 ガクガクと震える膝。遊具から降りるときも、優子に支えてもらわなければ歩くこともできない状態だった。

 下腹部もそうなのだが、胃の中にも圧迫感を覚える。朝食が、全く消化されていないように感じた。

「じゃあ…次にいきましょう」

 優子の提案にも、

(し、死んじゃうよぉ…)

 としか思えない真衣子。

 そんな娘たちに、両親はベンチに腰を下ろして笑顔を向けている。優子が手を振ると、両親も手を振った。

 だが真衣子には、両親に顔を向ける余裕もない。

 ギュルグルグルッ

 出口を塞がれた具が、お腹の中で暴れる。真衣子の身体からスッと血の気が引き、油断すると倒れてしまいそうだ。

 排泄欲求だけでなく、嘔吐欲求までもが真衣子を苦しめる。額に滲む脂汗。頭がクラクラした。身体が凝縮して、自分がすごく小さくなってしまったかのように思えた。

 それでも優子は真衣子を遊具に乗せ、真衣子はそれに従った。従うしかなかった。

 優子を怒らせたくない。優子に嫌われたくない、捨てられたくない。

(あたしは、お姉ちゃんがすき。愛してるの…)

 真衣子は心の中で何度も「だいすき、愛してる」と優子に告げ、優子との「デート」を楽しもうとした。

 

「ちょっと休憩にしましょうか?」

 五つの遊具に立て続けに乗った二人は、優子の提案で休憩することにした。

 顔を真っ青にして、色の失せた唇を痙攣させている真衣子を、優子が誘うようにベンチに座らせる。

「じゃあ、お姉ちゃん。冷たい物でも買ってくるわね。いい? ちゃんとここでまってるのよ?」

 いい残し、立ち去る優子。

 優子が離れた。チャンスだ。今のうちにトイレに…。

 思ったが真衣子は、

『ちゃんとここでまってるのよ?』

 優子のいいつけを破ることはできなかった。

(もしここでお姉ちゃんのいいつけを守らなかったら、本当に怒らしてしまうかもしれない、嫌われるかもしれない、捨てられるかもしれない)

 そんなのは耐えられない。大好きな優子。愛している。

 この世界でただ一人、自分よりも大切な存在。それが真衣子にとっての優子だ。

 自分は優子に愛するため、優子に愛されるために生まれてきたのだから、優子に嫌われたら生きてはいられない。

 真衣子は下腹部の絶叫に耳を塞ぎ、震える膝をしっかりと手で押さえ、優子が帰ってくるのをまった。

(…こ、これが、お姉ちゃんの愛なの。この苦しみが、お姉ちゃんがあたしを愛してくれている証拠なの)

 と、そう自分にいい聞かせながら。

 ビクッ! ビクビクッ

 お腹で暴れる汁気たっぷりの具も、胃をムカムカさせている内容物も、そしてそれらが与える苦しみも、すべて優子が自分に与えてくれた愛。

(がまん…しなくちゃ)

 優子は真衣子が「がまん」することを望んでいる。これは、「そういう」愛しかたなのだ。

 だがら真衣子は、優子が望んでいる通り、「がまん」する。それが優子の愛に応える唯一の方法。

(愛してる…あいしてる…アイシテル、オネエチャン)

 ギュッと瞼を閉じ、愛する優子の微笑みを脳裏に描き、真衣子は下腹部と胃の中を打つ波を、懸命に堪えた。

 

 約五分ほど、真衣子がベンチに腰掛け、直腸で暴れる中身と戦っていると、

「ソフトクリーム買ってきたわよ」

 優子が両手に一つづつソフトクリームをもって戻ってきた。

「はい、真衣子」

 片方を真衣子に手渡すと優子は、真衣子の隣に座ってソフトクリームを舐め始める。しかし、ソフトクリームをもったままプルプル震えているだけの真衣子をみて、

「どうしたの? 食べなさいよ。お姉ちゃんが買ってあげたソフトクリームは、食べられないっていうの?」

 完全に確信犯なイジワルな顔で、優子はいった。

 しかし真衣子は、これ以上優子を怒らすわけにはいかないと、ソフトクリームに口をつける。

 真衣子は舌の上に拡がる甘味に、吐き気を覚えた。

(…うっ、気持ち悪い…)

 栓をしているにも関わらず、今にも噴きだしたしまいそうなお腹の具。ザワザワと身体を犯す悪寒。真衣子のむき出しの腕には鳥肌がたち、顔面は蒼白になっている。

(ほんとうに…もう…)

 優子にお願いしよう、謝ろう。これ以上はがまんできないと、許してくださいと。

(ゆるしてくれる…お姉ちゃんは、きっと許してくれる。あたし、こんなにもがまんしたんだもの…)

 真衣子がそう決断して口を開こうとした瞬間。

 ビクビクビクッ!

