ましろのお話

 

     Aパート

 

 背中を完全にかくすほどに伸ばされた、くせのないまっすぐな黒髪。

 強く掴めば折れてしまいそうなほどに細い、132cmの小柄な身体。

 二桁の年齢に達するまでいまだ百数十日の時間を必要としているが、その年齢にしてはしっかりとして「整った」顔つき。

 ましろはそのような外見的特徴をもつ、とてもかわいらしいおんなの子だ。

 そんな彼女の「お仕事」は、「お姫さま」だ。ましろはその用紙に似合わず(いや、ある意味似合っているのだろか)、週に一夜、ろりぃ〜たスカトロ専門店「ショコラ」で「お姫さま」として働いているのだった。

 いまだ一桁の年齢で、スカトロクラブの「お姫さま」。もちろんそれは、〈統一政府〉からましろに割り振られた「お仕事」である。

 〈統一政府〉が「管理」する〈統合世界〉の「世界民」であるのなら、ほぼすべての者が五歳になればなにかしらの「仕事」を〈統一政府〉から与えられる。そして「それ」を拒否することが「死」と同義であるということは、「世界民」でなくともしっている〈この世界〉の「常識」だろう。

 〈権力〉から強制される仕事。しかしましろは、この「お仕事」が気にいっていた。

 初等学校にあがるまでの彼女の「お仕事」は、公園の花壇のお手入れ……という、ごくありふれたものだった。それに比べれば、いまの「お仕事」は楽しいしやりがいもある。

 ましろにとって、汚物にまみれてエッチなことをする……という行為は、お店にでる前の「研修」のときから、なんの抵抗もなく受けいれることができるものだった。

 そしていまでは、「お仕事」の日が待ち遠しいほどになっていた。

 

   ☆

 

 今夜は、週に一度の「お仕事」の夜。ましろは普段はあまり身に着けることのない、少女趣味全開なヒラヒラのお洋服でその身を飾り、プレイルームへと足を進めていた。「プレイルームには、この服でいってほしい」との、店側からの指示があったからだ。

 このお洋服は、今夜ましろが相手を務めることになっている「お客さま」からのプレゼントなのだそうだ。

 着るものを指定してくる客は珍しいというわけでもないが、それでもいま身に着けている「お洋服」は、彼女にとって多少の違和感を覚える種類のものだった。

 なんといえばよいのだろう。「センスがよすぎる」とでもいえばいいのだろうか。

 ましろは普段の生活で、あまりヒラヒラの多い服を好んで着ることはないが、それでも今夜「指定」された洋服は、着ていて不愉快なものではない。

 たまには、こういうのもいいかも。

 と素直に感じられる、そういう種類のものだった。少なくとも数週間前に「客」から与えられた、「股間と乳首の部分に穴があいたスクール水着」よりは、ずっとうれしいと思える「お洋服」である。

 そんな「お洋服」をプレゼントしてくれたましろの「お客さま」は、今回初めて「お店」を利用する、ましろにとってもお店にとっても「はじめてのひと」だ。

(このまえはかれんちゃんといっしょだったけど、今夜はわたしひとりでお相手をしなくちゃいけないんだよね……)

 はじめてのひとのときは、少し緊張する。先週もはじめてのひとだったけれど、彼はなんども「お店」を利用しているひとで、「やさしいひと」だという評判はきいていたので、あまり心配はなかった。

(今夜のひとは、どんなひとかしら?)

 乱暴なひとはキライだ。それに、「お姫さま」を「性欲を処理するためだけの人形」として扱うひとも。

 だが、「客」の「命令」を拒否する権利は、「お姫さま」たちに与えられていない。だから、ましろは願うだけだ。

「今夜のひとが、やさしいひとでありますように」

 ……と。

 

 ましろは指示された部屋に到着し、その扉の前でひとつ深呼吸をした。お客さまは、もう部屋の中でまっているらしい。そう聞かされている。

 この部屋は「特別」な仕掛けのない、いわゆる「普通」の部屋だ。ハードなプレイをしないひとが、ごく「普通」に選ぶ部屋。

 だからといって、今夜の「お客様」が「へんなひと」でないという保障はないのだが。

 深呼吸をおえて、目の前のドアをノックする。

「どっ、どうぞ」

 室内からの応答に、

(あれ? いま、なにかへんな感じが……)

 ましろは違和感を覚えた。

「失礼いたします」

 ドアを開け、室内へ。

 と、ましろは、違和感の正体にすぐ気がついた。

(この……ひと?)

 目を円らにするましろ。その瞳は、所在なさげにたたずむ「彼女」をとらえていた。

 考えもしなかった。

 まさか、同姓のお客さんだとは。

 違和感の正体。

 それは、応答が「おんなのひとの声」だった……ということだった。

 ごくまれにではあるが、女性がこのお店を利用することがある……という話は、ましろも耳にしたことはあった。しかしこれまで、彼女が同姓の「お客さま」にあたったことはない。なので最初から、相手は「おとこのひと」と思いこんでいたのだ。

「ましろです。はじめまして、おねえさま」

 部屋にはいるとドアを閉め、ましろは「そのひと」に向き直ってぺこりとお辞儀した。

 そのひとは少し緊張した様子で、

「あっ、えっ……えっと、こちらこそはじめましてですわ。わ、わたくし、りほこと申します」

 いうと、ましろと同じような動作でぺこりと頭をさげた。

 まさか、「お客」に頭を下げられるとは。

(かわったひとだな……)

