「負けるな! 琴子さん」

 

「うぅ…ひ、ひかりぃ」

 琴子は光の写真パネルで埋め尽くされた自室で、光の体操着姿の写真(どうみても隠し撮りなのだが…)を手に、えぐえぐと泣いていた。

「どうして…? どうして、光…」

 今朝のことだ。

 琴子が「愛」している「らぶりぃ光」が、あのクソ忌々しい幼なじみのヤローと、手を繋いで登校してきた(琴子ふうにいうと、「してきやがった」)のだ。

 これは由々しき事態であり、けして許せるものではない。

「…ろしてやる。殺してやるうぅ!」

 強く噛んだ下唇が切れ、琴子の口内に血の味が広がった。

 琴子の中学卒業時の予定(まぁ、妄想だが)では、光とラブラブな高校生活を送り、高校卒業と同時に同棲。そして甘く、少し爛れた生活を経て、やがては…ということになっていた。

 が、ヤツが現れて全てが狂ってしまった。

「ワカメ丸のヤツうぅ…ぜってぇ死なすッ!」

 取りあえず琴子は無言電話から始めようと決め、「憎いあんちくしょう」のケータイにTELを入れた。

 

「ワカメ丸くん。少し痩せた?」

 琴子が、光とワカメ丸のラブラブ登校(と、琴子は思っている)の邪魔をするために待ち伏せていると、案の定ヤツはデレデレとした締まりのないツラで、愛する光と腕を組んで歩いてきやがった。

「…最近、無言電話があってさ。初めはボクのケータイにだったけど、ケータイの電源切っておいたら、今度は家の電話にかかってくるんだ」

「なによそれぇ。許せないわ。殺す?」

「…い、いいよ。飽きたら終わるだろうし」

「ううん。あたし絶対に犯人見付けて、顎が粉砕するまでボコるわッ」

 仲良く会話を交わす二人(琴子視点)。琴子は煮えたぎる腸(「はらわた」と読むぞ)をなんとか抑え、偶然を装って二人…というか、光に声をかけた。

「おはよう。光」

「あっ、琴子。おはよ」

「おはよう。水無月さん」

 ぶちいぃ!

(な、なにが「おはよう。水無月さん」…よ! この泥棒ネコがあぁ!)

 と思ったが、琴子はにこやかにワカメ丸にも「おはよう」と挨拶を返した。

「ねぇ琴子、きいてよ」

「どうしたの? 光」

「あたしのワカメ丸くんに、イタズラ電話してくるヤツがいるんだってぇ」

(「あたしのワカメ丸くん」…ですってッ? ひ、光ぃ…どうしてそんなこというの? 酷い…酷いわ…)

「そ、そう? 暇な人もいるものね」

 完璧なポーカーフェイスでいう琴子。

 歩きながらも、なんだか興奮したように、「ボコる」とか「死なす」とか物騒な言葉を織り交ぜて無言電話に憤慨する光。

 死んだ魚のような目で、「もういいから」とそれを諭すワカメ丸。

 琴子は光に相づちを返しながら、「作戦」を第二段階に移行することを決めた。

 

 立ちはだかる数多の困難を乗り越え、琴子は「真実の愛」をつかみ取ることができるのかッ?

 それとも、無惨にも散ってしまうのかッ?

 琴子の「運命」は、「ミッションセカンド・衝撃の真実ッ! 憎いあんちくしょうはホモだった作戦パートT なんかナヨナヨした匠とかいうやつとの秘められた関係編」に委ねられた。

 といっても、実は「ミッションナイン・憎いあんちくしょうは(自主規制)で(これも自主規制)の上、実は(ピーッ×18)」まで用意はされているのだが…。

 まぁ…犯罪者にならないほどに、ガンバってもらいたいものだ。

 って、無言電話って犯罪じゃ…。

 ま、まぁそれはそれとして、負けるな琴子。

 「真実の愛」を、その手にもぎ取る日までッ!

 


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