夢乃園ポエ夢 詩集・T

 

 

     『限りなく虹に近い場所』

 

 虹の生まれる場所には『見つけるべき物』が埋まっているのだと、あの人は言った。

 その時あたしは、多分呆れた顔であの人を見ていたのだと思うけど、実はよく憶えていない。

 あの頃のあたしは嫌な人間だった。

 他人を(特に愚かしい大人を)見下す事で、他人に打解ける事ができない自分を、本当は自分が見下している人間から見下されている自分を見えないようにしていた。

 薄っぺらな借物の論理で武装して、この世には科学で説明できない事象は存在せず、今は解らない事でも未来には必ず解明されると思っていた。

 そう、人の想いも0と1の羅列に置き換える事ができるとさえ、あたしは思い込もうとしていた。

 だからあたしは、嫌な奴であり、とても愚かな人間だった。

 でも、あたしは変わった。

 あの人と出会って、変わらずにはいられなかった。それは緩やかで急速な変化だった。

 あの人が死んで、あたしはその自分の変化に初めて気づいた。

 白すぎる硬く脆い塊にあの人が変わり、あの人があの人では無くなってしまったと認識した時、あたしはあたしが記憶する限りの内で初めて泣いた。

 自分が泣いているのだと解った時、あたしは既に変わっていたいたあたしを認識した。

 その瞬間、今のあたしは生まれた。

 認識(定義)する事で存在は確定する。

 だから、認識(定義)できない物は存在しない。

 でも、生きているとはどういう定義なのだろう? なぜ生きていると認識されているのだろう?

 では死は? 死んでいるとはなに?

 あの人は本当に死んだの?

 あたしは、本当に生きているの?

 でも…そんな事は、もうどうでもいい。これであたしは、あの人との約束を守れるのだから…。

 この白い錠剤が、あたしをあの人の元へ連れていってくれるのだから…。

 

     『D・005』

 

「泣きたいとき泣けないということは、辛いことだね」

 少年の言葉に、少女は無言をもって答えた。

「でも、それがキミに与えられた『罰』なんだよ。キミは『罪』を犯した。だから、『罰』をうけなければならない」

 少女の無言が、流れ続ける『時間』を埋めようとする。それが、不可能なことだと理解しながらも。

 『時間』は『絶対』の存在である以上、何者の干渉も受け付けない。

 それでも少女は…。

「終わりのない世界を創りたかったの…」

「そんなモノ誰も必要としていないのに? そう…誰も必要としていない、キミも…だろ?」

 小さな肯きでの肯定。

「それでも…あたしは…」

「『必要のない』モノを与えたかったんだね? 矛盾で満たされた世界に、『矛盾』を与えたかったんだね?」

「傲慢なのはわかっていたわ」

「傲慢? それは違う。キミに傲慢を創ることはできない。そんな『力』はないよ。あまり自分を過大評価しないほうがいい。キミは無力で無知でなにもできない存在なんだよ。それを理解できなかったことが、キミの無力を証明している」

「…そうね…何故そんな単純なことがわからなかったのしら」

「それは、キミが『取るに足らない存在』だからさ」

 少年の言葉は、少女の全てを否定した。

 

     『S・001』

 

 空は何故青いのだろう?

 決まっている…青くいたいからだ。空は、青が『好き』なんだろう。

 でも、ボクは青が嫌いだ。

 青は絶望の色だから。

 『あの日』の色。何処までも高い空の青。

 吐き気がする…。

 

     『R・011』

 

 恐怖に引きつった少女の顔。

 ボクはなにも感じない。だって、これはモノだから。ビニールに入れられ、ゴミとして捨てられるモノとなにも変わらない。

 だから壊す。

 嫌いだから。

 首筋にナイフを突き刺し、横に引いた。

 赤い色が吹き出した。

 同じだ。これも、これまでのモノと同じだ。ほら、もう動かない。モノだ。

 腹を裂いて、内容物を確認する。同じ。これまでとまったく変わりない。下らない、『取るに足らない存在』。

 どうしてこんなモノを綺麗だとか可愛いだとか感じることができるのか、ボクには理解できない。

 グチュグチュしていて、なにも綺麗じゃない。

 でも、ナイフを突き刺す感覚は少し面白い。それだけ。

 それだけの価値しかない。

 いてもいなくても、どうでもいい。

 あぁ…お腹空いたな。帰ってなにか食べよう…。

 

     『TRUE』

 