 多少の安心とともに、ましろは思った。

 そのかわったひとの外見的特徴をのべると、年齢は二十代半ばだろうが、みようによっては十代にみえなくはない。短めの髪は隙なく整えられ、胸は重力によってのみでも零れ落ちそうなほど大きく、女性的な曲線で造られた肢体のみごとさは、地味目な衣服の上からでもわかるものだった。

 そしてなにより、美人だった。ほとんどのニンゲンが文句なく「美少女」だとみとめるであろうましろと対峙していても、なんの遜色もないほどの。

 丁寧な言葉づかいだし、身なりもしっかりしている。この部屋を訪れる前に危惧していた意味での「変なひと」ではなさそうだ……と、ましろはそう感じた。それにりほこは、同姓のましろがみとれてしまうほどにキレイだ。

 経験のない同姓の「お客さま」。ましろは意識してほほえむと、

「はい。りほこさま……とおよびすれば、よろしいでしょうか?」

 彼女に問う。

 ましろの問いにりほこは、

「え……? あ、あぅ……」

 すばやく眼球を動かしてなんども左右をみまわし、やがてうつむくと、

「……お姉様で、よろしいですわ」

 小さな声で答えた。

 その答えにましろは、

「はい。おねえさま」

 にっこりとしたほほえみを、「今夜のおねえさま」へと捧げた。

 その愛らしいえみにみとれるように、ぽ〜っと表情をゆるめるりほこ。ましろはりほこへと一歩をふみだすと、

「どうかなさいました? おねえさま」

 かわいらしく小首をかしげ、上目づかいに視線を送った。

 りほこがましろの視線に射止められたかのように固まり、そのまま十数秒ほどの時間が経過した。

 そして、

「……ハァ」

 りほこはため息をつき、

「い、いいえ。緊張してしまって……」

 大きく盛り上がった胸元に手をあて、一回、深呼吸をした。

(なんだろう? このひとって……)

 そのしぐさは年下で同姓のましろからみても、

「すっごくかわいいっ!」

 と思えてしまうものだった。

「このお洋服。おねえさまが、プレゼントしてくださったのですよね?」

 かわいらしくはあるが、どちらかといえば活動的な雰囲気のお洋服だ。ましろはお洋服にあった「自分」を演出するために、その場でくるんっとまわってみせる。フリルがまぶされたスカートの裾がふわっと広がり、長い黒髪が空を舞った。

 その様子をりほこはうっとりとした顔でみつめ、だがなにかを感じたのか表情にかすかにな険しさを滲ませて、

「えぇ、でも……少し、かわいすぎたかしら?」

 頬に手をそえ、小首をかしげた。

「そんなことないです。とってもかわいいお洋服をいただけて、ましろはうれしいですっ!」

 ましろはその言葉にウソがないことを表現するために、大げさなほどにっこりとした笑みをりほこへと向けた。

「そ、そう? よろこんでもらえて、よかったわ」

 ましろの笑みに、りほこはほっとした様子でほほえんで、小さな息を零す。

 しかし、そのあとが続かない。

 りほこは無言でましろをみつめ、ましろが「なにか?」といった様子で首をかしげると、顔を紅くして視線を落としてしまった。

(う〜ん……どうすればいいのかしら?)

 ちらっ、ちらっ……と、自分を盗み見るりほこ。

「あ、あのっ、ましろ……ちゃん?」

「はい? おねえさま」

 りほこは、ぴくっぴくっと腕を小刻みに動かすと、唐突にましろの前にひざまずいた。

(な、なに!?)

 驚くましろ。が、顔にはそれをださない。

 りほこがましろを見上げ、

「な、なめても……よろしいかしら?」

 初めて、要求を口にする。どこをなめたいのか。そんなことをきかなくてはいけないほど、ましろはこの仕事に不慣れではない。

「はい。おねえさまのお好きになさってください」

 ましろは股を広げるような格好でスカートをたくし上げ、露となった純白のショーツが包む股間へとりほこが顔を埋めるのを受けいれる。

(うっ、くすぐっ……たい)

 そっと、股間の中心部分へとキスが送られる。舌が伸ばされ、スリットにそってなめあげられる。りほこの髪が、腿に触れる。「ハァーっ、ハァーっ」。荒い息づかいがきこえる。下半身に、熱い呼吸を感じる。股間に吸いつく唇。舌がせわしげに動き、ショーツを湿らせていく。

 と、突然。りほこが勢いよく、ましろのショーツを足首にまで下げ、それが包みこんでいた部分を光にさらした。

「ふぅっ、はぁーっ、はぁーっ……」

 激しい息は、りほこのもの。しかしその息づかいとは裏腹に、りほこはやさしいキスで中心部分へとふれてきた。

 ぬるっとした舌がスリットに埋もれ、遠慮がちに膣口をまさぐる。男性の「お客」から与えられる刺激とは違う感覚。なんというか、ましろを「支配」してやろうといったような、押しつけがましい「意識」は感じない。ただ、なめないからなめている。いうなればそんな感じだ。

