アイ ― love ―

 

 

     『しろい花』

 

 遠くから鉄の呻き声が響いてくる。

 夕焼け色に染まる少女は耳をすませ、真っ直ぐに立って、飛び立つ緑葉を見送った。

 

 なにかを、間違ったのかもしれない。

 

 

     『センティスタ』

 

 夏の陽光に包まれる校舎。

 まるで幻憐華のように眩しく、まるで泣き虫なおんなの子のように哀しい。

 夏花を一輪さしあげましょう。

 それは、わたしからの勇気です。

 昨年凍らせた秋花を壊しましょう。

 それは、止まった時間を動かすことでしょう。

 

 希望の楽園センティスタ。

 わすれさられたしょうじょのくに。

 

 

     『灰を固めたココロの模型』

 

 見つめているだけじゃ足りない

 欲しいのはあなたの全て だけど、求めることさえ罪となる

 

「ぺくすえんとらんせ・ばいあしぃ・くるるきあ?」

 

 灰を固めたココロの模型

 ガラスが割れると風になる

 

 

     『鉄の翼と凍った涙』

 

 ニセモノの手紙をあなたに送りました。

 届かないことを願っています。

 あなたは眩しすぎるから。

 

 ツクリモノの言葉をあなたに告げました。

 信じないでください。

 わたしは愚かで弱いから。

 

 カリモノの夢であなたを傷つけました。

 泣かないでください。

 全ては忘れられるため。

 

 サヨナラ

 

 機械の天使になだめられ、凍った涙を一滴。

 

 

     『光る川面の流れの先に』

 

 川の流れに素足を浸し、少女は白い手の中に流れを閉じこめる。

 そして少女は笑い声と同時に、閉じこめた流れを空へと昇らせた。

 陽光を乱反射させ、綺羅きらと輝いて、流れは水滴となって無音で空を舞う。

 響くのは少女の笑い声だけ。楽しげに笑う、少女の声だけ。

 水滴は輝きながら、流れへと戻る。

 少女は笑い続ける。楽しげに、泣きながら。

 

 

     『一欠片の砂糖をあなたに』

 

 長い髪はダレのため?

−それはきまっているでしょう?−

 白い肌はダレのため?

−それはきまっているでしょう?−

 大きな瞳はダレのため?

−それはきまっているでしょう?−

 濡れる唇ダレのもの?

−それはきまっているでしょう?−

 

 それは紅茶に一欠片

 そして時計に一欠片

 

−それはきまっているでしょう?−

 

 それは紅茶に一欠片

 そして時計に一欠片

 

 

     『朝露を飲む鳥』

 

 言葉にするとウソになってしまうから あなたに想いは告げません

 写真を一枚 あなたの写真

 どこか眠そうな どこか遠くを見ているような

 そんな あなたの写真を撮りました

 忘れたくない あなたのこと

 心に刻んで 撮りました

 

 写真をみるたび 思い出す

 少女だった わたしの想い

 

 忘れたくない あなたのこと

 忘れたくない 少女のわたし

 

 

     『箱庭』

 

 いつもふざけあっていたよね。楽しかったよ?

 あなたはどうだったのかな? 楽しかった?

 古いデザインの、かわいくない制服。胸元の大きなリボン、あんまり好きじゃなかったな。ほら、変に子供っぽかったじゃない。

 可笑しい。

 今思えば、中学生なんて子供なのにね。

 でもね、あたし。あたしはもう大人だって思ってたんだよ?

 中学生なのにね。キスもしたことなくて……あっ、そうそう。あたしね、あのころ日記つけてたんだ。

 笑っちゃう。あの日記帳、どうしたんだろ?

 クスッ

 あの日記帳には、あのころのあたしの秘密がいっぱい。

 でも、全部あなたのこと。

 あなたがなにをしたとか、どういうあたしの言葉に笑ったとか、そんなことばかり。

 ホントに子供だよね。かわいい。

 

 あ〜ぁ……なんでだろ? 涙でてきちゃった。

 泣かないって決めてたのに。

 あなたには、絶対涙なんかみせないって決めてたのに。

 ……でも、最後だからいい……かな。

 もう……泣いて、いい……?

