『飲精』

 

 常磐春乃(ときわ はるの)は、少し咽せていた。

「大丈夫?」

 という孝幸(たかゆき)の言葉に、春乃は咽せながら頷いた。

 生まれて初めて飲み込んだ精液は、春乃の咽の奥に詰まり、まだ咽の奥に張りついている。胃の中に納められるまで、もう少し時間がかかるだろう。

 始め春乃はフェラチオには抵抗があった。大好きな男のペニスであろうとも、口に入れるとなるとやはり躊躇いはある。しかし、実際やってみると、思っていたより嫌ではなかった。気持ちよさそうな孝幸の顔が、なんだか嬉しかった。

(フフッ……孝幸ったら、気持ちいいのね)

 と、嬉しく思っていると、突然、口の中一杯に射精された。そして、咽せたのだ。

 本当は飲む気はなかったのだが、吐き出すわけにもいかずに思わず飲み込んでしまった。

 しかし満足そうな孝幸を見ていると、それでもいいかと春乃は思った。

 精液は考えていた程不味くはなかったし、なにより孝幸が満足そうにしているのが、春乃には嬉しかった。

 春乃と孝幸は中学校のクラスメイトだ。学年は二年生。二人がつき合い始めてから、もうすぐ半年が経過する。

 初めてのセックスは、三ヶ月程前に今いる孝幸の部屋でだった。それは二人共初体験だったためぎこちないものだったが、二人にはそんなこと関係がなかった。大好きな人と結ばれたという事実だけで、互いに世界中で一番幸せな人間になれた気がしていた。

 その日から二人は、週一回か二回のペースで行為に及んでいる。孝幸の両親が共働きで帰りが遅いことが、二人には好都合になっていた。

 学校が終わってから、孝幸の両親が帰ってくるまでの時間、孝幸の部屋を二人のホテルとして活用できるからだ。

 二人はコンドームを使って避妊しているし、アブノーマルな行為に及んだこともない。孝幸は行為の間も普段と同じく優しいし、行為の後、一緒に二人でシャワーを浴びるのも春乃は気に入っている。どこにも不満はない。

 が、これまで春乃はフェラチオだけは拒んできた。孝幸も少し残念そうな顔はしたけど、強制することはなかった。

 春乃が今日初めてそれを受け入れたのは、代わり映えしないセックスに飽き始めていたからかもしれない。

 例え、精液を飲み込んでも妊娠はしない。そういう安心感もあった。

 だから今日、孝幸がフェラチオを望んだ時、

「うん……いいよ」

 と、答えたのだろう。

 これが、春乃の初めてのフェラチオ行為だった。

 

 それから、約一ヶ月が経過した。

「ん、んぁ……ぅく、チュ、チュパチュ……ん、ん、ぅうんッ」

 いつもの孝幸の部屋。春乃は孝幸のペニスにむしゃぶりつき、舌を激しく動かせ続けながら、左手で袋を揉み、右手で孝幸の肛門を弄る。

 あの日以来、春乃はフェラチオに悦びを憶えてしまっていた。今では自分からフェラチオを強請るようにさえなっている。

「ぴちゃピチャ……ちゅッ、チュピュッ、ちゃッ……ぴちゅチュッ」

 休むことなく舌を動かし、その行為だけで「ねぇ……早く精液飲ませて」と孝幸に訴えかけているかのようだ。

 確かに孝幸はフェラチオというものに憧れていたが、こうも毎日何度も続けられてはたまったものではない。

 この五日間、毎日三回春乃に喰わえられているのだ。それだけで孝幸は消耗していた。そして、今日はこれが四回目である。いくら孝幸が若いといっても、限界というものがある。

「なぁ。もういいだろ?」

「ウグッ? ウグウグ」

 喰わえたまま春乃が答えた。要約すると「エッ? まだまだ」と言ったらしい。

「いい加減にしれくれッ」

 孝幸は無理やりペニスを引き抜き、部屋を出ていってしまった。

 残された春乃は、口の周りをテラテラと光らせながら、呆然と孝幸の後ろ姿を見送った。

 孝幸が春乃に別れを告げたのは、次の日のことだった。

 

 春乃が孝幸に別れを告げられてから一週間が経過した。

 その間、春乃は精液のことしか考えられなかった。

(精液飲みたい、精液飲みたい、精液飲みたいッ!)