 どうしよう……? さほど気持ちいいというわけでないが、反応を示したほうがいいだろうか。ましろは思い、小さな喘ぎ(演技だが)を零した。

「ご、ごめんなさいっ!」

 りほこはましろの喘ぎ(演技)に驚いたように身体ごと顔をはなし、

「気持ち、悪かったかしら……? ごっ、ごめんなさい」

 ひざまずいたままの姿勢でましろを見上げ、あわてた様子でいった。

 本当に悪いことをしたといった様相。いまにも涙が溢れてしまいそうな感じの。

 たぶん……というよりきっと、りほこが「このようなお店」を利用するのはこれが初めてのことだろう。ましろは察し、

「どうしてですか? ましろは、とてもきもちよかったですよ?」

 彼女を安心させるようにほほえんだ。

「ほん……とう?」

 さぐるような問いに、

「はいっ!」

 ゲンキよく答える。

 表情をやわらげて、かすかな笑みを浮かべるりほこ。

(かわいいひとだな……)

 ましろは思った。

 そして、どうやら自分がリードしたほうがいいだろうとも。

「あの、おねえさま?」

「あっ、え? は、はい」

「おねえさまが、ましろをご指名くださったのですよね?」

「えっ、えぇ……。そうです」

「でしたらおねえさまは、ましろと汚いお遊びをなさりたい……のですよね?」

 ここは「汚いお遊び」をする場所なのだ。しかしりほこは、「間違ってこのお店を選んだ」のではないかと、「ちいさなおんなの子と遊びたい」のであって、「汚い」という部分が抜け落ちているのではないか……と。

 りほこから漂ってくる「お上品」な雰囲気になんとなくだがましろはそう思い、確認をする。「そう」なら「そう」でかまわないのだが、やはり確認しておいたほうがいいだろう。

 しかしましろの質問に、りほこは顔中を紅く染めて、コクンとうなずいた。

 どうやら、間違ってはいないらしい。

「では、どうなさりたいですか? きかせてください」

「え? あ、あの……えっ、と」

「おねえさま?」

「ま、ましろちゃんの、そ、その……あれを」

「あれ? うんちですか?」

 うんち。その単語に反応してだろう、りほこはこれまで以上に顔を紅く染めた。

 ましろはしゃがみこむとりほこの手を握って、

「おねえさま? 今夜のましろは、おねえさまのましろです。おねえさまのいうことは、できるだけのことをします。おしえてください。おねえさまは、ましろとどのようになさりたいのですか?」

 ましろが、まっすぐにりほこをみつめる。りほこも、その視線から逃げることなく、

「まっ、ましろちゃんのうんちを食べさせていただいて、ましろちゃんにも、わたくしのを食べていただいきたい……です」

 いった。

 互いのうんちを食べあう。ましろにとっては、ごく普通の行為。

「それだけ……ですか?」

「い、いいえっ! も、もっと、もっといろいろしたいですわっ」

 ぎゅっと手を握ってくるりほこにましろは笑顔を送り、

「では、そのもっといろいろをしてください。ましろはおねえさまと、もっともっと楽しみたいです」

 唇が触れ合ってしまうほど近く、顔を寄せた。

(キスして、いいかな?)

 少しだけそう考えてから、ましろはりほこの唇に自分の唇を重ねた。

 ぴくんっ! と肩を震わせるりほこ。そして自分から、ましろへと唇をおしつけてきた。ましろは唇を開き、舌を差しだす。りほこはその舌を唇にはさみ、遠慮がちに吸った。

 ふたりはしばらくの間、互いの舌を吸いあうようなキスに没頭する。時間にして五分以上が経過して、ふたりの唇がどちらからともなく距離をとり、

「わ……わたくしも、ましろちゃんと楽しみたい……です」

 りほこがつげた。

「はい。はいっ! おねえさまっ」

 ましろはりほこに抱きつくと、大きな乳房に顔を埋める。

「おねえさまのおっぱい、ふわふわできもちいいです」

「そ、そうかしら? でも、少し大きすぎると思うのだけれど……」

「そんなことないです。ましろはぺったんこですから、うらやましいです」

「ふふっ。わたくしだって、ましろちゃんくらいのときには、ぺったんこでしたよ?」

「ほんとう、ですか?」

「はい。本当です」

 ふたりはほほえみを交換して、触れるだけのキスをした。

「おねえさま?」

「はい。なんですか?」

「お洋服は、きたままがよろしいですか?」

 りほこは少し考えるような顔をして、

「着たままでは、できないでしょう? もちろん、ぬぎますよ。それに、かえのお洋服は用意してありませんもの。汚れてしまっては困りますし……。あっ、それともここでは、服をきたままでするのが普通なのですか?」

 ましろの質問とはズレた答えを返してきた。ましろは「自分が、プレゼントしてもらったお洋服を着たままでしたほうがよいのか」……ときいたつもりだったのだが、ちゃんとつたわらなかったみたいだ。

 ましろは言葉を選んで、問い直す。

「そ、そんなこと思ってないですっ! わたくしはただ、ましろちゃんになにかプレゼントをしたかっただけですからっ」

 衣装を指定してくる「お客さま」は、「その衣装をつけてのプレイ」を要求してくるのが普通だが、服を着たままでのプレイというのは、りほこの思考にはなかったみたいだ。

「はい、わかりました。おねえさま、ありがとうございます。ましろ、おねえさまにいただいたお洋服、たいせつにしますね」

 輝くような笑みを浮かべるましろ。りほこにプレゼントしてもらった洋服を汚さなくてもいいことが、素直に嬉しかった。

 