 彼女の脇を早足で追い抜いた中年のサラリーマンが、当たり前のように煙草の吸い殻を道端に捨てて歩き去って行った。

 吸い殻の落ちた先には、駐輪禁止と書かれたプレートのすぐ脇に止められた自転車があり、その籠には何故か食べかけのハンバーガーがむき出しで放り込まれている。

 彼女はその光景を、何の感慨もなしに取り込むと、記憶を焼き付ける場所を素通りさせて、捨てた。

 これは当然の、そう当然の街の様相であり、素顔だ。だから気にする必要はない、気にするだけ無駄だ。

 大人に刷り込まれた『倫理』とは、『嘘』であり『偽物』だ。彼女はそれを知っていた。だから気にしない、気にしていないことさえ気にしない。

 今日もこうして彼女の一日は始まったし、そして、多分何もなく終わる。

 少し冷たい十一月の風が、秋の香りを纏って流れ去った。

 

     『FALSE』

 

「あなたがすきです」

 

     『焔(えん)』

 

 憐れみをもらった それはとても甘い苺の味

 泣きたいけれど 笑った

 それが決まりだから

 アカネノバショデ キミハキオクヲケシテ タブンムゴン

 カスミソウヲササゲテ ハタサレナイヤクソク

 アカハトテモキレイ

 

     『紫煙』

 

 煙草は好き。

 イヤなことを忘れさせてくれるから。

 父も母も他人も現実も全て。

 

 逃げるのは好き。

 楽だから。なにも考える必要がないから。

 夢も希望も全て。

 

 好きは嫌い。

 だって、泣けないもの…。

 

     『ギモン』

 

 なぜ『命』を殺しちゃいけないの?

「それによって、悲しむモノが存在するからだよ」

 『命』はなぜ存在しているの?

「幸せになるためにさ」

 『命』のない存在は幸せになる必要がないの?

「存在は、それがなんであれ『命』をもっているんだよ」

 存在ってなに?

「定義されているモノさ」

 人間は定義されているの?

「まさか。人間は定義されていないよ。だから殺してもいいんだよ」

 ふーん…そうなんだ。

 

     『コタエ』

 

 真実とは『毒』である。

 取り込んでしまうと死んでしまう。

 だからこの世界は死に向かっている。

 ここは真実で満たされているのだから。

 

     『天使』

 

 言葉は、存在を定義するのに最も適していると思われているらしいが、それは違う。

 言葉はただ、『そこに在るモノを単純化している』だけでしかない。『理解したと思い込むという集合』にむりやり押し込んでいるだけだ。

 だが、言葉でしか伝わらないこともある。

 間違っていることを言葉として伝達され、それは間違っているのだと感じることができるのも、言葉が存在するからである。

 人を殺してもいい。他人を裏切るのは心が満たされる。約束は破るためにある。

 これらは全て間違っている。

 理解できるだろう?

 しかし…間違っていると『誰』が決めたのだろう?

 本当は間違っていないのかもしれない。

 間違っていると感じているほうが、なんとなく『すんなり』と生きていけるから、そう思っているのだろうか?

 この『扉』のさきには、そんな『くだらない疑問』の答えが全て用意されている。

 『扉』の名は…『死』という。

 

     『屑(くず)』

 

 どうして、『死』が『永遠』の始まりだと勘違いしているの?

 

     『すききらい』

 

 硝子。綺麗。蜜柑。嫌い。声。美味しい。ホント。ホント?

 好きな人。怖い。痛いこと。気持ちいい。あなた。いない。ホント。ホント?

 あの内蔵を引きずりながら、黒いモノを吐き出しているヒトは、なんでも知っているよ。

 ウソじゃないよ。ホントだよ。

 訊いてみればいいよ。

「あたしのこと好きですか?」って。

 

     『伝説』

 

 西に魔王がいる。東に聖者がいる。北に魔女がいる。南に竜がすんでいる。

 天には神が。地には悪魔が。

 そして、物語にはキミがいる。

 

     『卒業』

 

「朝倉さんは、僕のことを『なんでもできる人』だなんていったけど、それは間違いだよ。『なんでもできる人』なんて、それはもう人じゃないんだ。だって人は、『完全』じゃないから人なんだから」

 彼がなにをいいたいのか、あたしにはわからなかった。

 卒業式が終わり、あたしたちは中学生と呼ばれていた時間を失った。振り返るとそれは、『水の中のガラス』のような時間だったと感じる。

 彼はなにか言葉を続けようとしたけれど、なにも形にしなかった。

 ただ、凄く悲しそうな、これまであたしが見たことも、彼が見せてくれたこともないような顔をして…。

 時間が止まったように、あたしたちはお互いを見つめ合った。

 ずっと、あなたが『好き』でした。

 いえなかったけど、今もいえないけど、『好き』でした。そして、この瞬間も、あなたが『好き』です。

 あたしは、彼を見つめていた。

 あたしの想い、届きましたか?