 うん、いい……よね。

 決めた。

 ほら、あたし泣いてるよ?

 ねぇ、笑ってよ。

 なに泣いてんだよ……って、笑ってよ。

 もう最後なんだからさ。

 最後……なんだから。

 

 いつもふざけあっていたよね。楽しかったよ?

 あなたはどうだったのかな? 楽しかった?

 ねぇ……どうして黙ってるの?

 どうして、そんな箱に入って寝てるの?

 あたし、なにもいってないのに。

 肝心なこと、なにもあなたにいってない!

 日記をつけてたあのころと、あたしはなにも変わってない! あなたへの想いも、ずっとあのころと同じなの!

 ねぇ起きてよ! 泣いてるあたしを笑ってよ! バカだなって、笑ってよ!

 ねぇ……。

 ねぇ!

 

 

     『北風の歌』

 

 聞こえない声を探しにいこう。

 ボクとキミの二人でね。

 見えない未来を探しにいこう。

 キミとボクの二人でね。

 路はきっとあるはずさ。

 なければつくればいいだけさ。

 ボクとキミ、キミとボクの二人でね。

 

 

     『窓際の席』

 

 退屈な授業。それでも私は、真剣なふりをして聴いている。

 それに意味があると思えないけれど、そうする以外にすることもない。

 あくびがでそう。でもださない。

 あっ……ペロックさんのカラフルクッキング講座、留守録してくるの忘れた!

 ……ま、いいか。清水くんも撮ってるっていってたから、借りよう。

 そういえば清水くん、まだリカのこと好きなのかな?

 あの子、男の子の前だとネコかぶりだからなぁ……。

 どうして男の子って、女を外見で判断するのかな? リカはたしかにかわいいけど、性格はよくないのに。

 うぅ〜……やっぱ、清水くんにビデオ借りるの止めよ。

 清水くん、リカのこと好きなんだよね。

 あっ……私、今、すっごくヤな女。リカなんか、いなくなっちゃえって思った。

 私は清水くんのこと、小学生のときからしってるんだから……って。リカなんかに負けないんだから……って、思った。

 うっわ、嫉妬だ。

 私、リカに嫉妬してる。

 別に、清水くんのこと好きでもなんでもないのに。

 ……ホントは、ちょっとだけ好きかもしれないけど。

 そりゃ清水くんは優しいし、頭もいいし、かっこ……よくはないかもしれないけど、それでも、いいとこいっぱいあるし……。

 

 あ〜ぁ……なんか、面白いことないかなぁ?

 

 

     『境界線』

 

 ズレてしまったかもしれない。

 2.7度斜め右だ。

 水の音も聞こえない。

 焦っちゃダメだ。

 落ち着いて。

 紫鳥は飛んでいる。

 迷ったわけじゃない。

 焦っちゃダメだ。

 落ち着いて。

 落ち着いて、水の流れを思い出そう。

 

 

     『雪の日』

 

 祈りはまるで届かない

 溜息さえ凍らせて 少女は指を軽く噛む

 白い祈りが溶けるまで

 

 想いはまるで無垢で無為

 流れる涙を凍らせて 少女は指を強く噛む

 白い想いが解けるまで

 

 緑の風はいつ吹くの?

 

 想いはまるで無垢で無為

 流れる涙を凍らせて 少女は指を強く噛む

 

 

     『虹』

 

 しろいはこみつけた なにがはいっているのかな?

 くろいはこみつけた なにがはいっているのかな?

 あかいはこみつけた なにがはいっているのかな?

 

 にじいろのはこもらった なにをいれてみようかな?

 

 

     『永遠』

 

 少年と少女の物語。

 幸せだけな物語。

 絶対領域の物語。

 壊れることなき物語。

 

 夢の、希望の物語。

 

 

     『遠くて近い場所』

 

 歩幅を合わせ 視線を合わせていこう

 虹の根本は遠いけど きっとたどり着けるから

 希望は近くみえるけど きっと迷いやすいから

 

 ふたりは遠くて近い距離

 

 

     『アイ ― love ―』

 

 信じられる。信じることができる喜びをありがとう。

 


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