 胃が、これ以上ないというくらい激しく波打った。

 真衣子はもっていたソフトクリームを落とし、両手で口を押さえる。

 が、

「ウッ!」

 咽を逆流してきた嘔吐物が口腔内を満たし、

「グゲエェーッ!」

 口を押さえた両手を無意味なものだとでもいうように、外に飛び出した。

 ビチャッ! ビチャビチャビチャッ

 真衣子のスカートの上にドロリとした嘔吐物が落下し、それだけで収まらず、スカートから零れて地面に拡がる。

 ほとんど消化されていない朝食。もとがなにであったのかもわかる。

「ウッ…ウゲエェッ! ゲブッ…ゲボゴボッ」

 目を見張る量で噴出する嘔吐物。

「ま、真衣子ッ!」

 優子はやっと、自分がやり過ぎたことを悟った。

 が、もう遅い。

 苦しげな顔で嘔吐を続ける真衣子。真衣子の両手、指の隙間からは、止まることなく嘔吐物が溢れてきていた。

「ゲッ! ゲフウゥッ…ゲッ、ウゲェッ」

 饐えた臭いが辺りに充満する。真衣子の全面は嘔吐物に染まり、もう取り返しのつかないほどにドロドロだ。

 大勢の人が自分たちを、いや、遊園地という「楽しい場所」で「不愉快な嘔吐」をしている真衣子を、「不愉快な顔」でみている。

 こんなことをするつもりはなかった。真衣子をさらし者にするつもりなど、優子には全くなかった。

 ただ、真衣子がかわいいから、ちょっとイジメてみたかっただけ。イジメて、困った真衣子の顔がみたかっただけ。

 笑っている顔も、気持ちよさそうな顔もかわいい。でも、困った顔もかわいいから。

 優子は、かわいい真衣子をみたかっただけなのだ。

 かわいい真衣子。ステキな真衣子。そんな真衣子の「全部」をみたかっただけ。

 なのに優子は、やり過ぎてしまった。調子に乗っていたといっていいだろう。

 優子は慌てて、真衣子を自分の身体で包み込むようにして隠した。

「…ご、ゲホゲホッ! ごめん…ケフッ、な、なさい」

 咽せながら、涙声で謝る真衣子。しかし真衣子の意識は混濁し、明確な思考を形作ることは不可能になっていた。

 

 気がついたとき真衣子は、自分がトイレの個室にいるようだと思った。はっきりとそうだと認識できたわけではないが。

「もう大丈夫よ、真衣子」

 優子の声。

(お姉ちゃんがそばにいる)

 そう思うと、ずごく安心した。

(あぁ…だいすき、お姉ちゃん)

 真衣子は認識していなかったが、彼女は優子に支えられ、トイレに連れてこられたのだ。優子は真衣子を洋式の便座に座らせ、真っ青な顔を呆然とさせている真衣子のショーツを足首まで下ろし、

「ごめんね、ごめんね…真衣子」

 涙声でいった。

(なんで、お姉ちゃん謝ってるんだろう…?)

 思い真衣子は、小さく首を横に振る。

 優子は、

「ごめんね」

 もう一度いい、真衣子のお尻の栓を、

 ブポンッ

 と引き抜いた。

 その瞬間。

 ブビジュチャッ! ブビブビブビビビーッ

 便器にぶちまけられる半液体化した具。ドロリと、便器いっぱいに降り積もる。

(気持ちいい…)

 真衣子は自分が数日ぶりに排泄していることはわかっていなかったが、それでも、

 ビチャ! ビチュビチャッ ブビビッ ブスッ

(あぁ…なんだか、すっごく気持ちいい)

 きっと優子が、自分を愛してくれているんだ。大好きな優子が、自分を気持ちよくしてくれているんだ。

 そうに違いない。

 こんなに気持ちいいこと、優子にしかできない。自分は優子の愛でしか、こんなにも気持ちいいなんて感じるはずがない。

(ステキ…お姉ちゃん、なんてステキなのかしら)

 やはり優子は、自分を愛してくれている。当然自分も、優子を愛している。

 姉妹。

 結婚はできないけど、そんなことはどうだっていい。ずっと優子の側にいることができるのなら、それでいい。

「あ…あいしてるよ、おねえ…ちゃん」

 口元を嘔吐物で汚し、開ききった肛門から具なのか腸液なのか判別がつかない汚物を垂れ流しながら、それでも真衣子は微笑みながらいった。

「うん…お姉ちゃんもよ、真衣子」

 優子は真衣子の頬に両手をそえ、いまだ色を取り戻していない汚れた唇を、自らのそれで塞いだ。

 酸っぱく舌を刺激する真衣子の味が、優子はなによりも美味しく、そして真衣子を妹としてではなく、世界一大切な恋人として愛おしいと感じていた。

(愛しているわ…真衣子)

(愛してる…お姉ちゃん)

 少なくともこの瞬間。「恋人たち」の「想い」は、「ひとつ」に重なっていた。

 


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