     Bパート

 

 ましろとりほこ。ふたりは着ていたものを脱ぐと、それを完全密封状態になる衣装ボックスへといれた。これで、プレイ時の汚れや臭いが衣類に付着することを、気にする必要はない。

 隠すものがなくなったりほこの肢体は、「完璧な女性の体型」に思えるほどだった。大きな二つの乳房は、まるで重力にさからっているかのように「あるべき位置」に存在し、その大きさのわりに輪の小さい先端はツンと上を向いている。腰のくびれ、丸いお尻、曲線ばかりで描かれる身体の輪郭。

「な、なに……?」

 りほこはましろの強い視線を感じ、中等学校にあがったころから急激に成長をはじめ、いまでは「自分の一部」というよりは「くっついている異物」とも感じてしまうことのある胸元を両腕で隠す。

「おねえさま、きれいです。本当に、すごくきれいですっ!」

「そ、そんな……ましろちゃんのほうが、かっ、かわいいわ」

 かわいい。ましろにとって、聞きなれた言葉だ。

 ましろは、特別に自分の容姿が優れているとは思っていないが、劣っているとも思っていない。平均よりは上。「かわいい」といわれるに値する容姿。別に自慢をするつもりはない、それが「事実」なだけ。なので、「かわいい」といわれても褒められている気がしなかった。

 それよりも、

「かわいいよりも、きれいのほうがいいです」

 りほこの女性的な美しさの方こそを、ましろはうらやましいと感じた。どうすれば、あのように美しく成長できるのだろうか……と。それは、これからが成長期であるましろにとって、とても興味のあることだった。

「そう? でも、わたくしはかわいいましろちゃんのほうがいいです。きれいなましろちゃんもすてきでしょうけれど、やっぱり、かわいいほうがいいです。だって、かわいいですもの」

 ましろのココロの内での問いに答えることなく、りほこはよくわからないことをいいながら、胸元を隠していた腕をほどき、その右側をましろへと差しだす。

 ましろも右の腕を伸ばして自分へと伸ばされた手を握ると、ふたりはそのままベッドにへと上がり、今夜二度目となる深いキスを交わした。

 ついばみ合い、ときに潜る。湿った音色を響かせるそれは、ましろのほうが積極的だったが、りほこもただされるがままというわけでもない。自分の半分も生きていない少女の舌を吸い、自らの唾液を少女の口へと注いだ。

 蜜が、滲んでくる。下腹部の中心が熱く疼き、二十代も半ばを過ぎようとしながらも純潔を守ったままの聖域から、淫らな欲望の滴が溢れてくるのがわかる。

 歪んだ性癖。少女しか愛せない。いまだ初潮も迎えていない年頃の少女にしか、性欲を覚えない。覚えることができない。

 りほこが、そのような自分を自覚したのは、十代も終わりがみえてきたころのことだった。

 異性に興味がもてない。いや、はっきりいって気持ちが悪い。近くにいられるだけで、体調が悪くなる。

 なのに……。

 つい、幼い少女たちへは視線を向けてしまう。意識を向けてしまう。瞳に写した少女たちの裸体を想像し、欲情してしまう。

 これは、普通ではない。

 不潔だ、自分はなんと不潔な存在なのだろう。

 そう思いながらも、ある日りほこは一線を越えてしまった。

 幼いころの友人、すこしだけ憧れていたのかもしれない、一緒にいると嬉しいと思えた友人の記録映像をみながら、生まれて初めてといっていい自慰に耽ってしまった。

 そのとき彼女は、自分でもどうしようもないほどの欲情に支配され、頭の片隅で「このようなことはよくない」と思いながらも、かつて幼かったころの友人を二時間近くも脳内で汚しつづけた。

 吐き気がするほどの、背徳だけでつくられた妄想。

 成長した自分が、幼いままの友人を、何度もなんども繰り返して汚した。だけど幼いままの友人はそのすべてを受けいれてくれ、りほこを「だいすき」ともいってくれたのだ。

 脳内でとはいえ、大切な友人(もしくは思い出)を性欲のためだけに汚す背徳感は、それまでしることのなかった快感をともなって、りほこの「その先」を呪ってしまった。

 そしてりほこは、週に二度、三度のペースで、目に焼きつけた(ときには盗撮した)幼い少女たちを妄想で汚し、快感をえるようになった。

 やがて、半年ほどが経過して、その妄想での行為が「日常」となったころ、りほこの妄想の内容は、スカトロジックなものへと「進化」してしまっていた。

 現実ではとてもありえない量の排泄物をひりだし、それで妄想内の少女たちを汚す。塗り、食べさせ、性器に、腸内に詰めこむ。少女たちはそれらの行為を拒否することなく、むしろよろこんでうけいれてくれる。そして、とても気持ちのいい時間をりほこに与えてくれた。

 気持ちいい。きもちいい。キモチ、イイ……。

 そして行為がおわると、快感の残り香と潰されそうになるほどの罪悪感、自分への情けなさがりほこに与えられた。

 また、やってしまった。どうしてわたくしは、このような汚れたことをしてしまうのだろう。やめることができないのだろう……。

 妄想の中の自分は、自分ではない。そう思いこんでしまえれば、少しは楽になれたのかもしれない。しかしりほこは、そうは思えなかった。

 あれは全て、自分がココロの底で望んでいること。幼い少女を自分の排泄物でまみれさせ、愛しあいたい。そして愛しあっていることを示すために、自分も少女の排泄物を身体に塗って、食べる。そんな変態行為こそを、自分はココロから望んでいる。それは悲しいくらいに否定することのできない、りほこの芯となる部分に刻まれた「本音」だった。