 彼は、あたしを見つめていた。

 そして…

「さよなら…朝倉さん」

 戸惑い。

 彼の「さよなら」という言葉を、あたしは初めてきいた。

 彼はいつも、別れ際には「じゃあ、またね」といって、あたしに『また会える』までの時間の長さと、それを待つ苦しみの始まりを告げていたから。

「…うん…またね」

 あたしはいった。いつもように。再び会える瞬間までの苦しみの始まりを求めて。

 だけど…

「…さよなら」

 彼は小さく、でもはっきりと、再びその言葉を紡いだ。

 桜の花びらが舞っている。

 …よかった。泣き顔、はっきり見られなかったよね。

 あなたには、泣いている顔なんて見せたくないの。『弱い』と思われたくないの。

 桜…綺麗ね…。

 またね。また会おうね。

 声にならない約束を誓いながら、あたしは泣いた。

 桜の花びらが舞っている。

 彼の背中は、もう見えない…。

 

     『れもん』

 

 強いから負けない。

 負けないから泣かない。

 泣かないから泣けない。

 泣けないから弱い。

 だから〈彼女〉は、強いから弱い。

 

     『S・003』

 

 毎日まいにち、同じ事の繰り返し。単純で、退屈な毎日。

 でもあたしは、そんな取るに足らない毎日が好き。

 だから、あたしからそんな毎日を奪うヤツは許さない。

 

     『恋愛感情』

 

 〈恋〉なんて、どこにでも転がっている取るに足らないモノ。唐突に始まり、始まったように唐突に終わる。

 縛られるなんてまっぴらさ。

 終わったのなら、また捜せばいい。

 〈恋〉だけは特別だって、そんな妄執に囚われたくない。

 それは『子供』の勘違いだ。

 そういう意味で、オレは『大人』だぜ?

 振られたからって、誰かのモノになるくらいならって、そいつ殺したりしないからな。

 

     『金田一最高ッ!』

 

 謎はすべてとけたッ! っぽい気がしないでもないけど、なんか犯人自白してるし、まぁこれでいいや。

「すごいわッ! はじめちゃん」

 みゆきうっとり。

「またしてやられましたね。金田一くん」

 あけち脱帽。

 読者。

「なんか、誤魔化された気がする…」

 

     『幻影』

 

 カナシイってなんだろう?

 タノシイってなんだろう?

 ナミダ? エガオ?

 なに? それ。

 教えてよ。

 全部。

 ぼくとあの子が知らないこと全部教えて。

 〈まま〉がね。ぼくたちは、そんなこと知らなくていいっていうんだ。

 〈まま〉のことは好きだよ。だって、ぼくたちを造ってくれた〈ひと〉だから。

 ぼくたちはね。〈まま〉の嫌いな〈ひと〉を殺していればいいんだって。

 それだけでいいんだって。

 でもね。ぼくは知りたいんだ。

 〈まま〉が教えてくれないこと全部。

 どうしてぼくたちは、〈ひと〉を殺さなくちゃいけないの?

 血が赤いんだ。グサッてするのイヤなんだ。グチュッてするのイヤなんだ。

 ホントは、〈ひと〉を殺すのイヤなんだ。

 ねぇ、教えてよ。

 どうしてぼくたちは〈ひと〉じゃないの?

 どうして知らなくてもいいことがあるの?

 誰も教えてくれないんだ。

 〈まま〉以外の誰も、ぼくたちの『声』をきいてくれないんだ。

 どうして?

 ぼくたちが〈ひと〉じゃないから?

 ぼくたちが〈ひと殺し〉だから?

 教えてよ。

 全部。

 ぼくたちが知らないこと…全部。

 

     『証し』

 

 海の真ん中にいるような気分。

 どこにもたどり着けない。

 手を伸ばしても、そこにはなにもない。

 絶望だけが、少しだけ見えたような気がする。

 

     『1989』

 

 陽光が降り注ぎ、緑の香りが心地いい。

 どこかで蝉が鳴いている。

 水の流れる音が聞こえる。

 どうしてこんなに安心するんだろう? なにもかも、どうでもよくなってくる。

 上手くいかないことなんか忘れて、眠りたくなる。

 ずっとこのまま、ここにいたい。

 でも、水は流れている。蝉はいつか死んでしまう。

 季節は移ろい、みんな『大人』になってしまう。

 そして忘れてしまうんだろう。

 そう…いつか。

 忘れていたことも忘れてしまって、なくなってしまうんだろう。

 この瞬間も、これまで積み重ねてきた思いも、あの子を好きだったことも、全部忘れてしまうんだろう。

 微睡みの中で、ちょっとだけそんなことを考えた。

 

