7

 

 気になることは、いくつもある。

 おんなの子の、連続失踪。全てが、同一犯によるものなのか。琴香に、それが調べられればいいけど……

 探偵がいれば、調べられる。彼なら、できる。

 探偵……久貫鏡一郎。

 でも、探偵はいない。消えた。

 あたしにも、行方がわからない。

 日本を出た跡はない。でも、探偵のことだから、形跡を残さずに消えることくらいできる。

 あたしは、あたしの方法で探るしかない。

 マーダーディスク。

 あたしがみたのに映ってたのは、一人だけ。

 他にもある? 映ってるディスク。

 調べなきゃ……。

 あたしが〈電界〉に潜っていると、第16−b端末にアクセスがあった。あたしは一度〈電界〉からあがり、アクセスがかかった端末をメインマシン【MITORI】に繋げる。

『ヒナっち、頼みたいことがあるの』

 音声のみ。琴香の声だ。

「なに……?」

 あたしも、音声のみのアクセス。もちろん、壁は厳重に作ってある。例えあのロリコンでも、簡単には覗くことはできない。

『あなたがみたマーダーディスクが欲しい。確証を得たいの。本当に、行方不明の子なのか』

「……むつかしいと思う」

 グチャグチャだったから、あれでは、判別はむつかしい。あたしだって、似てる……とは思ったけど、確証できたとまではいかない。60%、同一人物だと思うけど。

『わかってるわ。でも、なんとかできると思うの。そういうの、得意なヤツがいるのよ』

「そういうの……ね」

 琴香には、変な知り合いが多い。グチャグチャの人間を判別するのが得意なひとがいても、不思議じゃない。もちろん、あたしは、そんなひとと知り合いになりたいとは思わない。

「わかった。すぐ、用意する。あたしからも、お願いがある」

『なにかしら』

「あたしがみたのと、ロリコンがみたの。同じディスクかどうか、確認してほしい」

『あぁ……そうね。確かにそれも、確認する必要あるわね。でも、自分でできないの?』

「ちょっと、あのロリコンにムカついてるの。できるだけ、アイツと話したくない」

 半分ウソ。ロリコンは、「愚か者」とかいうひとに見張られているかもしれない。ナニモノかわからないし、危険なひとかもしれない。あたしに気づかせずに、端末に入り込むなんて、普通のひとにはできない。たぶん、〈ゲーム〉の関係者。近づかないに越したことない。

『そう? アイツ、ムカつくとこあるものね』

「……うん。あたしがみたのは、クラッシュベリーって呼ばれるディスク。でまわったのは、NY」

『わかった。ロリコンに確認してみるわ。それから、紅野さんとは接触できたわ』

「……」

『協力してくれると思うわ』

「……」

『気に入らない?』

「わからない。判断がつかない」

『大丈夫よ、あの人なら』

「楽観的。琴香」

『そうかしら? ……あっ、ちょっとまって』

 端末から琴香が消える。二分十三秒後。端末から再び琴香の声。

『そっちに紅野さんがいくわ。ディスクは紅野さんに渡してくれる?』

「……家に、くるの?」

『それは困るかしら?』

「別に……いいけど」

 今、お姉ちゃんは家にいない。だから、大丈夫だと思う。

 お姉ちゃんは、あたしが危ないことをするのを嫌う。琴香も探偵も、お姉ちゃんは嫌い。あたしを利用している、嫌なひとたちだって思ってる。

 確かに、それは間違ってない。ううん、お姉ちゃんがいったり思ったりすることは、全部正解。それが、世界の破滅を願う……ということでも。もしお姉ちゃんが、世界を壊してってあたしいってきたら、あたしはどんなことをしてでも世界を壊す。

 お姉ちゃんは、あたしの全てだから。

 あたしは、お姉ちゃんのもの。そしてお姉ちゃんは、あたしのもの。

 あぁ……だいすき、お姉ちゃん。愛してる。

『……で、そういうことになったから……って、ちょっと、聞いてるの? ヒナっち』

 聞いてなかった。お姉ちゃんのことを考えて、ちょっとボ〜ってしてた。

「……なに?」

『あなた、最低限の返事はしてよね』

「うん……なるべく、そうする」

 端末から、琴香の溜息が聞こえた。

 要するに、紅野笹雨が家にくるから、きたらクラッシュベリーのディスクを渡して……ってことみたい。

 あたしは琴香に、「紅野笹雨には、絶対、お姉ちゃんに顔をみられないで……って、いっておいて」と注意して、再度〈電界〉に潜った。

 お姉ちゃん。あたしは、危険なことをしてるのかもしれない。でも、お姉ちゃんを裏切ることは、絶対ないから。

 だから、お姉ちゃん。

 お姉ちゃん……。

 だいすきだから。

 ずっとあたしと一緒にいて。

 ずっと……永遠に……。

 愛してるから。

 

 お姉ちゃん……。



戻る   

動画 アダルト動画 ライブチャット