 どうしようもないほどの欲求。汚れへの憧れ。しかし現実世界では、幼い少女に排泄物を塗ったり、食べさせたりはできない。

 だから、自分に塗ろう、自分が食べよう。そしてその行為を、妄想の中の少女たちに施したのだと考えよう。

 身体についた排泄物の臭いをとるためのソープ。排泄物を食べる前に飲むクスリと、食べた後に飲むクスリ。少し調べてみるだけで、そのような「すてきなアイテム」が存在していることがわかったし、入手するのも難しくはなかった。

 排泄物と戯れるのは、さほど変態行為ではないのかもしれない。専用のアイテムが存在し、普通に販売されていること、それらが簡単に入手できることから、りほこはそう思ったし、少しだけ自分を認めることができた。

 そして、自分の排泄物を塗ったり食べたりするようになって五年が経過しようというころ、りほこは「ショコラ」の存在をしった。

 幼い少女ばかりをあつめた、〈統一政府〉運営のスカトロ専門店。

 その存在をしったとき、りほこの時間は数瞬停止した。大げさではなく、本当に停止したとした表現のしようがない、不思議な感覚を彼女は味わった。

 自分の妄想を現実にできるかもしれない場所。最初に喜びが、そして次に悲しみが彼女を満たした。

 自分の欲望をみたすことができる可能性。だけどそれは、現実の少女を汚すということ。妄想ではなく、肉体をもつ「ヒト」を汚すという現実。

 そんなこと、できない……。

 そう、できない。そのような汚れた行為を、「ヒト」に対して行えるものではない。

 できない、はずなのに。

 してはいけない、はずなのに……。

 両親が〈統一政府〉の運営に携わる「特権階級」の家庭に生まれ育ち、金銭的な苦労をしたことはない。これまでに〈統一政府〉から与えられた仕事も難しいものはなく、現在は「図書館の司書」という、むしろ自分がやりたい仕事についている。そしてその仕事は、結構配給金がいい。

 世間的にみて、「苦労しらずのお嬢様」。しかしショコラの利用料金は、そんなりほこにしてみてもけして安価ではなかった。一回の利用で、彼女が受け取っている月の配給金の二倍から三倍はかかるだろう。

 だが、罪悪感に苛まれ、金銭的理由を考慮しても、りほこはショコラの存在を「なかったもの」にすることができなかった。

 どうしても、いきたい。

 そして、欲望を満たしたい。

 それが「本音」。

 けして逆らうことのできない「呪い」。

 お店の予約をするのは簡単だった。

 でも、相手を選ぶのは少し難しかった。

 誰にしよう。どの子がいいの? どの子なら、わたくしを受けいれてくれのかしら……?

 お仕事なのだから、どの「姫」でもりほこを受けいれてはくれるだろう。

 しかし、そうじゃない。

 そんな表面的な、「簡単」なことじゃない。

 ディスプレイに映し出されたカタログ。かわいい子もいれば、さほどでもない子もいる。

 と、ひとりの少女に目がいった。

 長い黒髪の美少女。

 かすかにほほえんでいる。

 ましろ。

 少女の名前。

 本名ではないだろう。

 そういえば、ましろはあの友人に似ているかもしれない。

 一緒にいるだけで嬉しくて、楽しかった、あの子に。

 ましろのプロフィールを呼び出してみる。

 ランクはB。金額的には普通だ。蟲プレイを含む場合はSランク料金になるらしいが、蟲には興味がないので関係ない。

 自己紹介ムービーを再生させる。

「ましろです。できることは、せいいっぱいがんばります」

 きれいな声。かわいい表情。静止画よりも活動的な印象をうける。

「えっと……やさしいひとがすきです。お客さまは、やさしいかたですか? でしたら、ましろとあそんでくれるとうれしいです」

 やさしいひとがすき。わたくしは、やさしいひとかしら……?

 この、汚れたわたくしが。

 操作画面に指を伸ばす。

 予約。

 指がふれた。

 もう、引き返せない。

 引き返す気はない。

 そして今夜、りほこはここにいる。

 ましろの体温を感じている。

「どうか、なさいましたか?」

 ましろの声に、意識が浮上した。

 キスの途中。

 いつの間にか思考にふけっていたらしい。

「なんでもないですよ」

 キスする。

 やさしく。

 やさしいひとがすき。

 キスする。

 そしてりほこは、望みを告げた。

 

     ☆

 