     『理解』

 

 初めてセックスした。でも、なにも変わらなかった。

 煙草を吸っても、ビールを飲んでも、なにも変わらなかった。

 ボクは十三歳の、なんの力もないただのガキだ。

 それ以上でも、それ以下でもない。

 でも、ボクとセックスしたクラスメイトの女の子は、なんだか少し変わった。彼女とボクは、いったいどこが違うんだろう。

 ボクは、〈そういう人間〉なんだろうか。

 なにをしても、なにを感じても、変われない人間なんだろうか。

 そういうのは、なんだかイヤだ。

 ボクは変わりたい。もっとボクを好きになりたい。

 自分を嫌いなことは、悲しいことだから。

 

     『雨』

 

 雨が降ると、あの人を思い出す。

 優しくて、温かくて、私を『好き』だといってくれたあの人。

 でも、あの人はもういない。

 私は、少しずつあの人のことを忘れていく。

 雨が降っている。

 あの人を思い出す。

 約束を破ってごめんなさい。

 私は、泣いています…。

 

     『救い』

 

 こいつの顔を見ると、俺は凄くむかつく。

 こいつの声をきくと、俺は逃げ出したくなる。

 こいつがいると、俺は自分が生きているということを思い知らされる。

 だから、ずっと俺の側にいてくれ。

 俺が、死にたくならないように。

 

     『祈り』

 

 あの子が白く脆い固まりになって、小さな箱を居場所に選ばされた日。空は青くどこまでも続いていた。

 でもあの日から僕の世界は、あの子が笑っている写真と同じでモノクロのままだ。

 どうして僕は、こんなにも『取るに足らない存在』なんだろう。

 僕は子供で、でもあの子はもっと子供だった。

 大切だった。

 妹のように想っていた。

 だけど僕は、なにもしてあげられなかった。

 そして今も、僕はなにもしてあげられない。

 ただその『魂』が、安良かであってほしいと祈ることしか…。

 

     『友達』

 

「好きです」

 二人きりの教室で、友達だと思っていた女の子にいわれた。

 彼女がボクの言葉を待っているのは理解できたけど、ボクはなにをいっていいのかわからなかった。

「ずっと、好きでした」

 ボクの沈黙に、彼女がもう一度いった。

 でもボクは、本当になにをいっていいのかわからずに、沈黙を通した。

 その状況でも、ボクにとって彼女は友達で、それ以上の存在とは思えなかった。彼女が嫌いなわけでは、もちろんなかった。どちらかといえば好きだった。

 でも、彼女の『好き』と、ボクの好きはまったく違っていて、彼女の『好き』を受け入れることはできなかった。

 だからボクは、「ごめん」とだけ応えた。

 彼女はなぜか、「ありがとう」といった。

 彼女とは、その日から話をしていない。

 もうすぐボクたちは卒業で、ボクと彼女は違う高校に通うことになっている。

 ボクは今でも、彼女が告げた「ありがとう」の意味が理解できない。

 

     『声』

 