 それだけしか考えられなかった。

 孝幸にふられたことより、精液を飲めなくなったことの方が、春乃にはショックだった。

 学校では目に映る男子全てが、『精液が入っている入れ物』に見えた。それだけで、春乃は狂いそうになった。

 手の届く範囲に、これだけたくさんの『精液が入っている入れ物』があるのに、春乃には手を触れることさえできないのだ。

「精液飲ませて。フェラチオさせて」

 何度もそういってしまいそうになったが、その度に我慢した。それだけの自制心は残っていた。

 しかし……それも、限界が近づいている。

 今、春乃は自室のベッドの上で膝を抱えて、

「精液、精液、精液、せいえき、せーえき、セーエキ……」

 と、虚ろな瞳でブツブツ呟いている。それは、麻薬の禁断症状にも似ていた。

 しかしここで、春乃は『いいこと』と思いついた。

 上手くいけば、精液を浴びる程飲める。春乃の顔がパッ……と輝き、瞳に光が戻った。

「そうだ! あの人たちならッ」

 すでに陽が落ちているのにも関わらず、春乃は家を飛び出して『そこ』に向かった。

 春乃の家の近くには二つの公園がある。一つは大きくて綺麗な『白丘公園』。そしてもう一つは、寂れて殆ど人には知られていな『しあわせの森公園』である。

 『しあわせの森公園』は、名前からは想像もできないような、小さく、はいっきりいって汚い公園である。

 春乃は、その『しあわせの森公園』に向かって走った。

 

 春乃が『しあわせの森公園』に到着し、目的の『あの人たち』を見つけるまでには、然したる時間はかからなかった。

 春乃はチカチカと電球が切れかかっている街灯の下を通って、『あの人たち』の内の一人に声をかけた。

「あのッ」

 その呼びかけに振り向いたのは、汚れてボロボロになった衣服(と呼べればだが)を着ている、中年男だった。

 彼は『ここ』に『住んで』いる『住人』だ。春乃はこの公園に『住んで』いる人たちなら、いっぱい精液を持っているだろうし、飲ませてくれるに違いないと考えたのだ。

 これなら学校で苦しむことはない。学校で奇妙な言動はとれない、学校に行けなくなるのはマズイ……と、春乃の頭の隅にはまだその考えが残っていた。

「あのッ! 私に精液飲ませてくださいッ」

 はっきりと躊躇いなくいった。恥かしさはなかった。もうこれ以上我慢できなかった。一分でも、一秒でも早く精液が飲みたかった。

 呆気にとられていた男が、なにかをいおうとした時、

「私、精液好きなんです! 飲みたいんです! お、お願いします精液……せいえき…く、ください」

 言葉の後半。春乃は泣き出していた。

「お願い……します。精液、飲ませて……フェラチオさせて、ください……」

 泣きながら奇妙なことを懇願する少女に、男はなにもいえなかった。

 暗い闇を照らそうと、チカチカ街灯が瞬いていた。

 

「ヴッ、ぅんぐ……ぅんッ。ハァ、ハァ……ハァ……」

 春乃は咽を鳴らし、今日十六杯目の精液を飲みこんだ。しかし、まだ満足はしていない。この公園の『住人』は、全部で五人。都市開発で行き場を失い、仕方なくここに集まった『住人』たちだ。

 春乃は、その五人の精液を飲み続けている。口内に受け損なった精液が顔中にこびりついていたが、そんなことには気づきもしないで、ペニスに喰らいつき続けた。

 一度に二本のペニスを喰わえ、舌を這わせて袋を揉んだ。

 最高だった。春乃は最高に幸せな気分に浸っていた。

 好きなだけ精液が飲める。春乃はフェラチオ自体には興味がない。ただ精液が飲みたいだけだ。

 春乃の頭の中には、『フェラチオをする』=『精液が飲める』という式が成り立ってしまっている。だから喰わえた。舌を這わせた。袋を揉んだ。

 そして……精液を飲んだ。

 結局この夜、春乃は、十九杯の精液を飲んでそれなりに満足して家に戻った。

 なぜか、レイプはされなかった。されたところで、

「最後は口にだしてくれるなら、オマンコでもお尻でも好きに入れてくれていい」

 と、春乃は思っただろうが。

 

 その日から毎日、春乃は『しあわせの森公園』に通った。平日も休日も、晴れの日も雨の日も、なにがあろうと毎日。

 今では、公園に通うことが春乃の生き甲斐になっていた。

 公園に行けば大好きな精液が飲めるし、『住人』の人たちはみんな優しい。どの穴に入れても、最後は口にだしてくれる。

 少し意地悪をされることもあるが、精液が飲めるのなら、ウンチやゴキブリを食べることなど、たいしたことではない。

 ここは天国だ。

 春乃は、そう思っていた。

 そして春乃は、今日も精液を飲み続けている。



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