「どうか、なさいましたか?」

 キスの途中からりほこがなにか考えごとをしていたことに、ましろは気がついていた。

 心ここにあらず。

 どうしたんだろう? なにか、気にいらないことをしてしまったのだろうか。

 ましろの問いにりほこはハッとした顔をして、

「なんでもないですよ」

 いうと、やさしいキスをしてくれた。そして、

「あ、あのね、ましろちゃん」

「はい? なんですか? おねえさま」

 りほこは一度ましろから視線をそらし、だがすぐに戻すと、

「お、おしっこ……飲んで、ほしい……の」

 小さくつぶやくようにしていった。

 ましろはりほこの声よりは大きく、だがささやくように、

「はい、おねえさま。ましろに、おねえさまのおしっこをのまさせてください」

 つげると、ベッドに仰向けになった。

「どうぞ、おねえさま」

 仰向けにったましろの顔面をまたぎ、みるからに湿り気をおびた股間を下ろしてくるりほこ。年齢に似合わず、わずかな茂みを生やしただけの股間。その奥から彼女の欲情の証が滴りとなって、ましろの唇へと注がれた。

 りほこは気がついていないようだ。ましろはなにも告げることなく、唇に落下したおねえさまの滴りをなめとると、唇のすぐ上で停止した彼女の部分へと口をつける。そして排尿を促すようにして、スリットをなめあげた。

 考えてみれば、大人の女のひとの部分に口をつけるのは初めてのことだ。味は、少ししょっぱい。あたりまえだが、男のそれのように硬くはない。なんどか口にしたことのある「お姫さま仲間」の部分と、ほとんどかわらない。

「ま、ましろ……ちゃっ」

 切ない声でましろの名を呼ぶりほこ。ましろが舌先で膣口あたりを押すと、

「ぅうっ」

 

 ぷっシャアァーーーっ!  

 注がれる勢いは、激しいものだった。

 りほこの膀胱に貯められていたおしっこが、ましろの口腔へと一気に流れこんでくる。

 

 ごくっ……ごくごくごくっ

 

 ましろは咽を鳴らし、次々と注がれるおしっこを、急いで飲みほしていった。

 慣れ親しんだしょっぱさと少しの苦味。だがそれは、これまで口にしたものの中でも、とりたてておいしく感じられるものだった。

 しかし、りほこの体内で熟成された聖水……それを味わっている余裕は、ましろに与えられなかった。

「まっ、ましろちゃんっ! ましろっ、ましろちゃあぁ〜ンっ!」

 ずいぶんと貯めてたったのか、りほこの放尿はなかなかおわりをみせない。

 ましろの口とりほこの股間。その密着部分の隙間からおしっこが零れ、ましろの口元や頬を濡らす。が、これ以上は零せない。りほこは……おねえさまは「飲んで」といったのだから、ましろは苦しくても飲まなければならない。