 彼女の声が好き。

 綺麗だと思う。

 国語の授業で、彼女が朗読をしている時なんか、凄く真剣に聞き惚れてしまう。

 同じ女なのに、どうして彼女の声はあたしとはあんなにも違うんだろう。

 友達になりたいと思う。

 あの綺麗な声で、あたしの名前を呼んでほしい。

 でも、そんなのむり。

 だって、彼女は『天使』だもの。

 そう…彼女は『天使』。

 だから、彼女には優しくできない。あたしは『天使』になりたくない。

 『天使』は生け贄。

 あたしたちは、いじめられている子を『天使』と呼んでいる。

 あたしたちとは違う、『特別な存在』だから。

 ホントは違うのに。

 彼女は普通の子なのに。

 だけど、みんな彼女のことを『天使』と呼んでいる。『天使』に相応しい待遇でもてなしている。

 教科書を隠したり、ノートに落書きしたり、机に花を生けた花瓶を置いたり、お弁当を捨てたり、体操着を切り裂いたり…。

 なのに彼女の声はとても綺麗。

 少し泣きたくなる。

 あたしは『天使』になりたくない。

 でも、彼女と友達になりたい。

 綺麗な声を、あたしだけに聴かせてほしい。

 ねぇ。本当に〈天使〉がいるのなら、あたしに勇気をちょうだい。

 『天使』を〈天使〉にしてあげたいの。

 ほんの少しの勇気でいいの。

 彼女と友達になるのに必要な、ほんの少しの勇気をください。

 そう祈りながら、あたしは彼女の口にゴキブリをはさんだパンをねじ込んだ。みんな笑っている。

 あたしも笑うしかない。

 彼女は泣いている。

 綺麗な涙で泣いている。

 あたしは、なにかどうしようもなく苦しくて、大声を出したくなった。

 でも、泣いている彼女を眺めながら、みんなと一緒に笑った。

 

 そして次の日から、彼女は学校に来なくなった。

 自殺して、本物の〈天使〉になったから…。

 

     『フリーダム』

 

 この鎖は束縛の証じゃない。

 彼が僕を〈愛して〉いる証だ。

 そして僕も、彼を〈愛して〉いる。

 この暗く、でも輝いた部屋で、僕は彼の帰りを待つ。愛されることを待つ。

 彼と、〈一つ〉になる瞬間を待つ。

 それが、僕の自由。

 

     『魔王』

 

 聖女マリア。

 深緑の長い髪。紅い瞳。白い肌。汚れなき、絶対の存在。

 殺せ…ころせ…コロセッ!

 世界が彼女に染まる前に。

 我が魔王たる間に。

 聖女が、〈ヒト〉を破滅と導く前にッ!

 

     『懺悔』

 

 あたしはわるいこです。

 ごめんなさい。ごめんさない。ごめんなさい。

 …でも。

 うぅん…あたしがわるいんです。

 ぜんぶ、あたしがわるいんです。

 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 だからたたかないでください。かみをひっぱらないでください。しねっていわないでください。

 ごめんなさい。

 あやまります。

 ごめんなさい。

 

 でもあたしはね。

 わるいこだけど、ほんとはわるいことしたくないの。

 ゆるしてください。

 あたしにわるいことさせないでください。

 ごめんなさい。

 あたしは、いいこでいたいんです。

 だからまま。

 どこかにいってください。

 あたしのまえからきえてください。

 それがだめなら、しんでください。

 このじゅーすをのんでしんでください。

 くるしんで、ちをはいて、いたいいたいしてしねるくすりをつくりました。

 ままには、あたしにわるいことをさせるままには、とてもおにあいのくすりだとおもいます。

 あたしはね。まま。

 ままいがいのひと、みんなすきなんです。

 だから、ままいがいのひとをころしたくないんです。

 どうしてわかってくれないんですか?

 どうしてあたしに、わるいことをめいれいするのですか?

 どうしてあたしに…。

 

 だからごめんなさい。

 これがさいごのわるいことです。

 まま。

 じゅーすおいしいですか?

 あとにじかんで、ままはくるしんで、ちをはいて、いたいいたいするんですよ。

 よかったですね。

 ごめんなさい。これまであたしがころしたひとたち。

 あたしがつくった、びりゅうしさいきんがすをすってしんでしまったひとたち。

 もうすぐままはしにます。

 たからあたしは、わるいことをにどとしません。

 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 あたしは、いいこになります。

 ななさいになったら、ちゃんとしょうがっこうにもかよいます。

 けんきゅうじょはやめます。

 さつじんへいきのかいはつしりょうは、ぜんぶはきします。

 だいじょうぶです。あたしいがいには、りーくべくとるへいめんりろんはりかいできません。

 だれも、あたしのけんきゅうをひきつぐことはできません。

 だからだいじょうぶです。

 あたしは、いいこになります。

 いいこになって、みんなのやくにたつけんきゅうをします。

 いろんなものをつくります。

 しあわせに。

 みんな、しあわせにわらってくらせるように。

 それでゆるしてくれませんか?

 だめらなら、なんかいでもあやまります。

 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 

     『空青く、草原に風』

 

 ここが世界の果て。

 わたしが望んだ世界の果て。

 誰もいない。

 わたし以外の誰も、ここに立ち入ることはできない。

 溜息をつく。

 安心する。

 背中の翼が、優しい風に揺れる。

 

 明日の〈現実〉を忘れて、わたしは『夢』を紡いでいる。

 

     『ごあいさつ』

 

 ポエ夢っす。

 いつも『ヒトはどこから来て、どこに行くのか』とか考えてます。ウソです。ホントはなにも考えてません。

 あと、コーヒーが好きです。

 …そのくらいです。

 では、このへんでさようなら。

 


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