 無心で咽をつかう。りほこの尿が咽を落ちて、胃に溜まっていくのがわかる。りほこの膀胱からましろの胃へ。おしっこは空気にふれることもなく移動していく。

「ぅグっ、ぐっ、ぅンぐっ……」

 無心で飲みこんでいると、やがて放尿の勢いがおさまってきた。

 と思った次の瞬間には、注がれる尿は最後の滴になっていた。

 ましろは口腔内に残ったおしっこを飲み干し、ついさっきまでおしっこが溢れていた部分をやさしくなめる。

 おしっこではない味。快感の滴を感じた。その滴が溢れる部分を舌で探し、ヒクついている穴に舌を潜らせていく。

 だけど、

「も……もういいわ、ましろちゃん。あっ、ありがとう」

 りほこは自分から腰をあげるとましろ傍らにすわり直し、さきほどまで尿を注いでいた少女の顔を覗きこむようにして問う。

「ぜ、ぜんぶ……飲んでくれたのよ……ね?」

「はい。ましろのおなかは、おねえさまのおしっこがたっぷりです」

 笑みをむけるましろ。りほこはなにかいおうとしたのか唇を震わせ、しかしそこからはなんの音も発することなく、泣きだす直前のような顔をした。

「おねえ……さま?」

「わたくし……こっ、こんなにも嬉しいのは、はじめてです」

 ひとすじ、りほこの頬に涙が伝った。

「はい。ましろもおねえさまのおしっこをいただけて、とってもうれしいです」

 笑みを交換するふたり。そしてどちらともなく顔を近づけて唇を重ねると、ましろの口に残った味を、舌を絡ませながらふたりで楽しんだ。

 やがて、その味がなくなり、

「あ、あのね、ましろちゃん」

 繋がった唇をほどいてりほこがいう。

「はい?」

「わ、わたくし……あ、あの、あっ、その……っ」

 いいよどむりほこ。

「おねえさま?」

「え!? あっ、そ、そのっ」

 言葉がつづかない。だが、りほこがなにをいいたいのか、ましろにはわかっていた。だから、自分から告げた。

「ましろは、おねえさまのうんちをいただきたいです。おねがいです、おねえさま。おねえさまのうんちを、ましろにください」

 ごくっ……りほこの咽が鳴った。

「いい……の? 食べて、くれるの?」

「はい、もちろんです」

「じゃあ……その、なめて……くれる? わ、わたくし、ましろちゃんにお尻のお穴を、なめていただきたい……の」

「はい、おねえさま」

 ましろの返事をきくと、りほこは四つん這いになって、きゅっとした丸いお尻を……その底を露にするかのように突き出した。

 ましろは突き出されたお尻のワレメを両手で広げると、「お穴」に顔を寄せ、クンクンとわざと鼻を鳴らして匂いをかいだ。

「あっ、ゃンっ! はっ、はずかしいわ、ましろちゃん」

「どうしてですか? とってもいい香りですよ、おねえさま」

 そうはいいながらもましろは香りを楽しむのをやめ、りほこの望み通り蕾に口をつけて舌を伸ばす。

「ぅっ、ぅくっ」

 舌先が蕾を捕らえた瞬間から、りほこは甘い声であげて腰をくねらせた。ましろはたっぷりの唾液をつかって、舌と唇でアヌスをほぐしていく。

 やわらかい肉の蕾を、ゆっくりと花開かせる。かすかに咲いた隙間から、その奥へと唾液を注ぐ。ちょっと激しく舌を動かしてみる。

「あっ、ぁンっ! ぁっ、ぃひっ」

 かすかに、ウンチの味がした。ぷぴゅっプぅっ……湿り気をおびたオナラ。そして、その香り。

 繰り返しくりかえし、アヌスをこねる。りほこの声は完全な喘ぎになり、股間からの滴がとまらなくなっていた。

「ァッ、ァンっ! まっ、ましろっ……ちゃンっ!」

 内側から、蕾が盛り上がってきたのがわかった。ましろの口の中で、りほこの蕾がミチミチと音を奏でる。

「で、でちゃうぅっ! あっ、みっ、みてぇっ、ましろちゃんみてくださいぃ〜っ」

 ましろはお尻から顔を離すと、りほこの要望通りにアヌスを凝視した。

 

 ミチッ、むちみちみちぃっ

 

 蕾を開かせて、頭を除かせるウンチ。褐色というよりは黒色の塊が、光に照らされてぬらめく。

 

 ムチぐちぃ〜っ、ちぃっ、くちいぃッ

 

 二センチ、三センチ……黒い塊が姿を現した、その時。

 まるで爆発音のごときそれを響かせて、りほこは腸内にあった汚物を一気に露出させた。

 縄。最初は黒く、やがて褐色に変化していく太縄が、りほこの「お尻のお穴」から噴出する。それままるで、手品かなにかのようだった。

 

 ぶちゅッ! ぶっ、ぶりぶりぶびぃッ、びびゅっ、ぶっ、ぶちゅぅッ!!!

 

 みるみる間に、真っ白なシーツの上には、長くてぬらめく一本糞が現れた。

 が、排便はそれだけ途切れることなく、縄になるほどの固さのない大便が、一本糞へと降り注いだ。

 

 ぶりゅっ、ぶちゅ、ブッ! ぶりびぶびびゅッ、ブビぃッ、ぷぴっ、ぷっ、ぶちゅぶちゅびびぃーッ!

 

「ぁひっ、ひぃっ、ひいぃ〜っ!」

 下品な音に、情けない声。美しい見目にそぐわない痴態を露呈して、りほこは快感に溺れた。

 みられている。かわいい美少女に、こんなに下品で汚らしい姿をみられている。

 自分の排便姿は、映像を記録してみたことがなんどかある。それらはあまりにも汚らしく、最初は正視できるものではなかった。

 あれを……あの光景を、リアルでましろにみせつけている。そう思うだけで、りほこは絶頂へと導かれていた。

 幼い少女に排便姿をみせつける。それだけで、性的絶頂へと駆け上がってしまった。快感に震える性器から淫汁を、大便にまみれた肛門から軟糞を垂れ流し、りほこは現世にありながら天国を垣間みていた。

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 快感に頬を上気させ、瞳を潤ませるりほこ。口角からは唾液を零し、唇が濡れて輝いていた。そして肛門からは、やわらかな残り糞を垂れ流している。

 室内に広がる、強烈な排泄臭。臭気が固体となって鼻腔に侵入してきたような、物理的に痛いほどの臭い。

 その異臭を胸いっぱいにとりこんで、ましろはいった。

「すごいです、おねえさま。おねえさまのうんちすがた、とってもきれいでした」

「ほ、ほんとう……?」

「はい、ほんとうです。それに量もたくさんで、においもすごいです。すてきですっ!」

 ましろは山となった軟便に両手をさしいれ、埋もれた最初の糞縄をそっともちあげると、それをりほこの顔へと近づけた。

「みてください、おねえさま。すてきなうんちですよ」

 ステキかどうかは個々の感想だが、絵に描いたような一本糞ではある。

「ご、ごめんなさい。臭すぎ……ですよね」

 たしかに臭いはキツイが、ましろには心地よい香りでもある。

「あっ、あのね、ましろちゃん。わたくし、このような場所は初めてですから、その……失礼がないようにと、うんちの臭いが強くなるものばかりをたべていたの……」

 失礼? お客様なのだから、そんなこと気にする必要ないのに。それに、臭いが強くないと失礼になるなんて、そんなこと考えたこともなかった。だけど、「便臭」を「心地よいもの」と感じているのは、りほこもましろと同じだったらしい。

 本当にかわいいひとだな。ましろは思い、クスリと笑みを零してしまった。

「おねえさまのおうんち、とってもいいかおりですよ。それに、おいしそうです」

「え? そ、そうかしら……」

「ましろのうんちは普通だと思います。ごめんなさいです」

「そ、そんなことないですわっ。わたくし、ましろちゃんのうんちでしたら、どのようなものでもいただけますっ!」

 ましろはそれには言葉を返すことなく、

「おねえさまは、ご自分のうんちはお食べになられますか?」

 たずねた。

 カーっと、顔中を紅く染めるりほこ。その様子で、ましろは悟った。

「でしたら、いっしょに味わいませんか? ましろ、おねえさまといっしょに味わいたいです」

「ね、ねぇ、ましろちゃん?」

「はい?」

「自分のうんちを食べるなんて、わたくしは変でしょうか? おかしいの……でしょうか」

 おそるおそるといった感じで、りほこがきいてきた。

 ましろはその「不安」を取り除くように、はきっりとした口調と真剣なまなざしで、

「そんなことないです。ましろだって食べますよ? 自分のうんち。おいしくて気持ちよくなれるうんちを食べないなんて、そんなひとのほうがへんです」

 それが「当たり前」だというように答えた。

「……そ、そうよね?」

「はいっ、おねえさま」

 そうよね。りほこはもう一度つぶやき、ポロポロと涙を零した。

「お、おねえさま!?」

「ご、ごめんなさい。なんでもないの。その……うれしくて」

 正直、りほこがなぜ泣くのか、ましろにはわからなかった。

 でも、うれしいといってくれた。

「おねえさま、みてください」

 ましろは手の中にあるウンチを顔によせ、それにキスをした。舌を上下させてなめ、削るようにして口の中へといれていく。

「おいしいです、おねえさま。おねえさまのうんち、とてもおいしいです」

 幼い少女が、自分の排泄物を口にしている。妄想ではなく、現実に。りほこの視線が、ましろにつきささる。

「おいしい……の?」

「はい……ちゅくっ、ちゅっ、ちゅっぱっ、おいしいです」

 りほこの苦味と臭気で、ましろの中がいっぱいになる。お腹の奥がきゅーっとなって、エッチな気分が大きくなってくる。

「おねえ……さまぁ」

 甘えたような声が自然と溢れ、ましろは男性器をくわえこむような口づかいで、りほこの一本糞を先端から口にいれた。

 

 ちゅぱっ、じゅっ、じゅるちゅくっ

 

 口を半開きにして、ましろをみつめるりほこ。ましろは口の中いっぱいにウンチをいれると、そのままでりほこの唇をふさいだ。

 時間をかけてウンチを味わうふたり。同じ食感と苦味、そして臭い。ウンチを接着剤にして、いま、ふたりはひとつになっていた。

「おいしいですね? おねえさま」

「はい、おいしいですね」

 口からウンチ臭い息を吐き出しながら、ほほえみを与えあう。

「ぬってください、おねえさま。ましろを、おねえさまの色でそめてください」

「はい。そうさせてください」

 りほこはウンチを手にとり、ましろの白い肌を褐色にそめていく。

「ハァ、ハァ……ハァ、ハァ……」

 息を荒くするりほこ。塗られている方より、塗っている方がより気持ちがよさそうだ。ましろは細い肢体をくねらせ、りほこの作業を手助けする。

「髪にも、塗っていいですか?」

「はい。もちろんです、おねえさま」

「でも、キレイな髪……本当に、いいのかしら?」

「いいですよ。ましろは、髪にもぬってほしいです」

「そ、そう?」

 長い髪をウンチでコーティングすると、一通り塗糞がおわった。

「顔には、ぬらないんですか?」

「だ、だって……かわいいお顔がみえていたほうがいいでしょ?」

「ん? ましろは、どちらでもいいですけど。自分の顔はみれませんし」

「そっ、そうよね。あ、あのね、わたくしは、ましろちゃんのお顔をちゃんとみていたいです。うんちを塗ったましろちゃんのお顔もかわいいと思いますけれど、できればそのままがいいです」

 別に、塗って気にいらなければ洗い流せばいいだけのことなのだが、ましろはりほこの気持ちを尊重してなにもいわなかった。

「じゃあ……つぎは、ましろのばんですね」

「なにがですの?」

「うんちですよ、おねえさま。フツウでいいですか? カンチョーしてだします? それとも、おクスリでドロドロにしたのがいいですか?」

「えっ、そ、そんな……どれも魅力的で、まよってしまうわ」

「うーん……でしたら、おねえさまはましろのうんちで、なにを一番なさりたいですか?」

「そ、そうね……やっぱり、ちゃんと味わいたいです。じつはわたくし、他人のうんちをいただくのは初めてですの」

「そうなんですか? えへっ、うれしいです」

「どうして?」

「だって、おねえさまのはじめての自分のじゃないうんちが、ましろのなんですよ? うれしいですよ」

「そのようなことでしたら、わたくしのうんちを食べてくださったのは、ましろちゃんが初めてでしたのよ? うれしかったわ。わたくし、今夜のことは一生忘れませんわ」

 幸せをかみしめるよに、しみじみというりほこ。

「もうっ、おねえさまったら。もうおわったみたいなこといって。こんやは、まだはじまったばかりですよ? ましろは、まだまだおねえさまと楽しむつもりですから」

「そ、そうよね。まだまだ時間はあるのよね」

「そうですよ。まだはじまったばかりです。ましろなんて、おしっこもしてないんですよ? あっ、そうだ。おねえさま、おしっこはどうなさいます? おねえさまのおしっこをいただいて、ましろもおしっこしたくなってきちゃいました」

 夜は、まだまだこれからだ。でも、時間はあるようでない。とくに、楽しい時間はすぎるのがはやい。

「ねぇ……おねえさま? どうなさりたいですか?」

 ましろの問いに、りほこが口を開く。

 その答えを、ましろはよろこんで受けいれた。



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